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13話 俺、よく働きました


 どこをどうトリミングしたとしても、『アトラス』はいつもとなにも変わらない1日だ。敢えてなにか違うところがあるとすれば、今日は昨日と打って変わった快晴日ということくらいか。清々しい日光が艦内をほこほこと照らしてくれている。

 そんな中でソワソワしているのは俺だけだろうか。暇を持て余して広場に集まってきたクルーたちはみんなジャンキーな昼食を買ってテーブル席を埋めていく。俺もそいつらと変わらないのだが、ただちょっと心持ちが違うのだ。


 「ユウキ、お待たせしましたッス」


 「お、来たな」


 「来たッスよ。それにしても女の子に昼飯を奢らせるなんてユウキもなかなかやりますねぇ」


 「仕方ないだろ、今の俺の持ち金はホームレス並みに少ないんだぞ。それでもなお俺を昼飯に誘うというのなら奢るくらいの気概は見せてもらわないと困る」


 「金欠がなに偉ぶってんスか・・・。まぁ、そのくらい気にはしないッスけど」


 シャルルはそう言って2人分のハンバーガーセットを乗っけたトレイをテーブルの上に置いた。しかしなるほど、トレイを蒸籠(せいろ)みたいに段重ねにして2人分を1人でも運びやすいようにしてあるのか。


 「にしても、そのトレイの間のつっかえ棒邪魔になんね?」


 「それならご心配なく。外したら収納されるッスから」


 「どこに!?」


 俺のツッコミも余所にシャルルは上のトレイを外したのだが、するとさっきまでそれを支えていた棒は収納された。・・・だからどこに!?いや、棒が縮んだのは見ていたから分かるのだが、だからその体積はどこへ消えたんだ、って感じだ。

 便利さというのはときに人の頭を悩ませるものらしい。


 俺とシャルルが買ってきたハンバーガーにありつこうとしたところで、向こうから手を振ってくる2人組が来たことに気付いた。


 「おーい!シュタルアリア中尉ー!中尉もいらしたんですねー!」


 「あ、ほほあははいっふか」


 「おいシャルル、食いながらしゃべるなって」


 「はぅわぁ、食べながらしゃべるはしたない中尉もそれはそれでお可愛らしいですぅ!そして原始人は死ね」

 

 「いつもいつも俺に無条件の死を望むんじゃねえ!」


 「にぃ。おはよう」


 「おー、サーシャ。ちなみにもうこんにちはの時間だけどな」


 「それもそう。じゃあ。こんにちは」


 そんないつも通りの挨拶をして、ココアもシャルルも先に買っていたらしい昼食と一緒に、俺とシャルルのテーブルに座った。


 「ココアとサーシャも今日の放送を聞きに来た感じッスか?」


 「そう。せっかくだから。みんなの反応も見られるし」


 「そういえば中尉、ベーコン少尉はいらっしゃらないんですか?」


 「アンフィの性格からしたら来ない方がらしいッスよ。それに今頃アンフィは昨日のことで念のための検査を受けてるはずッス」


 「なるほどですね」


 もう昼の放送自体は始まっているが、今は気になるあの人に突撃インタビューとかいう企画の時間だ。俺も以前、入隊したばかりのときに取材が来たことがある。もちろんテンパってしゃべることもままならなかったのだが。というか、マジで緊張していたからなにを聞かれたかも全然覚えていない。

 今日はなんだか隊のなになに隊長にお話を伺っているようだ。パラティヌスの操縦技術はどうやって鍛えましたかと聞くと実戦で勘を鍛えるのさ、と返す。

 ちなみにシャルルとココアに同じ質問をしたところ。


 「才能ッスね」

 「才能です」


 ―――可哀想なうんたら隊長。 


 「早く流れないかな」


 「音楽のコーナーはあと10分くらいだろ?ワクワクするのは分かるけど、まぁ飯食いながら気長に待とうな」


 「分かった」


 物語以外にワクワクしているサーシャを見るのはそこそこ珍しい気がした。俺はサーシャ相手なので良いお兄ちゃんオーラを出してから、ハンバーガーにかぶりついた。安いジャンクフードらしいおいしさを追求した味が庶民の舌には良く馴染む。そんな安い飯さえ買えない俺とは一体・・・。

