バハムートラグーンから学ぶ。嫌われるヒロインの作り方(はぁと)
スクウェア三大悪女として名高い名声を誇るヒロインと言えば、ミレイユ、アリシア、そしてヨヨだ。しかし、ミレイユに関して言えば、"3大"という標語にしてしまうために無理矢理交ぜられてしまった被害者感を否めない。
また、FF8に登場する"リノア"などがミレイユの代わりに名前を挙げられる事もある程度には、パワーが足りていないのだ。そして、リノア自体も人によっては鼻につくお花畑ブリッ子女という程度で悪女という程でもない。
事実上はLive A Liveの魔王製造機ことアリシアと、バハムートラグーンの死体蹴り悪女ことヨヨの二強と言っても差し支えないだろう。
ですが、彼女達一人一人の背景について語るとこのエッセイの場ではボリューム感が出すぎてしまうため、あくまでヨヨ一人に焦点を当てる事を予めご了承いただきます。
さて、バハムートラグーンとは何かを一言で説明するならば、"婚約破棄からざまぁされた男"の物語だ。興味がある人は是非、一度18章まではプレイして頂きたい。NTRに耐性がない人は……やめようね。
というわけで、まずは人に嫌われる人間の特徴というのは何かを列挙してみよう。
①.他者の痛みを鑑みない。踏みにじる。
②.常に被害者意識
③.態々言わなくていいセリフを言う。
④.時と場所を弁えない
⑤.行動に信念がない
⑥.正論を吐く
⑦.ポエム
⑧.約束を守らない
⑨.後頭部にブーメランを刺す
⑩、自己愛が異常ともいえる程にあり、自己中心的な物ごとの捉え方しかしない
はい、ヨヨは上記の条件を全て満たします。役満ですね。あとヨヨを語る上で外せないのが、彼女の毎晩の"セックスパートナー"である敵国の将軍パルパレオスである。作中で彼は、エリートイケメン将軍として描写されているので女性にはモテモテなのだ。
実際、主人公ビュウの活動組織である反乱軍に所属する女性のうち、パルパレオスと直接関わった事のある女性の大半は彼に惚れてしまうという有様である。ついでに、ヨヨの計らいにより、帝国から寝返った直後にそれまで隊長格だった主人公のビュウやマテライトを押しのけて重役に抜擢されている(なろうしゅかな? やっぱり〇ン〇には勝てなかったのかもしれない)
しかし、そんなレディーキラーのパルパレオス。彼は作中で反乱軍に所属する男達に嫌われます。(直前まで殺し合いをしているし、いきなり敵国から寝返っていきなり重役抜擢されるし、戦時にも拘わらず事あるごとにヨヨとおせっせをはげみ、その他反乱軍の女性の好意を根こそぎ刈り取っていくというなろうしゅムーブを見事にキメるので当然っちゃ当然なんだが)
そんな素行の悪さは純情硬派(笑)のドンファンと同じでカワイイもの。彼にヘイトが溜まってしまう理由に関して簡潔に述べるならばズバリこれだろう。
下半身には正直だが、それ以外の行動に信念が伴っていない為である。
タイチョーとの邂逅では、"ヨヨの事を忘れる"と口にしておきながら、実際には未練たらたらだったり。「反乱軍にとけ込まねば……」とか言っておきながら、反乱軍の中心人物である主人公にヨヨとの青姦セックスやあいびき現場を見られるとカウンターでポエム説教を始めるという始末。いきなりヨヨの寵愛で重役抜擢されて有頂天になっているのかは知らないが、それまで反乱軍の隊長として指揮をとってきた人間達のメンツをことごとく潰していく。もはや溶け込む気など一切ないのである。
そして、途中から主人公相手に目線を合わせようとすらしなくなる。(余談だが、バハラグはドットキャラの目線や向きで感情を表す所が凄く細かい。それでパルパレオスの動きを見ていると……)
極めつけには、パルパレオスに対して「死んでつぐなえる責任はなにもない」と釘を刺したマテライトの言葉を無視し、エンディングでは死んで責任をとったフリをしてその一生を終える。
