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神殺しの世界で踊れ  作者: 山吹十波
#06 WHITE -Section of Paris-
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#06-06 Fair is foul , and foul is fair.


駅から出てキョロキョロとあたりを見回す完全なお上りさんを演じている偲を放っておいて、詠はフェリシアに尋ねる。


「ここで使える時間は?」

「45分です」

「……短くねぇか?」

「急ぎましょう」

「急ぎましょう、ではなく」

「ルリカさんたちは20分で情報収集をお願いします。集合場所はここで」

「了解です。ナツメ、リンユー。行こう」

「はい」「うん」

「私たちはどうしましょう?」


フェリシアの隣のネルが尋ねるとフェリシアは即答する。


「ネルさんは偲さんと昼食の調達をお願いします」

「……私ポンドしか持ってないですけど」

「大丈夫です、偲さん。私がお金を出しますから」

「つまり荷物持ちですね?」


「私とフィリスは?」

「更紗さんとフィリスは私と詠と一緒に教会――“白の魔導書”のある場所へ」

「手分けとかしなくていいの?」

「そうそう、欧州魔導連合とかに顔出さなくていいの?」

「大丈夫です。少なくともフランスでは星杖教会の影響力のほうが強いですから」

「ヨーロッパのうちフランスとドイツがほぼ独立組織で運営してるって大丈夫なの?」

「まあ、ドイツはこういう組織の先駆けだったから仕方ないけど」

「おーい、そろそろいこうや」


少し先行した詠がこちらに手を振る。


「今行く」「今行きます」

「……何やかんやで更紗とフェリシアって息ぴったりだよね?」

「「は?」」

「……私としては仲悪いのか良いのかはっきりしてほしいんだけど」


前を歩く詠を追って女三人で歩く。


「悪くはないですよ?場合により敵になるだけで」

「そうそう。場合により敵になるだけで」

「それが怖いんだってば」

「フィリスだって、場合によっては敵になるんですよ?」

「そうそう」

「え?そんなことないよ?」

「だって詠のこと好きにならないという保証がないし」

「……この状況で踏み入ろうという気力は今のところないかな。というか目が怖い」


詠が教会の前で立ち止まると、こちらを振り向く。


「おーい、ついたぞ」

「え、ああ。大丈夫ですよ」

「え?何が?――とりあえず、手早く終わらせないと、あと何分だ?」

「38分ですね」

「というかぎりぎりすぎないか?」

「だよね」

「今日中にドイツに入るスケジュールだとそれぐらいは詰めなければ」

「まあ、移動時間が割とかかるしな」

「プライベートジェットみたいなの持ってなかったっけ?」

「あれを動かすと流石に代表にばれる」

「父を通して秘密裏に動かすこともできますけど、それなりに時間がかかるので」

「でもカードの使用履歴とかからバレない?」

「その辺は大丈夫。代表直通の“連合”のクレジットカードじゃなくて、間にハーマンを挟む“黒銀”のカードで会計してるから」

「父ならば適当に処理すると思うので、明細が届く来月まではばれないかと」

「まあ、一応ドイツから飛行機抑えといてくれるか?」

「何席とりましょうか?」

「もう、一機貸し切りでいいよ。うまくいけば結構何人数拾えるし」

「わかりました」

「ねえ、入らないの?」

「「「…………………」」」


フィリスの言葉に教会のドアの前で立ち尽くしている3人が振り向いた。


「……一応聞きたいんだけど、フィリスは“白の魔導書”の所持者、シスター・ミシュリーヌを知っているか」

「え?名前だけは」

「そっか、じゃあ、任せた。5分で切り上げてこい」

「5分!?というか、一緒に行かないの!?」

「できれば会いたくない」

「同意」

「ええ、私も」

「なんでそんなとこに私だけいかせようとするかな!?」

「逆にだけど面識があるオレたちが行くと余計に話がこじれる。時間が足りなくなる。まあ、ミシュリーヌが生きてるの確認したらそれでいいから」

「えー……じゃあ、不本意だけど行ってくる」


フィリスが一人で扉を開き入っていく。


「そういえば、更紗さん。何時シスター・ミシュリーヌにお会いしたんですか?」

「詠とロンドンから帰るついでにパリに寄ったの」

「なるほど」

「……フェリシア、なぜこっちを見る」

「いえ、何も」





「すいませーん……誰かいます?」

「はーい、すぐに行きますねー!」


奥の部屋から金髪のシスターが出てくる。


「何か御用ですか?」

「あの、私IMA“黒銀連合”の魔導s――「ああ!詠さんのところですね!ああ、素晴らしい!素晴らしい出会いです!どうですか?彼の“連合(リーグ)”は!わたくしも神へお仕えする立場でなければ、ぜひ参加したかったのですが!」

「……えっと、あの、シスター・ミシュリーヌにお会いしたいんですが」

「わたくしがミシュリーヌです。あなたは?」

「えーっと、フィリス・ワーズワースといいます」

「ああ、あの“灰の所持者(ホルダー)”ですね!初めまして!ミシュリーヌ・シャルロット・オドランと申します。よろしくお願いしますね!」

「は、はぁ……それで、先日の襲撃の被害状況なんですが」

「ああ、先日の異教徒どもですか……わたくしも力不足で、異教徒を10人ほどしか●すことができませんでした。本当にお恥ずかしい限りです。よりにもよって“虹の魔導書”が奪われてしまうとは本当に」

「えっと、なんかシスターの口から聞いてはいけない言葉が出た気がしたんだけど……「ああ!そういえば、討ち漏らした敵の中に大きな鎧のようなものを装備した者が居ましたね。なんでしたっけ、あれ、“魔導鎧殻”でしたっけ?1機は潰しましたが、あと3機ほどいたようです」

「……はあ、」

「それでですね!「あー、あのすみません。私次に行かなければいけませんので!」そうですか……残念です。また、パリにいらしたときは寄ってくださいね!」

「ええ、わかりました。失礼します!」


大急ぎでドアに戻り外に出る。その間もミシュリーヌは笑顔で手を振っていた。


「どうだった、フィリス」

「……なんか疲れた。ああ、とりあえず、ミシュリーヌさんは無事でしたよ」

「だろうな。よし、次」

「ええ!?そんなすぐ流すの!?」

「ミシュリーヌが滅多なことでケガするわけないもの」

「そうですね」

「“白の魔導書”は結界術、でしたっけ?守りは万全ですね」

「まあ、それもあるけど、アイツの戦闘スタイルは自分に結界張って物理で殴る感じだから……」

「……あの笑顔の裏に狂気が隠れてるんだね」

「まあ、魔導書所持者(グリモアホルダー)なんてみんなこんなもんだよ」

「思ったより時間かかりましたね、すぐに戻りましょう」

「そうだね。ミシュリーヌに私たちのことを感づかれる前に」

『あら?ドアの外から更紗の声がする気が……』

「逃げるぞ」

「「「了解」」」


大慌てで駅へと走る。


「捕まったら一人頭15分は話をすることになるぞ!」

「私何分捕まってた?」

「7分。10分超えたら見捨てる予定だった」

「そこは助けてよ。ということは……あと何分?」

「25分ぐらい」

「じゃあ、結構余裕ある?」

「ミシュリーヌの足止めのためにフィリス、残る?」

「よし、走ろう」



次回 #06 Yellow -Section of Brussel-

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