 しょっぱいのは多分ケチャップの味だ。涙じゃない。入隊したての軍人の給料はいくらほどなのだろう。

 濃厚な肉の味を噛み締めながらポテトに手を伸ばすと、誰かの手に当たった。間違えたかと思って顔を上げたのだが、そこにいたのはレイモンドだった。


 「・・・なに人のポテト食おうとしてるんです?」


 「悪い悪い、手が滑った。まぁ良いじゃねえの。お前のポテトは俺のポテト、俺のポテトも俺のポテト。アンダースタン?」


 「これから少佐のことをジャイアンって呼んでも良いですか?」


 「ジャイアンってなんだ?」


 「俺の世界で巨人のように雄々しく逞しい男に贈られる称号です」


 「へぇ。・・・でもなんか響きが好かないからダメだ」


 「・・・チッ」


 「おいユウキ、今なんで舌打ちしたんだ?」


 「してないです」


 「いや絶対し「してないです」


 ジャイアンというキャラが存在しなくてもやっぱりジャイアニストは存在することの証明が済んだところで、俺はなんでまたレイモンドがこんなところにいるのか尋ねた。


 「で、なんで少佐はこんなところに?下々の民がいるところにわざわざ降りてくる理由も今日はないですよ」


 「まぁそう言うなよ。聞けばお前らなんか面白いことやってるみたいじゃねえか」


 「なぜ知ってる!?」


 「そりゃお前、俺は艦長だぞ?艦内の出来事はキッチリ把握してるのさ」


 それはマジメで良いことだが、ちょっと詳しすぎやしないでしょうか。まぁ、知られて困ることではないのだが。と思っているとシャルルがレイモンドにジト目をした。


 「レイモンド少佐、またそこら中に盗聴器仕掛けたッスね?」


 「・・・・・・」

 

 「言い訳は無駄ッスよ。昨日女子トイレで変な磁場を観測したので。いやー、それ以降ひたすら艦内を駆け回って盗聴器の場所をチェックしてリスト化した私の苦労を考えて欲しいッスね」


 「犯人が俺だという証拠でもあるのか?前は確かにやったけどな、だからって真っ先に俺を疑うのは良くないぞ」


 「じとー」


 「・・・分かったよ!全部オフにするから!くそ、ホントお前嫌いだ!」

 

 なんでコイツ未だに艦長なんて立場にいられるんだ?即通報ものの事件なんだが。今だけは真っ赤になってレイモンドの耳にジュースのストローを突き立てようとしているココアが正解の気がする。

 ココアをねじ伏せながらレイモンドは咳払いをして話を戻そうとし始めた。なんという図太さなんだろう。


 「と、とにかくだな。なにやらアンフィの曲を流して人気だそうとしてるらしいじゃないか」


 「まぁそうですけど、それがどうかしたんですか?」


 「いやどうもしないけど?ユウキはまた物好きなことするなって思ってな。まぁ、精々頑張れよ、下々の民たちよ。ハッハッハ!」


 「それだけ!?おちょくるためだけにわざわざ来たんですか!?」


 「オイオイなにを言ってるんだユウキ。俺がお前らにそれ以上のことをしてあげる理由があるのか?いや、ない」

 

 「救いようのないクソ野郎だ!」


 「なんとでも言ってろ。あ、でもあんまり文句多いと艦から降ろすぞ。くれぐれも発言に気を付けるんだな!ユウキだけじゃないぞ、分かったな?特にシャルルとココア」


 高笑いをしながらレイモンドは本当にどっかへ行ってしまった。マジでなにしにきたんだアイツ。

 しかもあれだけ横暴に振る舞ったにも関わらず、まるで気付かなかったかのように女どもがレイモンドに手を振っている。世も末だ。


 レイモンドの反撃で山盛りポテトのど真ん中に顔を押し付けられたココアが油と塩でギットギトになった顔を上げて叫んだ。怒りを表しているのかアホ毛が角みたいに尖っている。


 「あのスカし盗聴魔、いつか八つ裂きにしてやります!」


 「気持ちは分かるけど・・・ざまぁぁぁぁ!!」


 「この原始人が・・・!ふぁぁぁ!ちくしょー!テラ腹立つ!!」


 「ココア。まずは顔洗ってきたら?あと。鼻にポテト刺さってる」


 「分かってますよ!!ふぁぁぁん!」


 サーシャに言われて、泣いているんだか怒っているんだか分からない声を上げながらココアはお手洗いへと走り去っていく。・・・ざまぁ。いやでも、正直俺が直接手を下したわけではないからそんなにスッキリしない。


 「でもよくシャルルはレイモンドのことを通報しないよな」


 「あれでも艦長ッスからね。それにセクハラくらいの軽犯罪なら権力で揉み消しますよ、あの人なら」


 「後半のインパクトで前半の信用してます的な雰囲気が消し飛んだな」


 「まぁ基本的にレイモンド少佐に関しては疑ってかかれば問題ないッスね」


 だからそう思うならなんであれを艦長のままにしておくんだ。暢気にポテトをかじっているシャルルの考えていることはよく分からない。

 しばらくしてココアが帰ってきた。まだムスッとしている。そりゃそうか。


 それからタイミング良く、音楽コーナーが始まった。


 「お、始まったみたいッスね」


 「だな」


 ちゃんと俺たちの要望通り、曲を流す前の紹介ではアンフィの名前を出さないようにしてくれている。まぁ歌声を聞いたらアンフィだと分かる人もいるかもしれないが、それはそれだ。とにかく事前情報なしで聴いてもらうことに意味がある。