結局、サウザー、タイチョー、マテライトの言葉も全く聞いていないのである。そして、あれだけ作中で身体を重ねたであろうヨヨすらも信じ切れていない。
もはや、客観的なカリスマ性は地の底に落ちていると言ってもいい。カッコイイ帝王サウザーの横にいるから何となくカッコよく見える。そんなリア充の取り巻きポジションにしがみ付こうとしているようにしか見えないのだ。
正直、素行の悪さだけを見るなら隊長格のマテライトだって悪い。人によってはヨヨより嫌いとまで言われる程である。面倒事や責任は主人公であるビュウに押し付けるし、傲慢でプライドが高く、人の話はあんまり聞かないし、子供のように勝手なことを喚き散らす。ネットスラングで彼を一言で称するなら"老害"である。
だが、彼の行動原理は亡きカーナ国王の忘れ形見である"ヨヨ王女のため"で一貫している。
実際、例の18章までビュウにはキツく当たって来た彼であるが、パルパレオスの加入する18章以降からはビュウに対する態度は軟化していく。
その主な理由は、主人公と結婚するはずだったヨヨが、パルパレオスに寝取られてしまっていた事を知ってしまったからである。(なろう風に言うと婚約破棄からのざまぁを決められた所を見せつけられた)
これまでマテライトは"ヨヨのお義父さんポジ"としてヨヨに近づく男を躾けていくつもりだったのだが、既に主人公とヨヨの関係が切れてしまっているのを目撃した以上、厳しく接する理由もなくなってしまった。
そして、事あるごとにヨヨとパルパレオスによってポエムでイビられ続けるも"黙々と軍を指揮する"主人公を見ていくうちに、次第に同情的になっていく。
一方、マテライトは元帝国軍将軍であるパルパレオスの事は快く思っていない。しかし、"ヨヨの恋人"である事が確定してしまったために、ヨヨの意思を尊重して18章時点では容認していた。
だが、ことあるごとにパルパレオスはウジウジと悩み、その度にヨヨがお慰めセックスするという流れを見てしまう。
なのでやっぱりマテライトはパルパレオスに対しても"お義父さんポジ"を発揮しようとしてしまう。しかし、ついにはヨヨにウザがられてしまうようになったのだ。24章では主人公に対し、ヨヨに関する愚痴を下記のように漏らす。
「ヨヨさまはあのメソメソ男につきっきりじゃ。大事な話も人づてじゃ……」
もうこの時点では娘に邪険にされるお父さんそのもの。あれ程「ヨヨさま~!」と叫んでいた男が、ヨヨに対する不信を隠さないようになってしまう程に参っているのだ。挙句の果てエンディング後には、玉座の前でブツブツ何かを毎日言い始める痴呆老人のようになってしまったとヨヨに呆れられてしまっている。
が、実の所マテライトはボケてなどいない。彼はエンディングで玉座の前で亡き国王に向けて下記の通り言っている。
「王よ。ヨヨさまはすっかりたくましくなられました……。カーナは心配いりません。このマテライトがいるかぎり……。そして、アイツ(ビュウ)がいるかぎり……」
「このマテライトがいるかぎり……」という言葉が、彼の悲痛さを物語っている。ヨヨでは"国に平和をもたらす"事が出来ないので、"私と主人公が死ぬまで働きます"と宣言している事の他にならないからである。
彼は18章の開戦前時点では、ヨヨに対してこのようなウダウダ話をしている。
「ヨヨさまは一人じゃない! わしらはどこまでもいっしょじゃ!! もしも、空の扉から異世界の魔物が現れるのなら、そいつらからヨヨさまをお守りする!! それがワシらの生き方じゃ!! これからも変えられない生きざまじゃ!」
中略
