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31話 俺、パンツを見ようと必死になります

お久しぶりです。先月ほとんど投稿出来なくてもうしわけありませんでしたm(_ _)m

というわけで、新章とかそういう概念はこの作品にはなくてあるようなものなので(?)ユウキがフランとのデートっぽいなにかから無事シャルルのおうちに帰ってきたその後の話から始まります。


 「それではユウキ、心の準備は良いッスか?」


 「お、おう・・・」


 シュタルアリア邸の地下にある人気のない研究室の、隅の一角。いろいろな薬品が入った棚の隠れるようにして、俺とシャルルは互いの顔を見つめ合っていた。まだ少し不安そうなオッドアイが見上げてくる。俺だってまだちょっと恐いけれど、でもここは男らしく頼り甲斐のあるところを見せてやらないとダメなんじゃないだろうか。いつまでたってもヘタレで軟弱な俺ではいられないのだ。

 俺は少しだけ身を屈めて、シャルルの身長に合わせてやった。


 「ほら、」


 「そ・・・それじゃあ、お願いしますッス・・・」


 そして俺とシャルルはさらに密着して―――。


 

 「よっこいせっと・・・」



 そのまま顔を擦れ違わせて、俺はしゃがみ込んで、シャルルは俺の肩に手を置いた。

 

 「うっ」


 「わわっ!?ちょ、ユウキ、揺らさないでくださいッスよ!」


 「わ、悪い」


 「やっぱり無茶だったんじゃないッスか?」


 「な、なんのこれしき・・・!!マジカル・・・パゥアァァ!」


 はい、魔法使いました。良いじゃん、肉体は貧弱でもこれだって俺の力なわけだし。出来ればなんだって良いじゃないか。男性は筋肉を鍛えてあるほど魅力的な時代なんてとっくに過ぎてるんだよ。

 

 というわけで肩車を通り越してシャルルは俺の肩に足を着けて立つ格好になっている。そして俺はさらにマジカルパワーで筋力を増強してシャルルを肩に立たせたまま立ち上がる。というか強化しているのにまだ足がプルプルしている。


 「ど、どうだシャル?届く?」


 「あーはい、なんとか手を伸ばせば届きそうッスね。ありがとうございますッス」


 「いえいえ気にしなくて良いからさっさと用事済ませてくんないかしら」


 「その言い方だとまるで私が重いみたいじゃないッスか!失礼しちゃうッスね!むしろ私なんて結構スレンダーな方なのに!」


 「だー!謝るから地団駄踏まないでください!死ぬ、死ぬ!」


 「分かったなら良いッスけど。間違えたら困るのでしんちょーぉぉに選ばせていただきましょうかねー」


 「このっ!」


 全然良くないじゃないか。普通に怒っていらっしゃる。

 が、見上げて怒鳴った結果俺はとんでもないことに気が付いた。そう、俺は今シャルルを肩の上に立たせている。すなわちシャルルは俺よりも物理的に高い場所に立っている。そして今のシャルルの服装はスカート。さらに俺は首の動きに一切の制限は受けていない。つまり。


 「見え・・・・・・」


 「予想はしてたッスからね。まぁ見せるのもやぶさかではないッスけど、そのへんの絶対防御には定評がありますからね。相手がユウキだからと言って特別扱いしてはなんだか負けた気がしたんスよ」


 「・・・ない!」


 「ちなみに今日は黒ッスよ。ほらほら、見たいんでしょう?ユウキも結局は男子ッスねぇ?ほーらほーら、ここにありますよ?見えないんスか?」


 「くそっ!なんかムカつく!」


 「へっへっへ」

 

 シャルルはうまいこと姿勢を調整してスカートをヒラヒラさせ、なぜか太ももより上が全く覗き込めない超絶生殺し奥義を発動していた。


 シャルルが上の方の棚をゴソゴソと漁っている間、俺はシャルルのスカートをなんとか攻略したくなってシャルルを落っことさない程度に身をよじり続け・・・1分ほど。なぜか当然のようにセクハラ行為に及べてしまった俺にようやくシャルルが「見つけたッス」と言った。必要なものはちゃんとあったらしい。良かった良かった。結局パンツは拝めなかったが、これでようやく2G地獄からも解放される。