 俺は一旦食べるのをやめて放送に耳を傾けた。昨日一日だけとはいえ俺があんなに頑張って漕ぎ着けたリクエストだ。どんな結果で終わるのかすごく気になる。


 パーソナリティの人が「それでは、どうぞ」と言って、曲がかかる。もちろん、アンフィの曲だ。

 それがそうだと知っているのは俺とこのテーブルの連中だけ。いや、今頃艦長室で惰眠をむさぼっているであろうレイモンドと本屋にいるフランも知っているか。

 

 周りの様子が気にならないわけではないが、俺はとりあえず放送にだけ集中することにした。


          ●

          ●

          ●


 2曲続けて、聴き終えた。やっぱり良い曲だ。明るくて前向きな、希望に満ちた曲だ。


 「さて、まだアンフィさんの名前は出てないけど、他の連中の反応はどんな感じだ?」


 「なんだったんだ今の曲?なんつーか、音薄くね?」

 「もしかして今どき人間が演奏してる系のやつ?」

 「誰だよあんなんリクエストしたの」

 「変わった人もいるってことだよ」

 「俺は悪くはないと・・・」

 「でもなんか今の人の声ベーコン少尉に似てなかった?」

 「は?いや・・・似てなくもない気はするけど、ないだろ」

 「そうそう、似てる声の人くらい世の中にいくらでもいらぁ」

 「大体あの人が音楽やってたとして、なんでわざわざあんな風なのを?」

 「私は嫌いじゃないけ―――」

 「遅れてるよねー」

 「・・・」


 「なんか微妙ッスね・・・ある意味話題性はあったみたいッスけど」

 

 「あっるぇぇぇぇぇ?」


 これはマズいのではないでしょうか。いや、マズいです。本当にマズい。このままではかえってアンフィが笑い者にされてしまう可能性まである。

 ここまで好評価が少ないとは思わなかったのだ。だって、俺が試しに聴いてもらったうちの全員が良いと言っていたのだから、まさかここに来てここまでの低評価になるとは思わなかったんだ。仕方ないじゃないか。


 俺たちがリクエストしたのは2曲だけ。というより1個人・団体でリクエスト出来る曲が2曲までなので、俺たちは(シャルルパワーを使って)その目一杯を使わせてもらったわけで。

 それがまさかこんな結末になるなんて。俺たちもアンフィも努力報われなさすぎだわ。そりゃやめてしまいたくもなるんだろうさ。なんというくそったれな世の中。


 「まさかの低評価。サーシャもこれは想定外」


 「あれの良さが分からないなんてむしろみなさんの方が遅れてるんじゃないですかね・・・」


 無慈悲に流れる曲紹介の続き。


 『―――はい、以上「BEGGINING」でした。そしてみなさん、敢えて最初に伏せておきましたが、なんとこれの作詞作曲をしたのはなんと、私たち「アトラス」が誇る最強チーム、シャルル隊の副隊長、アンフィ=ベーコン少尉です!そしてリクエストもシャルル隊のみなさん!彼女は実は以前から音楽活動に―――』


 「え、マジでアンフィ少尉だったんだ・・・」

 「ま、まぁ趣味は人それぞれだし・・・?」

 「俺たち今度からどんな顔してしゃべればいいのかな」

 「なるべくいつも通りを意識してだな・・・」

 「あの子も変わった趣味あったのねー」

 「まぁシャルル隊と言えばイロモノ揃いだし?」

 「今までクールキャラだったけど、終わったよねー」

 「そ、そんなことないと思うよ?」

 「一応良かったですよとだけは言っておかないとなぁ・・・はぁ」


 ざわざわ。案の定、俺たちが期待していたようなリアクションはなかった。


 「さりげに私たちの隊そのものまで馬鹿にされた気がするんスけど」


 「気のせいだと思う」


 「ウソって出てますけど」


 「言われましたね。イロモノ揃いだって。いや、否定はしないけど・・・でもこの評価は酷いな」


 「むむむ・・・。納得がいかん。訴えてやる」


 「サ、サーシャが怒ってる・・・これはマジでマズいな」


 「あたしも納得がいきません!ちょっと文句言ってきます!!」


 「あ、ちょ、ココア!?」


 俺が止める間もなくココアはズケズケと近くのテーブルに座っていた大人のお姉さんたちにちょっかいをかけに行ってしまった。そう、アンフィのみならず俺たちをまとめてdisっていた3人組だ。

 見覚えのある顔だと思ったら、確か『アトラス』に所属するチームの中では3番手にあたる男女混成チームの女子メンバーだ。女性メンバーが多いという共通点からかして、なにかとシャルル隊のことをライバル視していたとこだ。

