28、殺人命令
「うぉぉおおおおおおおおおおおお!!」
「落ち着け!落ち着くんだギル!」
ギルが暴れ出し、俺は必死に押さえ付ける。
しばらくするとギルは落ち着き、周りを見る。
「ここは何処だ?俺は確か首を…………」
「ここは教国だ。死んだお前を生き返らせる為に俺達が運んだんだ」
「ごめん。ギルの大剣、あいつに持ってかれちゃった」
「いや、大丈夫だ。あれを相手に俺が死んだだけで済んだ方が奇跡だ」
俺はゆっくり息を吐く。
その時、外が何か騒がしい事に気付く。
「外が騒がしいが何かあったのか?」
「あぁ、あいつが聖女を誘拐し聖騎士達を殺したから聖女奪還の為に冒険者を集めているんだ。
俺達は参加するつもりは無いがな」
「あいつは監禁されていた獣人達を解放する為に私達の所に来た。
だから、今回の事も何かあるのかもしれない」
「あなた方が探している、勇者様の事が分かりました」
「本当ですか!」
訓練をしていると神父さんが私達の所に来て、勇也の事が分かったと報告しに来た。
「彼は既に死亡し、生き返らせようにも強い力に邪魔され生き返らせる事が出来ません」
「方法は無いんですか!」
「1つだけあるよ」
いつの間にか、神父さんの後ろに1人の少年が立っていた。
「だけど、その前に君達に協力して欲しい事がある。
空風夜月を殺して欲しいんだ」
「何を言ってんるんだ」
「分からないのかな。空風夜月を殺せと言っているんだよ」
その瞬間、エグリットさんから殺気が放たれる。
あのエグリットさんが怒っている。
少年は気にした様子も無く笑う。
「その反応は分かっていたからね。だから、僕もこうすることにしたよ」
少年が指を鳴らすと聖騎士達がなだれ込んできて、私と玲子を囲み剣を突きつける。
「これは一体なんのつもりだ!」
「この2人には人質になって貰うんですよ。あなた達がちゃんと空風夜月を殺せば解放しますよ。
それとも、この2人を見捨てるんですか?」
「エグリットさん、すみません」
睡眠の魔法を使われエグリットさん達は眠らせると、数人のクラスメイトが縄で手足を縛る。
私と玲子はその行動に驚いていると、みんなをまとめている星永くんが前に出てくる。
「夜月を殺せば、2人を解放し勇也を生き返らせれるんだろ」
「もちろん、約束するよ」
「1人の犠牲で3人が救えるんだ。いくら夜月が強いと言っても、僕達が全員でかかれば夜月を殺せる」
みんなが頷く。
「待ってよ。何でそんな簡単にお兄ちゃんを殺そうとするの?何でそんな簡単にお兄ちゃんを殺そうと思えるの?」
「夜月は死ぬ筈だった人間だ。それが死なないで今回死ぬ事になっただけだ。
それに彼が死んでくれれば、3人の人間が救えるんだ。そう思えば、彼だって大人しく死んでくれるだろ」
みんなが賛同の声を上げる。
私はその瞬間、みんなが壊れていくのを感じた。
私が言おうとした瞬間、私と玲子は魔法で眠らされた。
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俺達は村人達と聖女達を連れエスペラント王国の国境へと向かっていた。
国境まで5分の1程度の距離を移動したが、村人達の疲労と夜になったので野宿の用意をし食事をするとすぐに眠ってしまった。
俺はティアと一優と一緒に焚き火の周りに座っていると、聖騎士団長のゴルディアーナがやって来た。
「話って何?もしかして、私と一緒に寝りたくなった!」
ゴルディアーナは体をくねらせながら聞いてくる。
「気持ち悪い事を言うな。誰が男と寝るかよ」
「酷いわ。乙女に向かって男って言うなんて」
「ふざけるのはそこまでにして、俺達は何で教国から出ようとしているのか本当の理由が知りたいんだ」
「それなら、ちゃんと話したじゃない。教国の中に魔王の部下が侵入して、聖女様の命を狙っているって」
「あぁ、聞いた。でも、俺は信じる事が出来ない。俺は魔王軍の七将の1人と戦った事があるが、あんたの強さはそいつよりも数段上だ。
そんなあんたが部下を2人だけ連れて聖女と一緒に国境に向かっているんだ。俺達はそれを不思議に思った」
「それで?何が言いたいのかしら?」
「教国の内部に聖女を殺そうとしている奴がいるんだろ。あんたが戦っても勝てない様な奴に」
ゴルディアーナは黙っていたが、しばらくすると口を開いた。
「そうよ。聖女様は教皇に命を狙われているわ」