 シャルルがOKの合図をして、俺はシャルルが安全に降りられる高さまでしゃがもうとした、のだが。


 「あっ!」


 「ちょっ!?あふっ!?」


 気が抜けたせいでバランスを崩した。

 シャルが落ちないように足首を手で支えていた俺は完全に無防備なまま金属の床面に顔面を強打し、その上頭の上に人間1人分くらいの重さが落っこちてきた。凶悪な衝撃で鼻の骨がミシっという不穏な音を立てた。痛い。なんでいつもこんな目に遭っているのだろう。可哀想な俺。

 

 「ぐふっ・・・」


 「だ、大丈夫ッスかユウキ?」


 「どりあえず上からどいでぐんない?」


 「そ、それもそうッスね。申し訳ないッス・・・」


 頭の上の体重がなくなって、俺はのそっと起き上がった。まず一番に『キュアー』をかけて鼻を治し、それからシャルルの方を見た。


 「そっちは大丈夫だった?」


 「えぇ、なんとか薬品の方は無事ッスね」


 「そりゃ良かったけど、俺はシャルの方を心配して言ったんだが」


 「あ、そっちでしたか。まぁ、なんというか・・・」


 見た感じ無事ではあるが、なぜかシャルルはスカートの上から手で股を押さえている。心なしか顔色が青いような感じもする。それと、なんか動きがエロいので目のやり場に困ってしまう。


 「あのー、シャル。その・・・目の前でそこを手で触るのはいろいろ気まずいんだけど」


 「いや、あのなんていうか落っこちたときにユウキの後頭部に股間を強打しまして・・・」


 「男じゃあるまいし・・・」


 「女の子だって打ったら痛いんスよ!察してくださいッス!」


 「すみません」


 シャルルは取った薬品を手近なところにあった台の上に置いてから心置きなく悶絶している。そんなに痛いんだな、と思いながらその様子をチラチラ見ていると、ふと俺は大事なことに気が付いた。


 「あれ?ということはさっき俺の後頭部にはシャルの・・・が乗っかってたってこと?」


 想像して俺は急にドキドキしてきた。なんでさっき俺は俯せに倒れてしまったのだろう。めちゃくちゃ悔しい。いや、まぁ、多分そうなっていたら今頃俺はラノベかマンガでしか見たことのないラッキースケベのド定番展開に歓喜するより先に興奮しすぎて気絶していたと思うけれど。

 でも、実際のとこ、美少女に顔面に尻餅をつかれた場合、男性は最初にどういう感想を持つのだろう。正直パンツだひゃっほうとかクンカクンカとかうらやま死ねとか、そんなことを言っていられるのは想像して興奮しているだけの人だけじゃないだろうか。だって、後頭部に食らってあれだけ痛かったのだから顔面に受けたらもっと痛いはずだ。特に股間なんて皮膚が薄いから骨の硬さが直撃するようなものと言っても過言ではないだろう。アレだ。このパターンの後鼻血を出しているスケベ主人公たちは実はスケベだったから鼻血を出したのではなく普通にダメージを食らって出血していたのだ。

 と、考えたら俯せに倒れて良かったのかもしれない。痛かったけれどほどよく妄想も出来るレベルで済んだ。


          ●


 「で、これなにに使うんだ?」


 「これはアスキーの修理に必要な薬品なんスよ」


 アスキーの修理というのは、この前アスキーが盗撮がバレてアンフィの鉄拳制裁によってズタズタに破壊されたので、シャルルが請け負ってくれたものだ。ちなみにその際に抜き取られた音声データから俺が盗撮の共犯者であったこともバレてしまったのだが、シャルルには口止め料ではないが、代わりに俺に自分の恋人役をやれと言われていたりもする。そうは言っても現在までの時点ではあまり普段と変わったことがあるわけでもなかったが。