 確かそのリーダーをやっているワカメヘアー・・・ではなく濃い緑色でカールのかかった長髪の女の人の階級が少尉で、アンフィを目の敵にしていた感じだ。というかあのワカメスゴリラ・・・ではなくあのリーダーの金魚の糞をやっている取り巻き連中も便乗している。


 「あなたたち、今の曲の良さが分からないんですか!?遅れてるのはどっちなんですかね!」


 「あら?なにかと思ったらシャルルんとこのおちびちゃん1号じゃない。なにそんなに怒ってるの?時代遅れな音楽を時代遅れと言ってるだけなのに。やっぱりシャルル隊の子は変わってるわね」


 「ああん!?ナメた口利いてんじゃないですよ!原始人を馬鹿にするのは一向に構いません・・・というか推奨してますけど、あたし含めそれ以外のメンバーを馬鹿にするような発言は撤回していただきたいですね!!」


 「オイ待てココア、なんでこんなときにまで俺はそんな扱いを受けないといけないんだ?」


 「うっさいですね!原始人は黙ってくたばっといてください!」


 「はぁ!?」


 「ほら、また馬鹿やってる。将来は漫才師にでもなるんでちゅかー?」


 「「ぎゃははははは!!」」


 「ぷぷーっ!ココア笑われてやんの!」


 「は?笑われてんのは原始人でしょうが!!」


 「・・・とんだお間抜け連中だね!結局私らになんか文句あったんじゃなかったのかい?あ、原始人とガキの頭じゃそんなこと覚えてられないか!」


 「「ぎゃははははは!」」


 「「なんだとコラ」」


 ココアと、ハモった、だと・・・?


 「なにハモってんですか原始人!!キモいんですけど!!」


 「ああ!?それ言うなら俺にお前が合わせてきたんだろうが!はいツンデレ乙ー!」

 

 「キモ!なに勝手に妄想してんですかキモいんですけどマジファックですね!!」


 「はいー?キモいって言ったヤツがキモいんですー!」


 「それ言うなら今の時点で原始人もキモい認定済んじゃいましたけどねー!」


 「それ言うならお前も―――」


 「というかあたしはキモくないですけどね!!誰の顔を見てそんなことを言ってるんですかねー!」


 「はぁ?お前今の自分の顔鏡で見て見ろよ!目が死んでるぞ!」


 「―――あ、あのぅ、私らのこと忘れてないですかー・・・?おーい」


 「「おーい」」

 

 おっといけない、そうだった。ココアとの口論になってすっかりワカメたちのことを忘れていた。というかワカメったら、なんか寂しそうな目をしている。

 なんですか、もしかして本当は文句でもなんでも突っかかってきて欲しかったんですか?寂しがり屋さんなんですか?ギャップ萌え希望?いやいや、ないな。さすがの俺でも海藻を頭に載せた女性とは付き合えない。


 「「すみません、すっかり忘れてました」」


 また、ハモった・・・だと?


 虫唾が走る感覚に駆られて俺とココアは顔を見合わせたが、ここはグッと我慢してみせた。なんにしたってアンフィのためだ。いや、俺は低評価をした人に文句を言うのは賛成していない。だが、そもそもシャルル隊のことを馬鹿にするような連中なので、ちょっとくらいはココアの行動を大目に見てやろうと思ったのだ。


 「で?なんなの?」


 「言っていたことを撤回していただきたいと思いまして」


 「へぇ?あんたの階級程度で私に楯突こうっていうんだ?」


 「もちろんです。いつもやっていることなので」


 一瞬の沈黙の後に取り巻きAがワカメに耳打ちをした。


 「・・・姉御、確かにあの原始人階級は准尉ですよ」

 

 「そ、そうか・・・いや、だからってそれを私らに適用しようってのがおかしな話なんだよ」 


 見物人も集まってきて、なんだか話が終わらなそうな雰囲気も出てきた。

 なにもかもが最後にメチャクチャだ。この世界に魔法なんてないって知ったときに負けないくらいガッカリした。やるせなくなってきて俺はテーブルに突っ伏して、ただ放送の続きに聴き入ることにした。


 「ユウキ・・・」


 「にぃ。元気出して」


 「気にすんなよ、いつものことさ・・・」


 2人の美少女に慰められているだけでも俺は十分に報われている。・・・背中を撫でる2つの手が優しすぎてちょっと目頭が熱くなってきたんですが。やめて、泣いちゃうから。

 

 『―――という経緯だったんですね。さて、そんなアンフィ少尉の楽曲ですが、実は本日はもう1つ、お預かりしているんですよね!』


 「・・・え?」


 おかしい。俺が放送室に預けたのは2曲だけだったはずだ。3曲目があるはずがない。

 それなのに、パーソナリティの人はその曲をまるで実在するかのように説明し始めた。


 『これは先ほどの2曲をリクエストしてくださったシャルル隊のみなさんとは別のとある方からのリクエストなんですね!そのとある方は匿名希望とのことなので紹介はいたしませんが、メッセージを預かっております!さてさて・・・ではメッセージの方を先に読みますね。「オマケにこれでも聴いとけ。これがアイツらの本気だ」・・・はぅー!痺れますね!ではさっそく、アンフィ=ベーコンより、「where would my tear go beyond innumberable cry」、お聞きください―――』

