九十九折の愛の形
私、九十九折 雨織は月下マリアを愛していました。
最初、私はマリアのことを友人として好んでいました。しかし、彼女との距離が近づくにつれ、私は彼女のことを段々と愛おしく思うようになりました。
彼女は明るく、優しくて、私に無いものを沢山持っていましたもの。惹かれるな、と言われるほうが無理ですわ。
彼女と私が親友と呼ばれ始めたころにはもう、私は彼女に恋をしておりました。
けれど、その思いを伝えることだけはできませんでした。だって、どれだけ私が彼女のことを愛していても、私と彼女は同性。
もし、彼女に拒絶されたら。
そう思うと、どうしても思いを伝えることが出来ませんでした。
だからせめて、この高校三年間だけでも彼女の側にいようと。そう思っていたんです。
――神原くんとマリアが、付き合い始めるまでは。
マリアと神原くんが付き合い始めた、と聞いたとき、正直に申しますと気が狂いそうでした。だって、マリアの気持ちがほかの人にあるんですよ?
自分の好きな人が他人を好きでいるのに、平気でいられるほど、私も図太くはありませんもの。
でも、だから彼女を殺そうと思たわけではありませんの。それは確かに、とても辛くて悲しくはありました。
けれど、マリアは私の愛した方。彼女が幸せなら、私の気持ちなんてどうでもよかったんです。
――神原くんが、私を好きだと知るまでは。
二年の夏休みに、私は廿六木先生に化学室の掃除を頼まれて学校に行きました。その時、彼が友達に話しているのを偶然聞いてしまったんです。
彼は私のことが好きだった。
彼が私に近づくためにマリアと付き合ったと知った時、頭の中が真っ白になりました。
それからどうしたのかは、あまりよくは覚えていません。それでも、これだけは覚えています。
彼に、罰を下さなくては。
そう思ったことだけははっきりと覚えています。
……本当は私、マリアを殺す気なんてありませんでしたの。だて私はマリアのことを愛していましたから。彼にだけ、罰を下せればいいと、そう思っていました。
でもね、探偵さん。私、思いましたの。
もしマリアが神原くんに死にたくなるほど追い詰められれば、彼女は私を選んでくれるのではないかと。そう、思ったんです。
あとは探偵さんがした謎解き通りですわ。
……まさか、マリアが神原くんの為に自殺するなんて、思いもしませんでしたけれど。
私の計画の中で、それだけが唯一の誤算でしたわ。