 「へぇ。でもなんでまたあんな高いところにしまってたんだ?」


 「元々普段はあんまり使わないものだったッスからね。必要と分かったときは驚いたッス。でも、アスキーの中身はすごかったッスよ?もうなんていうかあの寸胴鍋1杯分のスペースにこれでもかっていうくらいに面白いものを詰め込んであって。ついうっかり完全に解体して隅々まで調べちゃうところでしたよ」


 「戻せるのかもしれないけどやめてあげて!?」 


 「アスキーにも泣いて縋られたんでさすがに遠慮したッスよ」


 「うわぁ、なんかものすごい情景が浮かんできた」


 ロボットであるということを一旦無視して考えたら、意識がある状態で体の中身をいじられているようなものだ。修理するためとはいえメチャクチャ恐いだろうな。でも実際の手術でも程度によっては意識がある状態でやるらしいし、そんなものなのだろうか。俺の場合なんかは麻酔で完全に意識を落としていたからそんなことはなかったので、よく分からない。いや、でもやっぱり腹を掻っ捌いて内蔵をいじくり回すような手術なら意識があるままやるわけがない・・・のではないだろうか。

 

 「で、修理は順調なの?」


 「ふふん、私を誰だと思ってるんスか?」


 「そうだったな」


 科学アートから巨大人型兵器までなんでも作ってしまうほどの天才には要らぬ心配だったらしい。

 

 と、そこで研究室のドアが音を立てて開けられた。何事かと思えば、ステラが飛び込んできたのだった。


 「大丈夫ですかお2人とも!?すごい音がしましたが!?」


 「おや、ステラじゃないッスか。どうしたんスかそんなに慌てて」


 「ご、ご無事ですか?」


 「ええ。見ての通りに」


 「良かったですぅ、私の可愛いお嬢様とユウキ様になにかあったのではないかと思うともう居ても立っても眠れかったですよ!」


 「いや・・・居ても立っても眠れないってなんスか?」


 「あ、これは失礼しました。夜も眠れない、の間違いですわ」


 「いや、いずれにせよ一夜たりとも迎えてないッスけどね」


 「言葉の綾ですよっ。居ても立ってもいられなかったのは事実ですからっ」


 「まぁこうして駆けつけてくれたくらいッスからね」


 それとなく可愛い枠に俺まで入っていたことに驚くべきなのか、そもそも主人の一人娘やその客人に対して妙にフランクな態度のメイドさんに驚くべきなのか、そもそも慣れてしまってこれが普通に見える自分に驚くべきなのか。

 

 「にしてもステラさんよく聞こえましたね。確かに音は大きかったかもしれないけどここ地下だし。どこにいたんですか?」


 「いえ、ちょうどお茶をお持ちしようかと思っていた頃でして、エレベーターを出たところでドスンと大きな音がしたんですよ」


 「それでも十分すごいですね」


 「ふふ、いつでもお呼びとあらば駆けつけられるように耳は鍛えてありますので」


 耳を鍛えるってどういう感じに?音楽とかで耳を肥えさせるのとはちょっと違う気がするのだが、頑張れば人の聴力は向上するのだろうか。それともこの世界らしくそういう技術が進歩しているからこそ出来たことなのだろうか。


 「で、ステラ。そのお茶はどうしたんスか?」


 「・・・?・・・、・・・ぁ」


 しばらく考えてから、ステラは顔色を青くして部屋を飛び出した。

 すぐに戻ってきたかと思えば、ステラはスライディング土下座で飛び込んできた。


 「もうっしわけございませんっ!あまりに焦っていたもので台車ごとひっくり返してしまっていましたぁ!すぐに代わりをお持ちしますのでなにとぞぉ!」


 「あーいや、大丈夫ッスからそのアクロバティック謝罪をやめてくれないッスかね・・・」


 「ありがとうございますお嬢様!・・・で、せっかくなのでお嬢様とユウキ様の茶葉のご希望をお伺いしても?」


 「立ち直るの早いな」


 「こんなもんッスよ。大体ステラがなにか失敗したときはこんな風なやり取りになるんスよ。で、茶葉ッスか?正直ステラが淹れてくれるならなんだって美味しいのでこれといって希望があるわけでもないッスけど」


