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もう戻れない?

その8


今日も昨日と変わらず私は木刀を振り、朝食を食べていた。

「食い終わったら出るぞ」

伍作が言った。

「今日も狩りですか。」

「いや、今日は水汲みだ。そのあとは道具の手入れだ。」

食事が済むと私は鉄製のバケツを両手に持って村の端にある井戸まで来た。そこで桶2つ分水を汲み上げて、家まで戻り空の水瓶に入れる。これを4度ほど繰り返した。

歩いている間暇だったので伍作と話をした。

「こんなところにいて、帰りたいと思ったことは無いんですか?」

「帰りたい?村ならそこだろう。」

「いえ、そうではなく。

元の世界に、です。」

「思わないし、思っても無理だ。」

「え?」

「お前、話聞いてなかっただろう。初めて会ったときお前に尋ねたな、今は何年だ、と。」

「はい、覚えてます。」

「そのあと、俺達は300年過ぎたと言った。つまりどういうことだ。」

「伍作たちは300歳?」

「そう見えるか?」

「いいえ。」

「そうだ。俺たちが向こうから来て前線で戦った期間はおよそ3年、それから狩猟者になって2年だ。その間に300年過ぎた。つまり、単純計算でこの世界はオリジナルより60倍遅いことになる。だから帰れても意味がない。

お前だって俺たちと出会って今日で5日ほど経った。だからもう10ヶ月くらい過ぎているぞ。」

「え?じゃあ急いで帰らなきゃ婆さまが心配してる。」

「だから無理だと言っただろう。この世界からオリジナルに帰還の仕方を俺たちは知らない。」

なんてことだ。もう帰れない?いや、おかしい。始めに会ったボロ布の男は帰ると言っていたはずだ。

「でもこの前会った人が帰るって」

「そいつは逃げたんだ。この世界は戦わないものに厳しい。

オリジナルから来るときお前は門を通ったはずだ。あれはオリジナルとちゃんと繋がっている。だが通るには通行料が要る。こっちに来るときは引っ張ってきた奴が払っているが、帰るなら自前で払わなければならない。」

帰るには通行料か。10ヶ月分のズレはあるがまだ許容範囲だ。 神の槍が気になってここまで来てしまったがもうそんな場合ではない。早く戻らなければ。

「いくら払えば帰れますか?」

伍作は静かに言った。

「銭じゃない。払うのは命だ。だから誰も帰れない。」

「,,,え?」






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