「ヨヨさま……。ワシはわかっとるんじゃ……。ワシはふるくて、やかましい男じゃ…。くどくて、おちょうしもので…。ワシは騎士としても、戦士としても失格な男なのかもしれぬ……。じゃが!! まだまだ引退はできんのじゃ!! "あいつら"には任せておけん……」
中略
「ヨヨさま…。ワシには夢があるのじゃ……。カーナが再興して……ヨヨさまが女王になる……。ワシはヨヨさまのおそばにずっとずっとおつかえする!! じゃが……。ワシだって……いつか年をとる…。ワシがセンダックみたいなジジイになって……うだうだ話をはじめたら…ワシも引退を考えるじゃろ……。そのときに、あいつらがワシのあとをついでくれれば……」
中略
「たまに遊びにきて話につきあってほしいのじゃ……。それから……わしはヨヨさまにおねだりするのじゃ……。こしをもんでくれじゃの……かたをたたいてじゃの……。ワシの身体はかたいからの……ヨヨさまのおまもりづかれできっとガタガタになっとる…。このキンピカよろいともそのころには、おさらばじゃ!!」
中略
「そうじゃ……ヨヨさま。さいごにもうひとつ……。ワシがいんきょしてからな……。ワシの家にはひとりできてほしいのじゃ! 特に新しいカーナ王は、いれんぞ!!」
※この時点でマテライトは主人公がヨヨと結婚してカーナ王になると思っています。
つまり、マテライトは主人公達が国やヨヨを任せられる程に成長したならば、自分は引退しようと考えている。そんな騎士が、ヨヨではなく"国に忠義"を尽くし、"任せられる主人公"と共にキンピカ鎧を着て死ぬまで国に尽くし続けなくてはならない状況に追い込まれているのである。
結局ささやかな夢である"ヨヨの肩叩き"をおねだりする事もなく、陰でヨヨから「またですか……。カーナに戻ってからは毎日ですね……。」と冷たく呆れられる始末。これで騎士と姫の関係も切れている事が伺えるのだ。
悲しいなぁ。ただひたすらに哀れである。英雄の末路とは、えてしてこんなものなのだろうかという諸行無常さを感じさせられる。
また、エンディングで行われた神竜解放の際に、ダメージの大半をヨヨによって肩代わりさせられて身動きが取れなくなって置き去りにされた主人公の元に唯一駆け寄って肩を貸した男がマテライトである。
なお、このシーンでは流石のヨヨもやり過ぎたと思ったのか、去り際に主人公に対して目配せをしている。嫉妬を拗らせたパルパレオスがヨヨの手を引く形で主人公を置き去りにしていった。
※ちなみに、この場面で"主人公にダメージを全て肩代わりさせるため"の打算とはいえ、主人公に再びモーションをかけようとするヨヨを見て、パルパレオスはヨヨに対して不信を抱いたのだと思われる。
なんと、ヨヨの事を語る前に4000文字を越えてしまっている。これではヨヨの悪行を語る事が出来ない。だが、マテライトという騎士の忠義と人生そのものを歪める程に悪行の限りを尽くしている悪女と言ってしまえば、ご理解頂けるだろうか。
神竜の心を繋げるドラグナーである前に、人の心をバラバラに引き裂いていく女がヨヨなのである。
だが、そんなヨヨにも擁護する声が幾つか上がる事がある。
"ストックホルム症候群"を患ってしまったというものだ。戦地で捕虜にされ、イケメン将軍のパルパレオスに優しくされてしまったらどう思うだろうか? それはもうゾッコンになってしまってもおかしくはないだろう。
その理屈は理解できる。ココなろうでも全肯定ヒロイン獲得手段としてよく使われる常道なのだから。筆者だって物語にはその手法を適用するくらいには使っている。
しかし、問題はそこではない。
ヨヨは"パルパレオス以外の人間の事"を利用できる駒程度にしか思っていないのである。18章では開き直って主人公の人格をポエムで否定しておきながら、自分には「今までと変わらずに優しく接してね」の一点張りである。