 「もったいないお言葉ですよ、うふふ。それで、ユウキ様はいかがなさいますか?」


 「へっ?あー、えっとー、俺はー、そのー」


 いやいや、茶葉って言われても。茶葉の種類ってそんないろいろあるの?知らない、そんなの知らないっ。ダージリンしか知らないわっ。なんか適当にティーバッグ入れてお湯を注いでおけばなんか赤茶色の液体になってそれを紅茶と呼んでいた以上のことは知らないのっ。

 まぁ、ここに来てから出されるお茶が庶民は決して口にすることのなさそうな素敵な香り漂うお茶だったことは分かっていたが、それに関する知識を庶民に求めてはいけない。


 「お、俺もステラさんにお任せします」


 「ユウキが茶葉の名前なんてそんなに詳しく知っているわけがないじゃないッスか。あんまりお客様で遊ぶもんじゃないッスよステラ」


 「てへっ☆」


 「おいっ!」


 「申し訳ありませんでした。それでは改めてお茶菓子と一緒にお持ちしますね。ちょうど創作クッキーを焼いたところでしたので」


 楽しそうに部屋を後にするステラをシャルルが呼び止めた。


 「あー、その必要はないッスよ」


 「えッ・・・・・・そ、そんな・・・」


 「いやそんな悲愴感漂わせないでくださいッスよ。そういう意味じゃなくて、もう私たちも上に戻ろうかと思っていた頃だったのでわざわざ下まで持ってきてくれなくても構わないって意味ッス」


 「な、なんだ・・・安心しました。それではお部屋の方にお持ちしますね」


 「お願いするッス」


 今度こそ意気揚々と戻っていくステラを見送ってから、シャルルは「さて」と呟いた。


 「じゃあユウキ、もう一度肩車お願いしますッス」


 「え、なんで!?」


 「なんでって決まってるでしょう。必要な分取ったから薬品のビンを棚に戻すんスよ」


 それもそうだ。

 しかし、また肩車するのも大変だ。なにか他に良い方法はないだろうか。もっと・・・もっと他に、シャルルのスカートマジックすらかいくぐるほどの名案は―――。


 「あ、そうだ。なんで気付かなかったんだろう。初めからこうしとけば良かったんだ」


 「どうしたんスか?」


 「まぁちょっと待って。『バリアー』っと」


 簡単な話で、いつもみたいにバリアを階段の代わりにしてしまえば良かったのだ。最初はなにも聞かされないままとにかく肩車してくれと頼まれたから勢いに押される・・・というほどの勢いではなくともシャルルに流されて思いつけなかっただけだ。

 そもそも論レベルの発想に至れなかった自分が悔しい。まず階段にしなくたってバリアをサイコキネシスで持ち上げればエレベーターみたいに任意の高さまで運べるしバリアは透明なガラスみたいなものだから下から覗けばスカートも攻略出来そうだし一石二鳥だしおすし。


 「ほらシャル、これ乗って」


 「乗ってって言われても透明だから見えにくいッスね・・・。というかユウキ、これで持ち上げたら下から覗く気でしょう?いささかスカート覗きにムキになりすぎじゃないッスか?らしくもない」


 「クリア困難なゲームをやってる気分になってきたんだもん」


 「だもん、じゃないッスよ。普通ならセクハラで逮捕ッスからね・・・」


 なんて言いながら、シャルルは俺お手製の床が透明なエレベーターに乗った。踏み外していないかと、そんな心配だけしているシャルルはよほど自分のテクに自信があるのだろう。さすがに落っことす気はないのでちゃんとシャルルをバリアの中央に立たせて、俺はさっそくバリアに上へ行けと念を送った。

