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ダルマサンの出来上がり  作者: 荒木空
修行編
31/34

依頼開始


 「さてジャック。暗殺をする際に必要なことはなんだと思う?」


 「…………隠密性とどんな所にも忍び込めるように必要最低限の荷物、それにターゲットの行動を事前に把握しておく……とかか?」


 「正解。でも不正解。確かにそのどれもが大切だ。暗殺と一言で言っても形は多々有るけど、その中でも今回のやり方だと君の言う通りの物が必要だ。必要不可欠と言い直しても良い。


 でもそんなことよりももっと大切な事が有る。

 自分の心を操る事だ」


 リョーリョン帝国アトラス王国寄りの辺境に在る辺境伯にあたる地位に居る貴族。ウィリアム・ウィル・ウィブラーノ・ウィルターナが住まう屋敷の前で、俺達は最終確認をしていた。


 このウィルウィル五月蠅い辺境の貴族が件の貴族だ。


 依頼主や裏ギルドに有る情報だけでは話に偏りが有ると考えて屋敷のある街で領主について情報収集を昼にして、その結果が今になる。

 その情報収集でわかったことはまぁ、なんというか、事前にある話以上のどうしようもない奴だった。


 裏ギルドの方針として、まだ救いが有る者には社会的死を、矯正の余地は有るものの1度心を完全に壊さないとならない者には精神的死を、そしてどうしようもない、本当に死ぬしかないほどどうしようもない奴には肉体的死を、というのがある。


 事前に裏ギルドが持っていた情報では精神的死、依頼主の話を聞いて肉体的死を検討というところまで判決が降っていた。

 そしてこの昼の情報収集で、肉体的死しかないと判決が降った。


 まず1番の決め手となったのが、この街のスラム街に住む子供の半分以上がその貴族の子供というのが既におかしかった。

 次に、この街の女性で、手を出されていない女性というのが、この街の外から来た人だけというのもおかしかった。

 他にも余罪が多々有るものの、とにかく本当に下半身だけの生命体とも言える糞野郎だったというのがわかった。

 しかも、調べていてわかったが、実は俺の住んでいたザリー村もたまに住人が拐われていたらしく、その拐われていた人も手を出されていたということがわかった。

 初めて会った女性に「もしかして…ウォルターさんところのジャック君……?大きくなったね!お姉さんのこと、覚えてる?」なんて言われてしまったのは、かなりの衝撃を受けた。



 生まれて来た子供に罪は無い。手を出された女性についても、大半が完全なる被害者。他にも汚職に民の税で私腹を肥やす、他貴族家の子女にまで手を出すまたは出そうとするド畜生。そしてその甘い蜜を騎士達も一部啜っている。


 以上の判断材料から、容赦なく使用人以外の全てを死刑(ギルティ)という判決をフェルトさんが降した。


 そして今、乗り込む直前の最終確認をしている、という事だ。


 「……いざというときに()()()()なんて事がないように、か?」


 「それはそれ以前の話。殺すならしっかり殺さないと。『殺せない』なんて論外だ。


 そうじゃなくて、不測の事態が起こったとしても、絶対に動じず体をターゲットを消す刃物として動かせるかどうかが大切なんだよ。自分が刃物に成れるかが重要なんだよ。


 さて、それを互いに共有したところで最終確認だ。

 準備は良いかい?」


 「OK。Let's(いつ) do(でも) early(良いぜ)


 「じゃあ、やろうか」


 フェルトさんの合図と共に俺達は屋敷の正門へ向け歩き始めた。


 『暗殺』とは言っているが、対象が多過ぎるし、迎え撃って来る相手は全員抹殺対象だ。

 だから今回は、堂々と正面から行く。


 正門へ近付くと1人の門番と思われる全身鎧の男が、こちらに槍を向けてきた。


 「止まれ!こんな夜更けに、貴様達は何者だ!此処はウィルターナ様の屋敷であるぞ!」


 「こんばんは門番さん。


 そしてさようなら」


 鮮やかという他ないほど華麗に、言葉と同時にフェルトさんは男の首をナイフで撫でた。


 男の首は勢い良く鮮血を撒き散らし、やがて心臓の鼓動と共に中の血を外へ排出して行く。


 「まず1人」


 そう呟くと、フェルトさんは腰のポシェットから羊皮紙を1枚取り出し、男の持っていた槍を使って男の額に羊皮紙を固定した。


 羊皮紙には裏ギルドを表す逆さ五芒星に、上の2つの頂点を耳に見立て下の頂点を顎に見立てた悪魔のような顔があしらわれたデザインのマークが記されている。


 これで、この犯行は裏ギルドが関係していると示している訳だ。


 ちなみにこの羊皮紙はメアリー先生が作った物で、魔道具だったりする。

 効果は、マークを上に羊皮紙を固定した後、専用の棒で軽く叩くと羊皮紙に記された物が下に写るという物だ。

 その『下に』というのは、人なら刺青(いれずみ)のようになる。これで模倣犯や裏ギルド装った裏ギルド以外の奴の犯行を防いでいる。


 そして今、ちょうどフェルトさんが棒で羊皮紙を叩いた。


 すると薄く光り、それが終わるとフェルトさんは羊皮紙を回収した。


 「さぁ、どんどん行こうか」




 これから、長い夜が始まる。




 Let's do earlyは『早くやろう』などの意味があります。


 英語は本来、末尾は.で締めますが、敢えて。にしています。




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