37、泣いた魔神
「俺は終わらない!」
「何処に行くんですか?」
振り返るとあの男が立っていた。
「逃げるに決まってんだろ!今の俺の力ではあいつらをどうすることも出来ないが、また力を付けてあいつらをころ……」
「あなたには次は無いんですよ。ここで封印を解く供物になって貰います」
俺の体にナイフが突き刺さり、端から体が塵に変わり封印の魔法陣へと吸い込まれていく。
「どういうことだ!」
「私は解呪者。あの封印は神の加護が付与されていたので、生け贄には聖女1人では足りないんですよ。あれを完全に消し去るには神を生け贄にするしか無い。
暴虐の魔神を解放出来るのなら、たかが下位の神であるあなたを生け贄にした方がいい」
「ふざけるなあああああぁぁぁ!俺はこんな所でえぇぇ!」
─────────────────────────
「夜月!」
朝陽と母さんを安全な場所に送ろうとすると、タイミングよく一優とセリスがやって来る。
一優は知らない小柄な少女に抱き着かれ、セリスは近寄って来ると期待する様に俺を見てくるので頭を撫でると嬉しそうに笑う。
「一優、随分と強くなったみたいだな」
「これで俺も夜月と仲間入りだ」
すると一優に抱き着いていた少女が降りる。
「初めまして、夜月殿。私は元魔王軍七将の1人でマーヤと申します。
私は一優殿と夫婦になりたいのですが」
「その話は後でゆっくり聞く、怪我人はさっさと安全な場所に行け」
俺は転移魔法を使いマーヤを即刻レイン達の元に送る。
「夜月、気おつけてね」
「お兄ちゃん」
「母さんも気おつけて、朝陽も母さんを頼むぞ」
朝陽が頷いたのを確認してから2人を転移させる。
「さて、それじゃあやるか」
「さっさと終わらせるぞ」
俺と一優は教会の中に入る。
巨大な魔法陣が光を放ち、1人の男が笑っている。
やがて魔法陣は光の粒となり消え、変わりに幼い少女が横たわっている。
「遅かったですね。もう封印は解けていますよ」
「そうだな。なら、さっさと始末しないといけないな」
「私がそうさせると思いますか?
既にこの建物には私の罠が幾つも仕掛けてあるんですよ。あなた達が幾ら神と契約し………」
「うるさい!」
少女が突然目覚め、男を殴る。
男は足を残して消滅する。
「気持ち良く寝ていたのに、うるさい!」
少女はしばらく怒っていたが、しばらくすると周りの景色を見始め自分の体を何度も触る。
「封印が解けた!やった!やっと解放された!」
少女は何度も跳んだり駆け回ったりして、その姿は魔神と言うよりは普通の少女の様だ。
「夜月、本当にあれが魔神なのか?俺にはただの可愛らしい女の子にしか見えないんだが」
「誰が可愛らしい女の子ですか!」
少女が見事な飛び蹴りを放ち、一優が吹き飛んでいく。
「我は暴虐を司る最高位の魔神なんだよ!たかが2人の神と契約した人間が我を可愛らしい女の子なんて言わないで!」
「そんなに強いのか」
「当たり前だ。我は神の国でも2番目に強いんだよ!それにレスティアーナと互角に闘えるのは我だけなんだよ!凄いでしょ!」
「そんなに強い魔神がどうして封印されたんだ?」
「それはね。私がレスティアーナに喜んで貰いたくて、下界に降りて人間達に加勢したんだけど我の力が強過ぎてこの世界が滅びかけたの。それで怒ったレスティアーナが聖女に力を貸して、我をこの国に封印したの。
我は何度も謝ったけどレスティアーナは許してくれなくて、そのうち返事もかえってこなくなって我はずっと暗い結界の中でレスティアーナが許してくれるのを待ってたの」
「ほら、泣くな。泣くなよ」
俺は泣きじゃくる少女をあやし続けた。




