4、炎の悪魔
最後の部分が消えていたので、直しました。
現在、僕達はダンジョンの正面入り口の広場に集まっている。
僕達の他に冒険者の人達が先にダンジョンに入っていく。
入り口の前には数人の騎士が周りに立って、ダンジョンから魔物が出てこないか監視している。
このダンジョンは【ヘリエール大迷宮】と言われ、全200層というダンジョンの中でも一番の大きさと広さがある。
ダンジョンの中心には巨大な穴が空いていて、下層にいる飛行型の魔物が飛んでくる事もあるそうだ。
初代勇者だけがダンジョンの200層に行き、そこに宝を置いてきたという伝説があり、多くの冒険者が挑戦するが未だに到達出来たのは66層までだ。
僕達は隊列を組むとエグリットさんの後ろに付いていく。
迷宮の中は広く、通路は明かりがないのに視認がはっきり出来るほど明るかった。
僕達は何事もなく2層3層と進んで行くが、エグリットさんや騎士団の人達は首を傾げていた。
「おかしい。魔物が1体も出てこないなんて……」
「普通だったら、3、4回ほど戦闘をするのに」
そう言いながら、5層の中心部に着いたときだった。
「助けてくれ~!」
「おやおや、逃げては駄目ですよ」
1人の冒険者がこちらに走ってくるが、火の玉が飛んできてその冒険者の両足を吹き飛ばす。
そして、1人の男が現れる。
男の頭には2本の角が生え肌は黒色、背中には巨大な翼と尾が付いている。
「ほら、あなたが逃げるからちゃんと当てられ無かったでしょ。
大丈夫、すぐに楽にしてあげますから」
「止めてくれ~!アヅイアヅイアヅイアヅイアヅイアヅイアヅイ~~~!」
「おお、よく鳴く。やはり最後に取っといて正解でした」
男が指を鳴らすと、冒険者がいきなり炎に包まれ焼かれる。
男はその様子を楽しそうに笑っている。
そして、男がこちらを向く。
「一体貴様は何者だ!」
「始めまして。勇者達と王国の騎士団。
私は魔王軍七将の1人で、アークデーモンのハルスメルスといいます」
「魔王軍の七将だと!?」
「何故、そんな化け物がここにいるんだ」
「魔王様の命令で、勇者達がどれくらいの強さなのか調べに来たんですよ」
「狙いは勇者達か。急いで後退しろ!」
「そうはさせませんよ」
僕達は急いで後退しようとしたが、透明な壁が通路を塞いでしまう。
「あなた達も邪魔です」
ハルスメルスの尾が伸びて騎士団の人達を吹き飛ばすと、透明な壁で閉じ込める。
壁を壊そうとするがびくともしない。
「邪魔な人達はいなくなりました。
さぁ、あなた達の力を見せてください」
「みんなやるぞ!」
魔法職は自分が使える1番強い魔法を、戦闘職は全身全霊の攻撃をするが、ハルスメルスに傷を付けることさえ出来なかった。
「ならっ!」
勇也はスキル限界突破を発動し、ハルスメルスの頭部目掛けて渾身の一撃振り下ろす。
「まったく、つまらないですね」
「何でだ……」
ハルスメルスは勇也を見ることも無く、剣を指先で挟み止めてしまう。
ハルスメルスはため息を吐く。
「期待していた私が馬鹿でした。
もう一掃のこと、全員殺してもいいですかね」
その瞬間、ハルスメルスから巨大な殺意が溢れ出す。
僕達はその殺意の前に立っているのがやっとだった。
「ですが、私も鬼ではありません。
今回だけ、あなた達に生きるチャンスをあげましょう。
だけど、1つだけ条件があります」
「何ですか?」
「あなた達の中から1人選び、その人をあなた達で殺してください。
速くした方がいいですよ」
みんなは突然の事にパニックになった。
泣き出す者や喧嘩を始める者までいる。
「あの無能を殺せ!」
何処からかそんな声があがる。
その瞬間、みんなが僕を見た。
「そうだ。この無能を殺せば」
「俺達は助かるんだ」
「どうせ役に立たないんだから」
「はやく殺そう、そうすれば私達が助かるんだから」
みんなはそれぞれの武器を僕に向かって構え、僕は後退していく。
僕の前には部隊を構えたみんな、後には巨大な穴があり逃げ場は何処にも無い。
武雄が走ってきて僕の前巨大な盾を構える。
「おい、やめろよ!お前ら自分達で何しようか分かってるのか!」
「分かってる!だけど無能の命を1つ差し出すだけでみんなが助かるんだ。
だったら俺達は殺る!」
「まだ、死にたくないんだ」
武雄は僕を助けようと言うが、みんなは聞く耳を持たない。
すると突然武雄が倒れる。
いつの間にか、隣に玲子と朝陽が立っていた。
「玲子!」
「武雄、ごめんね。だけどみんなのためなの」
「お兄ちゃん、みんなのために死んで」
朝陽がナイフを僕の腹に突き刺す。
「お兄ちゃん、私はずっとお兄ちゃんが嫌いだったの。無能で何の役にも立たない、まわりに迷惑をかけてばかりのお兄ちゃんが嫌いだったの。
だけど良かったね。最後はみんなの役に立てたんだから。だから死んでね」
朝陽が離れると、剣を構えた勇也や他の2人が走ってきて僕の体に突き刺し、僕をそのまま穴に突き落とす。
「夜月ーーーーーーーーーーーー!」
奈落に落ちていく中、武雄の叫びが最後に聞こえた。
俺は、地面を思いっきり殴る。
ハルスメルスは、拍手をしながら笑っている。
「いや~、いい物を見せて貰ったよ。まさか、簡単に仲間を殺すとはね。
あっ、約束だから君達は助けよう。
それじゃあ、また会おう勇者達よ」
ハルスメルスの姿が消える。
透明な壁は無くなり出て来た騎士団の人達に連れられ城に戻る。
誰も一言も喋らない。
あの笑顔を絶やさないエグリットさんが静に泣いていた。
俺達は、夜月を殺すことで生き残った。




