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ダルマサンの出来上がり  作者: 荒木空
私、生き方を見つける
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4歳の私


 私が私の信念を決めて1年。私は私の周りの事についてある程度の情報を手に入れる事に成功した。


 まず言語について。これは最初、全くわからなかったが、赤子の学習能力は凄いもので、いつの間にか意味を理解し舌ったらずながら話すことが出来た。その言語はおよそ私が知っているどの言語とも違った。次に、私が生まれたのは緑の多い少し廃れた村で、親は猟師をしているらしい。村に住む人々の肌の色は白人種の物に近く、顔立ちはハーフを思わせる物に近い。今の私の父親が狩ってきた獲物は毎日違うが、毎度何処か、私の知る動物とは違ったし、まず地球上には存在しないようなものまであった。

 この時点で私が生まれ暮らした国や世界とは違う世界の可能性が高くなった。それに加え、この村の名前やこの村が属している国、この世界の名前なんかを今の私の母親から聞いたり、耳を疑ったが『魔術』という単語を母親の口から真面目な表情(カオ)で言われた事で、此処が前の私にとっての異世界だということが確定した。


 村の名前はザリーという名前で、このザリー村はアトラス王国のパック領の端に有り、隣国であるリョーリョン帝国に最も近い場所にあるらしい。

 世界は1つの大きな大陸で出来ており、世界の名はイーラというらしい。大陸の大きさは、聞いた感じでは地球のユーラシア大陸より少し大きいぐらいのようで、『世界』として考えれば小さいように思う。

 識字率はどうやら低く、学校のような物はあるらしいが、物としては高校や大学、大学院の研究室レベルの高さで貴族や王族ぐらいしか入学することすら難しいようだ。


 識字率の話をしたが、それは例に漏れず、家の親も当然のように文字の読み書きは出来ない。だから私も文字の読み書きは出来ない。


 宿屋や道具屋、肉屋や八百屋なんかが町に行けばあるらしいが、それ等の表記も文字ではなくそれぞれを示す絵となっているらしい。


 村での生活は包丁や皿などの物をザリー村から馬で半日ほどの所にあるマーダという町に買いに行き、お金は村で育てた麦や芋などの作物や父親の狩った物の皮や骨を売ったりして生計を立てているらしく、我が家のような猟師の家以外の家は農業に勤しんでいる。その日の食べ物は固すぎるパン一片と、塩の味しかしないスープのみを1日2回、朝と夜に食べるだけで、たまに祝いの席や収穫の際に父親の狩ってきた肉を村人全員で食べたり、する程度の質素なものだ。

 幸いな事に、我が家は猟師の家だったおかげで肉は定期的に摂取出来たが、それにしたって1週間に1回有るか無いかだったし、どちらにせよ肉を焼くこともなければスープに入っても味は塩の味だけだった。



 この世界に来て4年、私が知ったのは以上の事だった。

 あと話すことと言えば、今の私の両親の見た目についてぐらいだろう。

 父親は茶髪のセミロングで、顔は可もなく不可もなくな平均的な顔。母親も同様に茶髪で顔も可もなく不可もなくな平凡顔。唯一父親と違うのは髪の長さで、ベリーショートというぐらいだ。

 この村の他の住人や名前は気にした事はない。というか覚える気がない。大きくなれば、この村からさっさと出て行くつもりだし、正直現代の日本に生きていた私としては、もう少し生活水準を上げたいから、残る理由が無い。それほど今の生活水準は低い。


 そういった生活レベルや所属している国と地域だけという最低限の事しかわからなかったが、まぁ、この生活水準ならむしろ上等なものだろう。


 そうした環境に住む私のこの村での義務は、体力作りの為に走る事だった。


 この村は立地上、どうしても戦場になりえる可能性が非常に高い。だからこの村の3つ前の村長は、何があってもしっかりと逃げられるようにと村人達にいつでも走れるように命令していた。そのおかげかこの村の人々は皆栄養不足で体は全体的に細いが、肉体はしっかりとしていた。

 そしてこの命令は子供達にも適用され、走れるようになった子供は1日最低3時間は走らなければならない。ずっと走り続ける訳ではなく、休みを挟んでの3時間なのは救いだろう。

 子供達の最低限の基準が1日に3時間走る事に対し、逆に大人にはこの手の縛りは無い。その代わり身を粉にして働く事が最低限の基準となっている。これは老若男女問わずだ。これも体力作りを目的としているらしいが、最低限の基準が身を粉にして働くというのは休むことを許さないという事だった。大怪我や高熱や村の代表で町に行く等なら渋々ではあるが仕事を休んでも文句は言われないらしいが、普通の風邪や腰痛のような物なら働け。働かなければ村八分にするという、なかなか厳しいものでもあった。だからこの村の大人達は村長含め、毎日1日中働いていた。

 これを聞いた時は日本のブラック会社を思い出した。前の私が所属していた会社は比較的に法に則ったクリーンな会社だったが、ブラック会社というのはまさに奴隷のようになるらしい。実際、この村の大人達の目も少し危ない。


 だがいつでも逃げられる為に体力作りをしておくというのは理に適っているため、私は義務としての最低限の3時間以上の時間を走ることに費やしていた。

 当然だが、それが理由で他の同年代の子供達とはあまり関わってないし、夜には寝る前に母親から色々教えてもらっているし、ちゃんと食事もトイレも行っている。だがそれ以外の時間は基本的に走り続けた。



 これがこの1年間の自由に動けるようになり始めた私の生活だ。



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