ようこそ
今回短いです。
さて、依頼を達成させてからの話をしよう。
と言っても話は単純だ。
最後にターゲットの顔に羊皮紙を当ててマークを付けて、『諸々の事情とそろそろ絞めようと思ってたから殺した』とだけ書かれた裏ギルドのマークが中央にあしらわれた書面を皇帝の寝室、皇帝本人が寝ている枕元に置いて、後は放置だ。
今頃リョーリョン帝国は今頃どの家の誰が死んだか調べるのにてんやわんやしている事だろう。
さて、リョーリョン帝国が大混乱しているとき、それを起こした俺達はというと、リョーリョン帝国の皇都で1番有名な飲食店、そこで舌鼓を打っていた。
「やぁ、今回はお疲れ様」
「……お疲れ様」
「何やら不服そうだね?」
「…………まぁな」
フェルトさんとしてはちゃんと殺したのだから最低限の仕事を熟した訳だし、何を気にする必要が有る?ってところなんだろうけど、俺としては最初に計画していた全てがオジャンになった訳だから、良い気はしない。
その事をフェルトさんに伝えると、彼は笑って興味深そうに色々聞いてきた。
俺はそれに、何をやりたかったのか、どんなプランニングをしていたかを話した。
話している途中、店員から退店を告げられてしまい、店内での話は中途半端に終わってしまったが、仕方がないので帰ることにした。
帰っている途中、フェルトさんが何かを思い出したかのような表情をすると、ゴソゴソとポシェットを漁り始めた。
そして出てきたのは、フェルトさんや他のギルド員と同じポシェットだった。
「はい、これ」
渡されたポシェットは黒よりの灰色をしたポシェットで、俺の体には少し大きい物だった。
「初任務成功おめでとう。それは報酬だよ」
「……ポシェットが?」
「アレ、要らない?それ、持ち主の魔力次第でいくらでも物が入る便利なバッグなんだけど……必要なかったかい?」
答えがわかっているだろうに、フェルトさんはニヤニヤしながらそう言ってきた。
「どういう返答をするかわかってんだろ?」
俺はそう言ってポシェットを肩に掛けた。
すると少し大きかったポシェットの紐は俺の体に動きを阻害しない程度にフィットするサイズへと紐が短くなった。
「それはメアリー作の便利バッグだ。彼女はアイテムボックスって名付けてたかな。
そのバッグ、それは正式に我々のギルドメンバーになったという証でもある」
これを今渡してきた意味はなんだろうかと考えていたら、すぐに答えが言われた。
そしてその内容に、思わずフェルトさんの顔を見る。
「改めてようこそジャック。我々は君を歓迎する」
リョーリョン帝国皇都、その裏ギルドの建物が有る扉の前での事だ。
ギルドマスターの部屋でした方が良い会話内容だったが、それでもこれがギルド員の証だと言うのなら、嬉しく思う。雰囲気なんて有ったものじゃないがな。
真っ直ぐフェルトさんの顔を見る。
彼はニヤニヤというよりニコリとした表情で俺がなんて言うかを待っていた。
なら、こう言うしかないだろう。
「改めてよろしくフェルトさん」
フェルトさんにそう言った後、裏ギルドの建物に向かって更に続ける。
「改めてよろしく、裏ギルド」
俺はこの日、ようやく裏ギルドのメンバーに正式になれたのだった。