 


          ●

          ●

          ●



 「今まで悪かったよぉぉ!階級は一緒でもずっと私らより活躍してるアンフィが羨ましかっただけなんだって!だから、だからこれからは応援します!!」

 「「します!!」」


 「ベーコン少尉、あなたの音楽が遅れているなどと一瞬でも思ってしまった自分なんだか恥ずかしいです!」

 「すばらしかったです!握手してください!」

 「サ、サインください!」


 「いや、だから、その・・・」


 「はーい散った散ったー、ッス。アンフィは昨日の今日でまだ本調子ではないので今日は落ち着かせてあげてくださーい」


 「そうですよー、みなさんの熱い声援はベーコン少尉にも十分届いていまーす。彼女が、そしてあなたたちがこの『アトラス』のクルーで在る限り、握手やサインはいつでもしてもらえますからねー。なので今はここを通してくださーい」


 「なんであんたらも警備員みたいな真似してんのよ・・・」


 「それはだって。アンフィも今や売れっ子になりつつあるから。露払いするのは仲間の役目」


 ―――どうしてこうなった。


 ワカメ女を筆頭にして大勢のクルーが検査を終えて部屋に帰る途中だったアンフィのところに殺到して、シャルルとココア、サーシャがまるで有名人にたかるファンを追い払うボディーガードみたいになって道を作っている。


 原因は、間違いなくあの曲だ。最後に流された、俺も知らないアンフィの楽曲。ただ、俺が知っている通りの「アンフィの曲」だったならみんな揃って掌返しするほどの事態にはならなかった。

 あの3曲目は、俺たちがリクエストしたアンフィの曲とはまるで違う雰囲気だった。歌詞は後ろ向きでもの悲しく、それでもなんとか歯を食い縛って下を向いてでも前に歩いて行こうとする苦痛と勇気が込められていた。そして、全曲通して優しかった曲調はこの曲だけ血反吐を吐くんじゃないかと思うくらい激しかった。


 もしかしなくても、あれはアンフィが俺たちに見せてくれなかった、「最後の歌」だったんだ。歌っても歌っても誰にも届かない自分の声を届けるために叫んで、叫んで、喉が嗄れるほど叫んだ。誰の目にもとまらない苦悩も、報われない痛みも、本当は抱えていた悲しみも、全部、そう、アンフィのナイーブな内面を初めて、そしてそして余すところなく曝け出した歌だった。

 でも、元々それは誰にも届くはずがなかったのだ。でも、なにかがおかしくなって、今日、アンフィの叫びがみんなの心に突き刺さったのだ。


 「まぁ、結果オーライか。きっとフランあたりがやってくれたんだろ」


 「ユウキ!!そんなところでボーッと突っ立ってないで私たちの手伝いしてくださいッスよ!!」


 「えぇ・・・」


 「にぃ。手伝って」


 「よし今行く」


 シャルルに引っかかれながら、俺は人の波に割って入ってアンフィのボディーガード4号機になった。

 さて、やるからには本気を出そうではないか。


 「はいはーい、通りまーす。『バリア』ー!」


 「のあぁぁぁ!?」

 「な、なんだ!?」

 「透明な壁が迫り出してきた!」

 「もしかしてユウキ准尉の仕業か!?」

 「あの野郎なんて妙な真似を!」

 「猪口才!!必殺・岩砕拳ンンンン!!」


 「無駄無駄ぁ!いくら鍛えようと俺の『バリア』を人間のパワー程度で破壊できると思うな!さぁ、道を空けーい!」


 「さすがユウキッスね。こういうときは頼りになるッス」


 「にぃ。さすが」


 「ま、まぁ助かったよ、ユウキ」


 俺は持ち前の魔法によって有象無象を蹴散らして―――いや、実際には怪我をさせないよう細心の注意を払って押し退けながら道を進んでいく。

 途中でなんかムキムキの空手家みたいな男が俺のバリアを殴ってきたが、俺のバリアは逆に言うならパラティヌスの大火力武装の砲撃でさえ数発耐えるほどの防御力があるので、あの程度の攻撃力ではびくともしない。


