波
誰もいない浜辺にいた。
何もかも嫌になったからだ。
ささやかな反抗だった。
寝転がってずっと水平線を見たり、本を読んだりしていた。
波の音と、鳥の声だけが聞こえていた。
澄んだ空にはトンビが浮いていた。
僅かに潮の香りがした。
白い砂は太陽の光で暖まっていた。
細かい粒が心地よかった。
服に入ってきても気にすることはなかった。
いつの間にか眠り込んでいた。
起きたときには夕陽が水平線に沈みかけていた。
朱い光は揺れていた。
陽が落ちた。辺りはにわかに暗くなった。
夜風が吹いた。涼しくて、冷たかった。
ランプに火を灯した。
ぼんやりとした光は影をつくった。
そろそろ寝ようと思った。
ランプを消した。
周りは暗くなったが、空は少し明るくなった。
到底降ってきそうにはない、そこそこの星空だった。
でも、綺麗だった。
そして、いつの間にか瞼は閉じていた。
波は休まず、寄せては返した。