躓きと不穏な依頼
俺が風属性の習得の為に訓練を開始してから早くも1週間が経った。
しかし、まだまだ俺は風属性の習得への活路を見出だせていない。
フェルトさんやメアリー先生に他属性の習得方法を聞いても「感覚でどうとでもなる」「自分で見つけなければ意味が無い」って突っ撥ねられて終わるだけで、進展も何も有ったものではなかった。
そうして色々考えては試すを繰り返して更に5日が経った頃、俺はフェルトさんに呼び出された。
「ジャック、君、まだ習得すら出来てないのかい?」
ギルドマスター室へ入って開口一番に言われたのがそれだった。
流石に苦笑いしか出ない。
フェルトさん的にも勿論俺的にも、斬属性の事や体を鍛えるのもある意味順調だっただけに、今回のような出来てない状況というのは落差が激しく感じられる。
「今までが調子良過ぎたとか、調子良過ぎなのと現状の落差が激しいとか、単純に俺が苦手過ぎるとか、色々可能性は考えられるけど、言える事は1つだな。
フェルトさんは最初、どのくらいの期間を考えてたんだ?」
「当日には習得ぐらいは出来てると思ってたけど?
むしろ他の人は魔力や属性を意識するまでが時間掛かる。1度それを経験すればすぐに使える筈だけど?
だから逆に聞きたい。なんで出来ないの?」
「俺とアンタ達とでは条件が違うのか……?」
なんだかんだ言いつつ、俺は元々この世界の人間ではないし、今でも元の世界の常識で物事を考えているのは事実だ。
それを考慮した上で他に原因が有るとすれば、無いように思う。
やはり、俺が元の世界の常識で考えているから難しくなってるのか?
「その可能性は十分考えられるけど、その前にいくつか確認したい事がある。
君、普段どうやって風属性を習得しようとしているの?」
「どうやってって……、こうやってだが?」
フェルトさんに聞かれた為実践して見せた。
するとフェルトさんは怪訝な表情を浮かべてより一層「訳がわからない」といった様子で、呆れた目で俺を見てきた。
「なんでそこまで出来てて斬属性を付与するの?訳がわからないんだけど」
「逆に聞きたいんだが、やり方はこれで合ってるのか?」
「合ってるも何も、それしか方法はないよ。なのに出来ないって、君、案外センス無い?」
「ここまでやってこれって事は、センスが無いんじゃないか?」
「かもね」
フェルトさんは呆れた声でそう言うと、机から1枚の紙を取り出して俺に渡してきた。
「これは?」
「読めばわかる」
またいつものか。そう思いつつ紙を見てみると、以下のような事が書いてあった。
依頼主:アトラス王国第一王子
依頼内容:第三王女の誘拐または現国王の暗殺
詳細:国王がようやくこの国の若者が他国へ行くことに危機感を覚え始めた。しかし今まで全く動こうとしなかった奴が今更少し動いたところで何かが変わる訳ではない。そこで今回の依頼だ。第三王女は王族の中で最も幼く、今年6歳になったばかりの子供だ。その王女を現国王は物凄く可愛がっている。それを逆手に取って、より一層の危機感を覚えさせて他の貴族達にも動かなければどうなるかを見せてやりたい。それすらも叶わないのであれば仕方がない。現国王には退位してもらう。どうか引き受けてはくれないだろうか?
報酬:裏ギルドが欲しているもの(金なら言い値)
何やらとんでもない依頼が来たな……。
そして読めばわかるということは……、
「俺にこの依頼を請けろと?」
「勿論表向きには俺が動く。ただ君には第三王女の誘拐の方をしてもらう」
してもらう、ね……。
確定事項かよ……。
こうして俺は、初の依頼を行うことになったのだった。