 「しかし、すっごい人気出ちゃいましたねぇ、アンフィさん?」


 「・・・・・・どうせ私の名前出したから面白がってるだけだって」


 「そんなんだったらあんな血眼になって感想叫ばないですって」


 「それは・・・まぁ・・・そうかもしれないけど」


 「みんなアンフィさんが音楽やめるなんて言ったら、きっと泣くか怒るかしますよ」


 「みんなはみんな、私は私だし」


 「じゃあ、ホントにやめちゃうってことですか。ふーん」


 「ちょ、それは・・・くっそ、なんだユウキ、その顔は!」


 「いえいえ、なんでも?」


 アンフィに捕まりそうになったので俺はそれを躱してアンフィの前に出た。

 普通に考えて、今のアンフィには音楽をやめる理由がない。だって、聴いてくれる人があんなにいるのだから。それにきっと、これを機に以降はさらに広まっていくはずだ。


 「俺はもう昨日アンフィさんを無理に引き留めはしないって言ったから口出しはしないですけどね。もっかい考えてみたら良いんじゃないです?」


 先頭を歩く俺には後ろのアンフィの顔は見えないが、なんとなく悔しい顔をしているのが分かる。

 

 「なんなのよ・・・ホントに。こんな風になるなんて思ってなかった。なんでもないまま一応こんなこともしてたんですよ、くらいで終わるもんだと思ってたのに・・・」


 「いや、俺もあんなことになるとは思ってなかったですけどね」


 あいつら、まだ追いかけてくる。その執念恐えよ。

 なんとかアンフィの部屋の前に到着して、俺はバリアを一部解除してアンフィを部屋の中に入らせた。そしてバリアを残したまま俺たちも一緒に中へ。

 ドアが閉まってようやく平穏が訪れる。さすがにあれだけの人に追いかけられたらトラウマものだ。自分が追いかけられたわけでもないのに、俺は地味に汗をかいていた。


 「はぁぁ・・・疲れた・・・」


 「お疲れ様ッス、ユウキ。それじゃあとりあえずコーヒーでも淹れましょうか」


 「なんでシャルルが自分の部屋みたいに仕切ってんのよ」


 「いやぁ、つい」


 「ついってなんだついって。まぁいいや、じゃあ用意すんの手伝って」


 「はいはーい」

 

 こうして見ているとシャルルとアンフィは確かに上司と部下というよりは付き合いの長い友達みたいだった。

 さて、2人が持ってきたコーヒーが全員に行き渡って、一息つく。さすがに5人も集まると部屋が狭い。俺が掃除のときに楽器類を1箇所にまとめていなかったら今より狭かったかもしれない。さすが俺、グッジョブだ。


 腰を下ろせたことで気分が落ち着いたのか、カップに口をつけてからのアンフィの表情は戸惑いは残しつつも、どことなく迷いが薄れた感じだった。


 「ねぇ、みんな。・・・あれって、夢じゃないんだよね?」


 「なんならハラパンしてあげてもいいッスよ?」


 「そこは頬をつねるとかじゃなくて?」

 

 「冗談に決まってるじゃないッスか。ともかく、夢なんかじゃないみたいッスよ」


 「そっか」


 ポリポリと頬を掻いたり、髪を弄ったり、額に引っかけたクリアバイザーを上げたり下げたり、落ち着かないアンフィ。


 「なんか、実感追いつかなくてさ」


 「そりゃそうですよ。あたしたちですらここまで爆発的に人気が出るなんて思ってなかったくらいですし」


 「本当に、みんな私の歌聴いて、良いなって思ってくれた・・・んだよね?」


 「それは間違いないと思う。機械じゃ。あんなの表現できっこない」


 「サーシャ・・・」


 アンフィは部屋の隅にまとめられた楽器を眺めて、しばらく眺め続けて、それから、吹っ切れたように笑った。


 「参ったな、こりゃ。やめるっつってんのに、なんつーおせっかいだっての。わっけ分かんない。これじゃあやめるにやめられないじゃん」


 「というと?」


 「ふ、あはははははは!!分かりきった顔してさぁ!あははは、あーあぁ、ホント、なんか悩んでたのが馬鹿みたいじゃん。ユウキ、あんたすごいよ。今は本気でそう思う。最初見たときなんて坊やだったくせに、なにいっちょ前に余計なお世話焼いてくれてるのよ」


 「別に、俺はただのファン第1号ですからね」


 「よく言うよ、まったく。―――私、こっからまた作曲始めるよ。ううん、やめずに済んだんだ。あんたのおかげだよ、ユウキ。なんていうか、ありがとね」


 「そうこなくちゃ!」


 そうそう、俺はその一言だけを待っていたんだ。アンフィの笑顔も清々しい。まるで今日のお日様のようだ。

 と、俺がポエムチックなことを考えていると、調子が良いアンフィが俺に肩を組んできた。


 「これからもよろしくね、私のユウキプロデューサー?」



          ●


 と、いろいろかっこつけた台詞を使ってみた俺だが、実際に俺がなにをしたかについてはあまり考えないで欲しい。

 いやいや、俺は本当に頑張った。かっこつけたけれど、俺は実際今回はかなり頑張ったのだ。曲の使用許可取って放送室に持っていっただけじゃないか、とか言わないで欲しい。それだけだったとしても、俺はすごく頑張ったのだ。


