国王陛下との謁見
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とりあえず、王家との結婚が決まったということでお金持ちなのに貧乏性な我が家だが奮発してドレスや装飾品を買い揃えた。リョウマ様が所属する王立騎士団は濃紺の制服に銀色の装飾が施されている。そこでレーコの提案でジャパネ国の国旗を表そうということになった。上に濃紺、下に藤色の二色が我が国を表す。そのため私は藤色のドレスとそれに合う白い真珠の組み合わせで謁見に臨むこととなった。
試しにそれを身につけ、着替えるとなんだか豪奢な胴体にどんぐりが乗っかっているようにあっさりとした自分の顔がちっぽけに見えた。姉のレーコからは「ドレス似合っているわ。小顔、くりりとしたリスのような瞳、ぷるるとした果実のような小さな唇、そんなハコネは可愛い系ね」と言われたが。なんだか不安である。
準備を整えるうちに日々は過ぎ去り、王宮より我が家に馬車がやってきた。濃紺に白いユニコーンのエンブレムの絵画が馬車に施されている。間違いなく王族の所有物である。御者が手綱を引くと馬車が止まった。
「この度はご婚約おめでとうございます。王城までハコネ様をお連れする責任者の王立騎士団のキドです。」
そうにっこりと笑い馬から降りて一礼するのは馬車と同列に並び警備をしていた銀髪の壮年の男性である。
「ご婚約おめでとうございます。これからハコネ様の身の回りのお世話を担当しますユイコです。どうぞよろしくお願いいたします。」
そのあとに馬車からすみやかに降り深く礼をし、言葉を発したユイコという女性は色素の薄い茶髪を一くくりにしてお団子にしている。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
そう言いながら微笑むと、キドにエスコートされ馬車へと乗り込む。基本的に庶民であるハコネはキドのエスコートにドギマギした。そのあとにユイコがハコネに続いて馬車に乗った。
王都へは自宅のある商業の町ダイサカより馬車で半日。ふかふかのソファといえどお尻が痛くなってきた頃、白い荘厳とした建物である王城が姿を見せた。
行きと同じようにキドにエスコートされ馬車を降り、謁見の間に通される。
すると目の前には深紅に金色の飾りが施されている椅子に腰かける男性がいた。黒髪に黒い瞳を持つ優し気なその人はこの国の国王陛下であった。
「よく来た。長旅ご苦労であった。」
「お目にかかれて光栄です。ハコネ・ホージョーと申します。」
国王陛下の思いやりのある言葉に私は恭しく礼をする。
「よいよい。そなたの実績はよく知っている。他の者が戦へ熱を入れ、兵器やらそれを運ぶ船や飛行機を製造、攻撃魔法を研究などするなか、そなたは男女の仲を斡旋する生業を選ぶとは、とても特異、いや興味深い。広い視点を持っているといえよう。」
「もったいないお言葉です。」
「そこでだ。王家には、戦場馬鹿な男がおってな。それが我が弟なのだが。そやつにそなたの商品を、そなた直々に提供してほしいのだ。評判によるとそなたは恋愛を知り尽くしているという。朴念仁の弟にもその恋愛を知ってほしいと考えたのだ。」
国王陛下の言葉にふむと考えると私は口を開く。
「それならば、知らない土地に二人で共同生活をすれば絆が芽生えるかもしれません。恋愛に必要なのは非日常感とハプニングです。私たちの商品ですと時空旅行などいかがでしょうか?」
今ハコネは後々自分が困る墓穴を掘っているが、事業を成功させたい一心でプレゼンテーションを行う。
「ほう。よかろう。そうなればリョウマを呼べ。善は急げ、だ。」
事態は急展開である。