庶民ハコネ、貴族様中の貴族様に嫁入り!?
ハコネは成金貴族である。大層な金持ちであるが所詮、家族は皆庶民である。
新しいもの好きの父が中心となって興した「事業」が大当たりしたのだ。その功績が国王陛下に認められ男爵位を賜ったのであった。それともう一つ…
「ハコネ!お前に結婚が決まったぞ!」
20歳と妙齢の女性の部屋をノックもなしに押し開けたのは、父親のフウマである。その姿は汗まみれであり動揺が隠しきれていない。
「ハコネが結婚ですか?恋愛の『れ』もしたことないハコネが。」
そう言ったのは同じ部屋にいた二つ上の姉レーコだ。姉は商魂たくましく、父親の仕事のサポートをしていた。今は旦那であるジョージに嫁入りし魚屋を切り盛りしている。彼女は庶民にはよくある恋愛結婚をした。今日はたまたま実家に戻ってきている。
「そうだ。それもだ。国王陛下の弟君であらせられるリョウマ様とだ。」
私は口をあんぐりと開けるしかなかった。
リョウマ様というと王立騎士団の25歳と若き副団長様である。個人的な戦果も素晴らしいが、特筆すべきは戦における頭脳。13歳の初陣の際から彼が操る小隊や部隊は負け知らずで、国内外問わず有名である。ルックスも抜群で王家独特の黒曜石のような深い漆黒で野性味のある瞳、そして同色の髪を持つ御方である。
「何がどうしてそうなった…」
どこにでもいる焦げたトースト色の髪と瞳を持つ私はそう嘆くのであった。
父が中心として興した事業とは、いわゆる男女の出会い、そして恋愛から結婚を斡旋する結婚相談所のチェーン店化である。新婚旅行の提案も行っている。私が住むジャパネ国は少子高齢化が進み、さらには未婚の男女が多い。そのため父の事業は大いに国王に褒められたのだ。そう、そこまでは分かる。
「国王陛下の弟君にハコネが嫁入りすることなった。今のジャパネ国の実情は戦争が多く、若い男が徴兵で兵にとられてしまい少子高齢化に輪をかけている。そして、戦勝国であるが肥沃な土地が手に入らないため金がない!王が代替わりしたこれからは戦争でなく和平をと国王陛下はお考えだ。そこで他国にはないサービス業で貿易利益を出そうとお考えである。そこで、目を付けたのが私たちが興した事業である。」
そう、私『たち』が興した事業。
「ハコネの企画力が認められた!」
ハコネもその一端をになっている。実はこの事業の発案者である。
恋愛初心者であるため貪欲に理想の男女のあれこれを調べ上げたのだ。出会いからデート、プロポーズに新婚旅行。最初は憧れで終わるはずだったプランブックが父の目にとまり、事業化となったのだ。