43、第1覚醒
「魔力が足りない………!待ってろ、すぐに助けるからな!」
俺は四肢を切断し魔力に変換する。
何十回と繰り返しているせいで、体中を剣で刺し貫かれている様な痛みが常に襲って来る。
「何でだ、何で助けられないんだ!」
教会の広場に並べられた遺体は傷は治っているし呼吸もしている。
しかし、まるで人形の様に横たわったまま感情の無い瞳で俺を見る。シスターや騎士達も協力してくれているが、時間だけが過ぎて行く。
「夜月。結界が張り終わった」
「そうか。ありがとう、セリス」
「肉体は再生しても、壊れた魂は再生する事が出来ない。それはどんな神の力であっても、出来た神は1人もいなかった」
俺は眠っているレインを見る。
大事な人達を守る為なら何だってした。
それなのに、俺が弱いせいでレインやこんなに小さな子達まで犠牲になった。
今のままだとソフィラ達も守れない。
「もっとだ。もっと強くならないと。力が、もっと力が必要何だ…………」
『力が欲しいですか?』
気が付くと周囲が灰色になっていて、俺以外の全員が動きを止めていた。
目の前に1本の剣が浮いている。
分からない者が見れば唯の真っ黒なロングソードに見えるが、その中からスルイルを遥かに超える強大な力を放っている。
「お前は誰だ?」
『ごめんなさい、私には名前が存在しないの。大昔に私を封印した奴が私の名前や存在自体を消し去ったから。
よかったら、私に名前を付けて』
「なら、クロでいいか?」
俺がクロに名前を付けた瞬間、剣の姿から美しい女性の姿に変わる。
真っ黒な布が目を隠す様に巻かれ、大小様々な鎖がクロが動く度に音を鳴らす。
『凄いわ!体まで元に戻っているなんて…………。お礼にあなたには力をあげる』
その瞬間、クロの右腕が俺の腹を貫いた。
痛みは無く、寧ろ力がどんどん湧いてくる。
爪が鋭くなり腕や足からは真っ黒な鱗が生え、服を引き裂きながら体が大きくなっていく。
「何が起きているんだ?」
『あなたの得る神の力の1部を覚醒させたのよ。だけど、第1覚醒でこれほどの力があるなんて素敵だわ』
クロは嬉しそうに言うと、腕に付いている俺の血を舐め取る。
『これで契約は完了ね。その力で存分に暴れてちょうだいね』
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突然、強烈な死の感覚が私達を襲った。
兵士や市民達は一瞬で意識を失い、神様達でさえ動く事が出来ない。
「こ、これは………」
「これが夜月なの?この力は………」
私は王城を出て急いで夜月のいる教会に向かって走ると、教会の前に巨大な獣がいた。
顔は狼で体は獅子、前脚は竜であり後脚は馬、背中からは巨大な漆黒の翼が伸び、4本の立派な角が生えている。
1歩また1歩と近付いて来るだけで、氷の様に冷たい殺気と押し潰されそうな圧力が襲ってくる。
「夜月なの?」
『そうよ』
私の前に女性が現れる。
目を黒い布で巻いていて、手足や体に大小様々な鎖が付いていて動く度に音を鳴らす。
「あなたは?」
『私はクロ。原初の女神の1人であり、神々によって名前も存在さえも消し去られ永劫の闇に封印された女神』
「夜月に何をしたの!」
『彼のお陰で私は解放され、名前も体も得る事が出来た。
だから、お礼に彼の欲しがっていた力を与えて目覚めさせたのよ』
クロという女神はいつの間にか獣の傍に移動して、その体を優しく撫でる。
『人が神になる為の覚醒は3つの段階が必要で、第1覚醒は姿を魂や記憶、性格などから形を作るのよ。
彼の場合はまるで底無しで全てを呑み込む闇そのものね。女だろうと子供だろうと敵ならば容赦なく殺し、魂を奪う冷酷な獣。素晴らしいわ』
クロは嬉しそうにスキップしながら言う。
『夜月、いっぱいいっぱい殺してね。神も人もありとあらゆる生き物を殺して、この世界をめちゃくちゃに壊してちょうだい』
クロはおぞましい笑顔を浮かべると、獣の顔にキスをする。
その瞬間、獣は咆哮をあげて帝国に向けて空高く飛び上がった。