冒頭であげた①の要素、他者の痛みを鑑みれないという要素である。むしろフラれて傷心中のビュウに対し、事あるごとにおセックスを見せつけるのだから性質が悪い。
※主人公の部下達は16章のハーレム解放後のお祭りで脱童貞しているのに、主人公だけはヨヨに操を立てたせいで最後(エンディング後)まで童貞なので猶更惨めである。
さらに、ヨヨはストーリ上で神竜と関わる重要キャラクターである。そんな中、"皆"に向けて言葉を発する事があるのだが。
最後、主人公に対してだけはハブにする。あるいは皮肉めいた言葉を投げつける事がある。その中で最もクルものがあるのが。
「ドラゴンの餌やりをしっかりね」
という言葉である。パルパレオスを始めに、マテライトやセンダック。そして、"その他大勢の皆に向けて"感謝の言葉を発した。その後に主人公に対して言ったセリフがこれである。
まだ"皆"に含まれている方がマシなのに、意図的に当てつけのように主人公に対して悪意ある言葉を投げかけているのだ。
③.態々言わなくていいセリフを言う。そのものだろう。
読者の中には現実で心当たりがあったりしないだろうか? 言わなくても良い毒をあえて残そうとする人たちが。おっと、これ以上はやめておこう。口は災いの元とはよく言われる話ではあるが、皮肉を漏らすくらいならば黙った方が好感をもたれやすいと思うのが筆者の考えである。
そして、ヨヨの台詞は"その場面"では正論を言っている事が多い。ポエム調で「誰かに優しくできる」などとのたまう事があるが、エンディングまで戦いぬいたマテライトにかけたヨヨの言葉を見てそう思えるだろうか? 無理だろう。
ヨヨの言う優しくする対象とはパルパレオスだけであって、それ以外はどうでもよいのである。まさに言葉に行動が伴っていない上に、他者に投げかけた"その場限りの正論"が全て自分にぶっささるブーメランと化している。
……一々台詞を引用して解説していると1万文字を越えそうになるのでここでまとめておこう。
何故ヨヨが嫌われるヒロインなのか。それは種馬男に"寝取られた"事ではなく、単純に情状酌量の余地がない事が問題なのである。
単にパルパレオスと愛し合っている。というだけであるならば、過剰なまでにビュウの精神を痛めつける必要もないし、パルパレオス以外の"その他大勢"の皆の心を蔑ろにするような裁量や判断を下したりはしないだろう。
溺愛する主人公とヒロイン。そしてその他のどうでもいい連中共。"真実の愛"を盲目的に語りあってる最中、周りの人々の心がどのように揺れ動いていくのか。
「ざまぁ」される側の心の教材としてみると、バハムートラグーンは非常に面白いので是非、18章までプレイしてみて下さい。筆者はこれで寝取られる事の気持ちよさに目覚めました!!
改めてバハラグのシナリオを見てみると"婚約破棄"を先取りしすぎだろう? とツッコミを入れたくなるこの頃である。
まぁ、何が言いたいのかと言えば、ヨヨみたいなヒロインって良いよね(恍惚)
上ではボロクソ書いているけどパルパレオス将軍だってヨヨに人生を狂わされた被害者でもある。結局、新天地ではヨヨ以外から慕われる事もなかったので基本的にカーナでは孤独。ヨヨにマーキングされているのでモテても実際に手を出してくる女性もおらず。
エンディングでヨヨが"打算"でビュウに対して寄りを戻そうとした時の失望感は計り知れないだろう。自分が今までビュウにやってきたことが、まさにそのまま跳ね返ってくる可能性を感じ取らざるを得ないのだから。
「グッバイ。ヨヨ」
と最後に帝国に残って刺されて殺される事を選ぶのも納得できてしまう所が悲しい。
彼がもし、宣言通りに"ヨヨの事を忘れて"拒絶できる強い意思が持てる人間だったならば、こうはならなかっただろう。
でも無理だよね。美少女に言い寄られたら誰だってそうなる。もしも、なんて話はあり得ないのである。悲しい。