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君の背中に俺の名を  作者: 白い黒猫


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6/7

モラトリアムを終えて

 ようやく傷も癒えてきて、チームの練習にも参加出来るようになった。青いお揃いの練習ユニフォームに色の異なる色のゼッケンにより二チームに別れ次の試合を想定してフォーメーションを確認する動きを繰り返す。

「お前、変わったな。スゴいヤル気は前からか、でもプレイに気迫増したよな」

 相手チームに振り分けられていた翔さんにそんな事に言われる。

「あたぼうですよ! やられたらやり返す! ソレが俺のポリシー」

「おいおい、怪我させたのは俺じゃないだろ! 俺に仕返しすんなよ」

 翔さんは苦笑する。

「翔さんには、愛もってアタックしてんじゃないですか! ホントの本気は試合でぶちかましますから♪」

「こえぇ~な」

 そんな会話をしながら笑い合う。ここ最近の出来事で学んだ事。悩んでも仕方がない事は悩まないと言うこと。なんか色んな意味で吹っ切れた。

 何が俺をそうさせたのか? 理由はハッキリしている。一人の人物との出合いだ。


 鬼熊さんとは、あれからメール中心の付き合い。

 お父さんは二度の脳死判定の結果、いずれも脳死と認定され、父親の生前の意思を尊重し移植の為に臓器を摘出した後死亡確定したようだ。

 お葬式には俺も駆けつけたものの、親戚でもなく、会社関係者でもなく、単なる知人の俺がその場で出来る事もなく、お香典を受付で渡し、お線香をあげ、遺族席にいる鬼熊さんにお決まりの挨拶をかける事だけだった。

 受付していた例の同僚という男や、棺を運ぶ手伝いをしたお父さんの教え子達の方が俺より役立っていたし、鬼熊さんに声をかけている感じからも、看病中から鬼熊さんを支え守っているように感じだ。

「よ~し!」

 俺は休憩を終えたことで。そう声をあげ気合を入れる。そして練習グランドへと張り切って走った。


 チーム名の入った紙袋を提げ、俺は鬼熊さんのマンションの前で深呼吸する。そして、部屋番号を入力して呼び出しボタンを押す。

「俺、清瀬秀正です!」

 カメラに向かって俺はそう高々に名乗る。拒絶の言葉はなく解錠され中に入る事ができた。

「あら、久しぶりね」

 そう迎える鬼熊さんの姿は元気そうに見えた。考えてみたら、そしてあの日以来ここに来ていないだけに今更のように緊張する。

「ゴメン練習の後できたからこんな時間になって……」

 勢いで来てしまった事が今更ながらのように恥ずかしくなる。鬼熊さんはクスクス笑う。いつもと違って眼鏡をかけてないからか、より暖かく優しく感じる。

「嬉しいわ! 訪ねてきてくれて」

 俺はその優しい笑顔に顔が熱くなってくるのを感じる。部屋を見渡すと、以前と余り変わってないけど少しモノが少なくなっているのを感じた。

「皆さんに色々貰ってもらったの形見として。そしたら様々の中で父が生き続ける気がするから」

 俺の違和感を察してそう鬼熊さんは笑う。

「キミも何がいる?」

 俺は顔を横にふる。

「いいよ、充分貰ったから」

 俺の言葉に鬼熊さんは首を傾げる。

「アンタにやる気、元気、そう言った色んな物イッパイ!! もういらない。充分だから!

 だからコレ渡しに来た!」

 俺は持っていた紙袋を鬼熊さんに付き出す。

 鬼熊さんはその紙袋をおずおずと受けとる。そして丁寧に包みを開けていき、目を見開く。『23番』の背番号と俺の名前の入ったユニフォームレプリカと『23番』のタオルマフラー。それと今週末のホームチケット。

「俺やられたらやり返す人間なんだ。

 今度は俺がアンタを魅了させる! 感動させる! 興奮させる!

 だからコレ着て応援して! 俺を見て! 俺のファンなんだろ?」

 鬼熊さんは驚いたように、俺のユニフォームから俺に顔を動かし目を見開いたまま見つめてくる。俺はそっと近付きその身体を抱き締める。

「今まで自分の事しか考えてなかった。でも今からは違うプロのJリーガーだ。サポーターの為にプレイする! 先ずは俺にとって一番のファンであるアンタの為にプレイする。いいよね?」

 俺の背中が優しく撫でられる。

「光栄だわ。てもファン一号がこんなオバサンでいいの?」

 俺はその言葉を否定するために、顔をキッと上げる。すると抱きついていたことで思いの外近い位置にあった顔にドキリとする。つい更に顔を近付けその唇に触るだけのキスをする。

 しかし勢い付けすぎたみたいだ、鬼熊さんをソファーに押し倒していた。鬼熊さんは当然ビックリした顔をしたが、俺はそれに構わず再びキスをした。

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