 ジワジワと上昇するバリアに乗っかって、シャルルは感心したように声を漏らしていた。


 「ユウキってちょくちょく魅せてくれるッスよね。昔の私は魔法ってなんかこう、便利だけど結局科学で良くねって思って終わるくらいのロマンメインな空想の産物って思ってましたが、ロマン性とかより先に実用性を発揮するユウキの魔法は結構好きッス」


 「ロマンに欠けてて悪かったな」


 「いえいえ。世の中便利であることが最優先ッスよ。出来ればユウキの魔法を実際に技術として誰でも使えるものにしてみたいって思ってるんスけどね」


 「そうなのか」


 俺は素っ気ない返事を繰り返しながら、ひたすら頑張ってバリアの下をうろちょろしていた。しかしなかなか甘く見ていた。シャルルのガードは思った以上に固い。なぜ風呂にまでついてきたくせにこんなところで意地を張るのだろう。特に足捌きが華麗で、うまく視界を遮るように靴の裏を持ってくるのだ。俺の方を見ているわけでもないのに俺の目の位置を正確に予測する辺りは恐らく戦場で鍛え上げた空間把握能力の応用なのだろう。実に憎らしいスキルだ。

 ただまぁ、ここまでやっておいて今更手加減されたとしたらそれはそれで頭にくるから、ちょうどこれくらいがやりがいもあるってもんだ。・・・スカートを下から覗く行為にやりがいを感じている俺って一体なんなのだろう。

 

 「ユウキ、もう大丈夫ッスよ。おかげで今回はさっさと終わったッス」


 「え、もう?また見えなかった・・・」


 「ふふ、残念でしたッスね」


 ゲームには公平性を求める俺は素直に負けを認めてシャルルを地面まで戻した。いっそ背後からスカートを捲るという手段も考えつきはしたが、CQCも修めているシャルルに敵う気もしないので次の機会を待つほかない。

 作業も一段落したので、俺とシャルルは先に戻ったステラを追う形で屋敷の方に戻ることにした。戻ると言ってもエレベーターでウイーンと上まで上がるだけではあるが。

 

 「にしてもなんであんなに隠せるんだ?」


 「それはパンツってことッスか?それはだって、見せないことで生まれる魅力ってものがあるじゃないッスか」


 「超正論」


 「まだまだキワッキワなところまでは突き詰めようがありそうッス。私もまだまだ修行中の身ってところッスかね」


 「変なところだけストイックだな天才様」


 「そりゃあ、出来ないことがあるっていうのは結構悔しいものッスからね」


 「いやぁっ!そんなこと言っちゃうあたりがヤダ!イヤミにしか聞こえないわっ!」


 「あー、ごめんなさいッス。そんなつもりじゃなかったんスよ!?それに別に私はユウキが大したこと出来ない人だったとしても好きでいますからっ」


 「フォローという名の口撃!ユウキ君のハートは2997のダメージを受けた!」


 なお、聞けばときどきシャルルは『アトラス』の甲板のガーデンにある採光窓の上でちょっとした見世物としてさっきみたいな際どいことをしていたらしい。

 実はそんなアホなことをしていたのかとツッコむと、シャルル本人は最初から見世物のつもりでやっていたわけではなく、たまたま落し物を拾うためにスカートのまま採光窓の上を歩かなくてはならなかったときに見られないように気を付けながら歩いていたところ、下からそれを見ていたレイモンドに面白がられて持ちネタ扱いにされたらしい。またレイモンド(お前)だったんかい。

 そんなわけで『アトラス』のお色気ネタのひとつに加えられたシャルルの『M(見えそうなのに)M(見えない)D (ダンス)』はいつの間にか多くもなく少なくもない一部のクルーの中で人気になってしまって、やめるにやめられなくなったとかなんとか。中尉どのも変なところで苦労していらっしゃったわけです。

 

