31、2人目の契約
目が覚めると俺は空の上にいた。
遥か下には雲海が広がり、藍色の空に星が輝いている。
俺は死んだのかと思ったが心臓は確かに動いていて、顔をつねると痛みもある。
「俺はどうしたんだ?」
「ここは私たちが住んでいた場所よ」
虚空から1人の少女が現れる。
その姿は完璧な美そのものだと思った。
「やっと会えた。夢にまで見た夜月くんを、この手で触れられる。抱き締めることだって出来る」
「お前は女神なのか?」
「そうよ。私はヨルティア。あらゆる生を司る女神なの。
夜月くん達をこの世界に連れて来たのも私で、奈落の底に落ちたときに発現したスキルも私があげたのよ」
そう言って、ヨルティアは微笑む。
「お前のお陰で、俺が助かってるのは分かった。
それで、お前は俺に何の用があるんだ?」
「私と契約を結んで欲しいの。これからの為にも」
「パパー!」「ゔあーーーー!」
目を覚ますとソフィラと獣人の少女が大泣きしながら飛び付いてきて、ポニポニ達が周りで飛び跳ねる。
俺はソフィラ達をあやしながら周囲を見る。
どうやら馬車の中にいるらしく、泣いている一優を先頭にレイン達が入ってくる。
「よがっだ。夜月が無事で」
「すまない。心配かけたがもう大丈夫だ。
ゴルディアーナはいないようだけど、教国に行ったのか」
「昨日の夜、1人で黙って行ったみたいだ」
「そうか。なら、急いで俺たちも教国へと向かうぞ!」
俺は静かに怒りと殺意を漲らせ、ゾルのことを思い浮かべる。
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時間が少し戻り──昨晩
「私たちはこれからどうなるんだろう………」
玲子と一緒に部屋に閉じ込められていた私を、騎士達がやって来て地下牢へと移された。
牢の中には何故か聖女様がいて、私も牢の中へと入れられ騎士達は去って行った。
私は聖女様に話し掛けるが一言も喋らず、静かに部屋の隅に座っている。
「どうしたの暗い顔して」
「キャッ!」
私は顔をあげると、いつの間にか1人の少女が目の前に立っている。
私は悲鳴をあげ、聖女様の所まで後退る。
「あなたは誰なの?」
「そんなことどうでもいいでしょ。それより、自分たちはこれからどうなるかって言ってたけど、あなた達は死ぬはずだったんだよ。
でも、安心して。その未来はもう無くなったから」
「どういう意味なの?」
私が尋ねるが、少女は笑って答えない。
「それは明日のお楽しみよ。
1番怒らせてはいけない、私の大好きな人を怒らせたからね」
そう言って、いつの間にか少女は煙の様に居なくなった。
「ゾル、よくやったぞ!」
「これで儀式を執り行うことが出来ます」
「何か嬉しいことがございましたか?」
「儀式の準備が整ったんだ。ヨルティア、お前の方はどうだ?」
私は操られた振りをして答える。
「はい。空風夜月は生きています」
「やっぱりか。雑魚の癖にまだ生きてるなんて。
どうせ、明日はここに来るはずだ。そのとき、きっちり殺してやればいいんだ」
ゾルが嘲る様に笑う。
自分の能力が夜月くんに効かなくなることも知らずに。
私は笑ってしまいそうになるが、我慢して報告する。
「空風夜月の弱点はほとんどありませんが、家族を物凄く大事にしています。
彼らを利用すれば、空風夜月も手出しは出来なくなります」
「そうなの か。なら空風夜月の家族をお前の力で召喚し、我々の人質となって貰うか」
「かしこまりました。では、召喚を開始します」
私はこの先に起こることを想像しながら、召喚を開始した。