 もはやそれすら功を奏さず謎の第三者がリクエストした曲のおかげで今のアンフィの人気が生まれたんじゃないかとか、言わないでください。そんなことくらい俺もよく存じ上げていますので。


 しかし、その第三者とは本当に誰だったのだろうか。シャルルに聞いても分からないと言っていたし、ココアとサーシャも首を横に振っていた。

 俺としては、だから、フランあたりが妥当だと思っている。どこであの曲を入手したのかは分からないが、きっとゴミ捨て場でたまたま楽譜と一緒に見つけたとかなら辻褄も合うのではないだろうか。


 騒ぎがある程度落ち着いてからアンフィの部屋を出た俺は、結果報告のついでに真偽を確かめるため、フランのいる書店に行くことにした。なんにしたってフランも今回の計画には一枚噛んでくれているので、この朗報は伝えてやらないといけない。


 相変わらず寂れた書店だが、ここも発破をかけたら一躍有名になったりするのだろうか。いや、さすがにそれはないか。メジャーではないとはいえ、まだ紙の本は誰もが存在をある程度は認めた上で今の地位にある。必要さえあれば手に取るだけの価値があるだけ、かえって下克上は難しいかもしれない。


 「おーい、フラーン。いるかー?」


 俺が呼ぶと、青髪の美少年がデカい本棚の陰からひょこっと頭を出した。


 「お、旦那。やーっと、来やしたね。で?で?どうなったんでぃ?」


 「フッ・・・俺の顔を見たら分かるだろ?」


 「ふむ・・・相変わらずフツーの顔してますぁ。さすが旦那」


 「こんなに嬉しくもなければ言うほど傷付きもしない『さすが』は初めてだよ!!」


 「冗談だからそんなデカい声ださないでくだせぇ。お客がビビらぁ。・・・まぁ、誰もいねぇけど」


 「それはそれとしても、改めて報告するよ」


 「出来りゃあそれはそうとして欲しくねぇんだけど、まぁ聞いてやろうじゃんか」


 「アンフィさん、作曲続けるってさ」


 「へへっ。そうこなくっちゃ」


 フランは腰に手を当ててニシシと笑う。相変わらず粋な仕草だが、良い笑顔に変わりはない。フランなりにも、俺が見てきた中では一番喜んでいる風だ。


 ―――だがフラン、お前の喜びはそんなものか?俺はまだまだだぞ。なんたって遂に努力が報われたのだからな!今宵は宴じゃあ!

 

 「なんだよ、もっと喜べよフランんんん!!」


 「ふぇぇぁぁっ!?んなっ、だ、抱き付かないでくんなせぇ旦那ぁ!」


 「水くさいこと言うなよ少年!共に苦難を乗り越え望みを叶えた喜びを分かち合おうぞ!!」


 「だっ、だからっ!オレっちは少年じゃねぇって言ってんだろぉ!?」


 フランに押し戻されて俺は仕方なくフランを解放した。ちょっと後ずさったフランはなんだか頬を赤く染めて俺に上目遣いをしてくる。中性的な顔立ちも相まってなんだか変な破壊力がある。だが男だ。


 「なんだよつれないな。男同士なんだから恥ずかしがるなよ」


 「だからオレっちは少年じゃねぇって・・・」


 「はいはい、分かったよフラン。ったく、お前どんだけ俺に名前で呼んでもらいたいんだよ。ちょっと語呂良いから少年って言っただけじゃん」


 「だから!そうじゃねぇんだって言ってんだろぉ・・・」


 「は?じゃあどういう・・・」


 

 「だから、オレっちは、女なの!!」



 「・・・・・・ふぁ?」


 いやいやいやいやいやいやいや待て待て待て待て待て待て、それはおかしいおかしいですよフランさん。だってあなたとっても少年してるじゃないですか。そりゃ中性的な顔立ちとは言いましたが言葉遣いとか一人称とか諸々含めたって男の子でしょ。え、えぇっ!?


 「じゃ、じゃあなに?今俺はさも当然の如く女の子に自分から抱き付いていた・・・と?」


 頷くフラン。オイ待ってくれ、だからそんなしおらしい反応をしないでくれ。

 みるみる赤くなっていくフラン。モジモジする様子が急に女の子らしく見えてきて俺は―――マズい。これ、マズい。もしかして冗談抜きでフランくんはフランちゃんだったとでも言うのか?