 「あ、そういえばユウキって明日とかって予定空いてますか?」


 「明日?まぁ空いてるけど」


 「そうッスか、良かった。じゃあこの前言っていた工場見学、明日でどうでしょうか?」


 「そういや言ってたなそんなこと」


 「そういやって酷いッスね!もしかして忘れてたんスか!?私結構楽しみにしてたんスけど!やっぱりアレッスか、アレッスね!フランと行ってきたっていうアニメのイベント!あの日になんかされたんスね!?」


 「いやなんもしてないしされてもいないって!というか気にしてたのかよ!」


 「そりゃあ気にしますよ、自分の男が他の女の子と仲良く出掛けようって言うんスから!」


 「ぐはっ!?」


 だから、そんな言い方はよしてください本当に。照れ臭さと同時にそれなりに強烈な精神攻撃力もあるんだってば。必要以上に罪悪感を植え付けられ、俺は少し仰け反った。

 

 「まぁ、そういうことッス。明日は私がいかにクリーンな工場経営をしているかとくとご覧に入れてみせますよ」


 「はい・・・。あ、そしたら明日は早起きの必要とかあったりする?」


 「いえ、気にせずゆっくりで構わないッスよ。別段遠くにあるわけでもないッスからね」

  

 「そっか」


 それなりにここでの生活も落ち着いてきた今日この頃、俺の遅寝遅起きも戻りつつあって朝が辛いのだ。リラックス出来ている証拠と言えば聞こえは良いが、さすがにだらけすぎも良くないかもしれない。


 そんなこんなしている間にエレベーターに乗り込みあっという間に地上階まで到着。さっきまでの殺風景な鉄の世界とは打って変わって豪奢な洋館風の建物に来ると、外に出たわけでもないのに遙々遠くの場所までやって来た気分にさせられる。

 ただ、この素敵な館も不定期に主人の趣味趣向で魔改造を施されるカラクリ屋敷の一面があると思えば地下の施設との繋がりも感じられる。結局シュタルアリアの血なのだろう。


 広い館の廊下もまあまあ覚えてきた。初めは散々迷ったが、おかげで注意力も鍛えられた。シャルルと並んで特にシャルルが向かう方向を気にする必要もなく、ステラがお茶を運んできてくれる予定のシャルルの部屋へ戻る。

 途中でシャルルに茶葉の話なんかを教わってみたが、正直聞いただけではサッパリだ。細かい味の違いが分かる方ではないから優雅に舌で学ぶようなことが出来るとも思えないが、ぼちぼちティータイムにでもお話ついでに教えてもらおうと思った。なんでそんなことに興味を持ったのかと言えば、紅茶の茶葉の違いに気付ける男性ってちょっとオシャレじゃねって思っただけだ。なんていうか、こう、イングランドでジェントルメーンなアトモスフィアを醸したいちょっとした俺のファンシーなデザイアである。


 と、シャルルの部屋の前に着いたのだが、なにやら様子が変だ。


 『――――――』

 『――――――』


 「シャル、気のせいかな。なんか声が聞こえる気がするんだけど」


 「おや奇遇ッスね。それもとびきり面倒くさそうな声が聞こえる気がするッス」


 「あら奇遇。俺もそんな風に感じてた」


 なんとなく聞き覚えのある女の子の声が2人分。トラウマというほどのものではないが、かなり面倒な思いをした記憶が蘇る。

 

 ただ、シャルルの部屋にいる以上スルーすることも出来ない。


 俺とシャルルは顔を見合わせてひとつ溜息を吐いて、それからドアに手をかけた。


 

 「あ!やっと戻って来ましたわねシャルル!!もう待ちくたびれてしまいましたわよ!!」

 「そうですわ!何分待っていたと思っているんですか!?まったく!」


 

 シャルルの顔を見るなり指差してそんなことを言ってきた面倒くさい客人は、桃色髪を左右対称にハーフサイドアップにした美少女双子姉妹にして社長令嬢の、サナとモナだった。

余談ですがそろそろエルミィも出したいなんて思っているんですよね。なんかうまくそんな感じの流れにならないかなぁ・・・(思いつきだけで書いていることがバレる発言)。

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