第2話~喰われそうだぞ おっさん~
ウサギもどきは林檎の落ちる音で逃げ出した。
しかし、俺は固まったまま動けないでいた。
確かにこの能力があれば、餓死することは無いけど・・・
けどさぁ、こんな森の中にほとんど運動経験のないメタボなおっさんを、碌な武器の一つもなく放り出すなんて、生き抜けるわけ無いじゃないか・・・
絶望しながらふと、足元を見ると荒れた道の跡が見えた。
「っ!!」
こッこれを辿ればうまくすれば森を抜けられるんじゃないか?
この先の行動に一筋の希望が見え始めたその時、後ろの茂みがガサゴソと動く気配がした。
嫌な予感がしながら後ろを振り向くと、大きい狼みたいな獣が、今正に茂みから出てくる所だった。
「ひゃぁ!!」
俺の悲鳴を全く気にする様子も見せずに狼もどきは悠々とした足取りで此方へやってきた。
俺は狼もどきに向かって手をかざす。
何の攻撃力の無い能力だけど、はったりを利かせれば、逃げられるかもしれない。
なんて、甘い考えは、手をかざした瞬間に狼もどきが此方へ向かって飛び掛かって来て吹き飛んでしまった。
「ぎゃぁぁぁ!!」
迫りくる恐怖で何も考えられず俺は目をつぶり、手のひらからは林檎がポコポコ生み出される。
その一つが俺の手をかぶりつこうとする狼もどきの牙に当たって砕け散った。
「Gaoooo!!」
林檎の硬さに驚いたのか、それとも果汁の甘さに驚いたのか狼もどきは一足飛びで距離を取り、足元に転がる林檎にそっと前足でじゃれつき始めた。
「ひぇぇぇっ!!」
狼もどきの視線が俺から外れた瞬間に無様に転がりながらも逃げ出した。
が、狼もどきはどうでもいいとばかりに、引き続き、残された林檎をもて遊んでいたのであった・・・
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