 「いや落ち着け俺・・・抱き付いたときも別に胸に女の子らしい感触はなかったはずだ・・・!」


 「なくはねぇよ!なんなら見て確かめるか!?」


 「望むところだ少年!!」


 「ギャフンと言わせてやんよ!」


 フラン少年が自分のシャツの襟を大きく引っ張り、俺はその中を覗き込む。大丈夫だ、相手は少年。自分は女だなどと、俺のことをからかっているだけだ。覗き込むことになんの問題も犯罪性もない。


 服の隙間から覗く生っ白い肌―――綺麗なもので、女だったらそれはそれでアリなくらいだ。だが男だ。俺がそれを今ここで証明する。


 「ほぉら・・・水色のスポーツブラ・・・ブラ?」


 「―――って、なにマジで見てんだよ!」


 「ひぃぃぃっ!?ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


 ヤバイ。真っ平らではあってもないわけではないらしいフランのお・・・おっぱいが目に焼き付いて離れない。というか女の子の下着を見るのって地味にこれが初めてなんですが。

 ああああ!!今俺フランのことを女の子って言った!心の中でだけれど間違いなく女の子って言ってしまった!でも胸に下着つけている人間なんて女性に分類されるヤツしかいないぞ!?


 「フ、フランさん・・・最後に確認しても?」


 「・・・なんでぃ?」


 「股間になんか生えていらっしゃったりは・・・しないん、ですね?」


 「アンタいたいけな少女の胸見た上に、そ、その上、下の方まで見ようとかしてんじゃねぇ!!変態か!!」


 「誤解だよ!!確認しただけだから!!」


 「うっ・・・あ、当たり前だろ!なんも生えてねぇよ!だ、旦那のバカァ!!」


 その瞬間、俺は床に倒れ伏した。すごく、やってしまった。なんかもう取り返しのつかないことをした気がする。泣く寸前まで羞恥で顔を染めたフランはもう完全に女の子だ。

 

 「あの・・・その・・・本当に申し訳なかったですフランくん改めフランちゃん、いえフラン様。なんていうか、今日見た水色のスポーツブラは全身全霊を以て記憶を消去するのでどうかこの汚物同然の変態を許してください」


 「い、いやそんな大袈裟な・・・一応オレっちも勢いとはいえ見てみろって言ったわけだし、ここはオレっちも特別になかったことにしてやっから顔上げてくれよ旦那」


 「本当か!?ありがとう・・・心からありがとうフラン!!助かったよ・・・!!」


 「ったく、旦那もホントにロクでもねぇポンコツだな。そもそもフランって言ってんだから、女の名前だって分かんでしょ」

 

 「言われみればまったくその通りだ」


 さて、しかしこれで俺の初めての女性用下着を見た記憶は消去されずに済むわけだ。男の子と間違えるほどぺったんこでなんの色気もないとはいえ初めて見たことに変わりはない。

 本当はもっとシャルルとかアンフィあたりのサイズが良いのだが、この際フランのささやかな胸でも十分だ。あの意外と可愛らしい水色の布地を後生大事に覚えておこう。 


 「ところで旦那。オレっちも実は旦那に聞きてぇことがあったんですぁ」


 「なんだ奇遇だな、俺も聞きたいことがあったんだけど・・・まぁいいや、レディーファーストだ。先に良いぞ」


 「なんか急に女扱いされても気持ちわりぃからいつも通りで良いよ」


 「いつも通りって言っても昨日出会ったばかりなんだよなぁ」


 「言われてみりゃそうだ。なんか割と前から仲良くしてたような気がしてきたからつい『いつも』なんて言っちまいました。えっへへ・・・」


 ヤバイ。なんか可愛く見えてきた。さっきまで美少年だったくせになんでおんなじ仕草でこんなに萌えるんだよ。煩悩が溜まってきたので俺は首を振って気を取り直した。


 「で、質問ってなんだったんだ?」


 「いやな?放送で最後、3曲目。リクエスト出来んのって2曲までだろ?よく通せたなって思ったんですぁ」


 「・・・?あれってフランが俺に秘密でリクエストしたんじゃないのか?」


 「はぁ?まっさかぁ。オレっちはいつお客さんが来るかも分かんねぇから基本的に店を離れねぇようにしてんだぜぃ?だから放送室になんて行ってないですぁ。旦那、またそんなこと言って実際は自分だけ別口でリクエスト出すことで3曲目をねじ込んだんでしょう?なぁなぁ、もう旦那とオレっちはハグするような仲だろ?んだからさぁ、オレっちにくらいホントのこと教えてくれよぅ」


 「でもマジで俺じゃないってば。大体、俺アンフィさんがあんな曲書いてたなんて知らなかったくらいだし。あとそういうこと言ってると今度から容赦なく抱き締めるぞ」


 ・・・もちろん俺にそんな勇気はないが。


 それはともかくとしても、俺には身に覚えがない。夢遊病で聞いたことのない曲のデータを見つけて放送室に持っていくくらいでもしないと、俺にはあの3曲目をリクエストすることは出来なかった。

 そして、それがフランの仕業でもなかったとなると・・・。

 

 「旦那・・・マジの顔だな」


 「なぁ、じゃあ、あの匿名希望って・・・」


 俺もフランもどんどん顔が青ざめていくのが分かった。


 だって、じゃあ、あれは一体・・・。


 「「誰だったんだ・・・?」」

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