21、月光の森
「森まであとどれくらいで着くんだ?」
「もうそろそろ着くはずよ」
俺達は月狐族の人達を連れて住んでいた森に向かっていた。
しばらくすると焦げ臭い匂いがし始め、進めば進むほど強くなっていき、辿り着いたのは全てが焼き尽くされた森だった。
木はほとんど焼失し灰が地面のおおい、焼け死んだ動物や餓死した動物の死体が転がっている。
湖は汚染され溺死した動物や魚の死骸が浮かび悪臭を放っている。
月狐族が住んでいた村もほとんど焼失し、あるのは村があった跡と一緒に集まっている大量の骨だけだった。
月狐族の人々は泣き崩れ、怨みと憎しみのこもった言葉を叫ぶ。
「ありがとう、連れて来てくれて。
でも、私達の帰る場所は無くなったみたいね」
「子供は目を瞑ってろ」
子供たちは俺の言葉に不思議そうに目を瞑る。
俺はそれを確認すると剣を抜き、自分の左腕を切断する。
俺のその行動に月狐族の大人達は悲鳴をあげる。
「何をやってるの!?」
「全部、治すんだけだ」
左腕がすぐに再生すると、切断した腕を拾う。
俺は魔力を流すと切断した腕が青く輝くと分裂していき、無数の青く輝く小さな玉になる。
「さぁ、行け」
玉は森のあちこちに飛んで行く。
玉が地面に触れるとそこから草木が生え始め、湖は浄化され死んだ生き物達が再び動き出す。
月狐族の殺された老人達も起き上がり、この不思議な光景を呆然と見ている。
そして数分後、森は完全に復活した。
「もういいぞ」
子供たちは目を開けると、元通りに戻った森を見てビックリしている。
大人達は別の意味でまた泣き出した。
「再生魔法と蘇生魔法を使ったんだ。
その為には体の1部を贄にしないといけなかったんだが、元通りになってるか?」
「ええ、元通りになっているわ。ありがとう」
「さぁ、いっぱい食べてください」
俺達は月狐族の村に3日だけ、再生した森の様子を見る為に滞在する事にした。
現在は持ってきた食料を調理して、すっかり痩せ細ってしまった月狐族の人達に食べて貰っている。
「これだけ作れば、全員腹いっぱい食えるだろう」
「夜月、色々して貰ってごめんなさい」
「いいんだ。俺がやりたいからやってるだけだからな。
それとソフィ、これをやるよ」
俺はアイテムボックスから2丁のピストルを渡す。
これはオルガーナで男達から頂いた物で、形は俺達の世界の物とそっくりで、幾つかまだ持っている。
これを作った魔導国には他にも俺達の世界の物を作っていると聞いたので、機会があれば行きたいと思っている。
「それは俺達の世界ではピストルと呼ばれてて、作りはこの世界の物らしい。
魔力を込めてここを押すと魔弾を発射するから、身を守るのに使ってくれ」
「ありがとう」
「それじゃあ、俺はちょっとそこら辺を見てくる」
俺はそう言って、1人暗い森の中に入る。
ずっと歩き続け湖に辿り着く。
湖の周りでは木が白く輝いている。
この木は月光樹と呼ばれていて、満月の夜にだけ白く輝く。
俺はその中でも巨大な月光樹の根本に倒れ込む。
「少し無理し過ぎたな」
再生魔法で左腕が再生している途中に、大量の魔力を使ってしまい左腕が不完全な状態で再生してしまった。
俺の左腕は今も元の状態にしようと再生を繰り返し、激痛が走っている。
「さっさと元に戻れ!」
俺が悪態をつくと誰かが近付いてくるのを感じる。
俺がその方向を見るとレインがこっちに向かって来ていた。
「レイン、どうしたの?」
「夜月が森に行くのが見えたから」
レインが隣に座ると俺の事を抱きしめてくる。
「夜月、私のいるときだけは我慢しなくていいんだよ。
本当は腕がまだ痛いんだよね」
「レインには隠せないか」
「私は夜月が大好きなんだもん。あなたが我慢しているのだってすぐに分ちゃうんだから」
「じゃあ、しばらくこのままでいてくれないかな」
「いいよ。ずっとこのままでいるわ」
そして俺はそのまま眠りに落ちた。




