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神殺しの世界で踊れ  作者: 山吹十波
#04 SKY Blue
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#04-05  Is it chose him in the examiner was correct?

帰りの車の中で、やや遠慮気味に偲が話しかける。

何故なら詠は助手席で更紗の付けた成績を確認しているからで、もちろんその中に自分のモノも含まれているからである。


「実技試験、2級合格3名、1級合格1名」

「言っていいの?」

「まあ、いいだろ」

「え?それって私ですか!?」

「まあ、こっちの成績が良くても筆記で落ちてたら関係ないけどな」

「それは大丈夫ですよ、たぶん。ええ、おそらく……あれ、なんか自信なくなってきた」

「2級は思ったより、だったわね」

「まあ、お嬢様ばっかりでお世辞にも攻撃魔法が上手いとは言えないようなのもいたし。うちの妹は違うけど」

「妹さんだけ動き違いましたもんね」

「当たり前だろ、誰が鍛えたと思ってんだ」

「ああ、そんな気がしました」

「やるからには、受かる程度には鍛えたしな――あれ、もう着いた?」

「支部に試験結果渡さないと」

「ああ、忘れてた」


車から降り、久々の京都支部へと入る。

中に入ると大慌てで駆けまわっている職員の姿がたくさんある。


「今日も忙しそうだな」

「今日はいつもより忙しそうですね」

「あ!四辻!戻ったなら手伝ってくれ!」

「え?中川先輩、私今日全休ですよ」

「チクショウ!1級のこの身が恨めしい!」

「先輩その皮肉通じるの明日までですからね?あと、アメリカのライセンス持ってる私の方が世界的にはランク上ですから」

「うわあああああ、やめろ!俺の矮小な心を傷つけるのは!」


「あれはほっといていい」

「了解。それで、試験の結果は?」

「専用の部屋を作ってるからそっちに」


偲は入れないのでいったん別れて二階の一室へ向かう。


「綾子さん、戻りました」

「お疲れ様です、山月さん。採点結果は?」

「詠が車の中でまとめてくれました」

「さすがですね、榛葉さん」

「いえいえ。それで、技術試験の方の論文は?」

「あ、はい。採点をお願いします」


5枚程度のレポート用紙を渡される。


「はやい方がいいですか?」

「できれば」

「じゃあ、今から採点します」

「お願いします」

「それじゃあ、詠が採点している間暇なので筆記始点の採点でもしてます」

「山月さんもお願いします。今日中に終わらせれば明日は休みを取って戴いて構いません。四辻さんも、合格なら更新手続きのために一時的に魔導連の資格が停止になるので、合格なら(・・・・)明日も休みで構いませんと伝えておいてください」

「えーっと……じゃあ、偲のから採点します」

「そうしてください」

「……………」



ペンを加えながら、黙々と小論文を読み進める。

問題の内容としては新しい魔法の案のようなものだが、これが意外と難しい。

まず、記録されている魔導プログラムをそれなりに把握していなといけない。

また、御題にそった魔法をその場で思いつく発想力がかなり試される。御題については、今回は“魔導プログラムの工業利用とその応用からの攻撃魔法”という何ともよくわからないものだったが、この小論文はかなり良くできている。

採点項目にチェックを入れていく。これの配点は、形式的に決められている採点項目を満たしているか(70点)と採点者の琴線に触れたか(30点)というアバウトな加減なのだ。


採点項目では一部減点で62点。

中々に興味深い発想だったので、これからの期待も込めて22点加点し、84点と合計点に書く。


「終わりましたよ」

「はやいですね」

「文章読むのは得意なんですよ」

「綾子さん。偲、86点で合格です」

「わかりました。そっちの採点済みの物と合わせて結果をすぐに本部に送ります」

「お願いします」

「その間に、お二人は残りの試験の採点をお願いします」

「「マジですか……」」

「市中の見回りの方がいいですか?」

「暑いので採点がしたい気分です」

「同じく」


黙々とマルバツをつけ、得点を書き、採点者の欄に自分の名前を書く作業を続ける2人。

なお、放置してきた偲は別の作業を手伝わされているようで先ほど悲鳴が聞こえてきた。


「ああ、そういえば“連合(リーグ)”の話どうするんだ?」

「詠がいいなら入れてあげて」

「ま、別にいいけど。入ってもお前と一緒で京都に仮登録になると思うけどな」

「大学卒業するまでは仕方ないよね」

「じゃあ、フェリシアにメールしておくよ」


再び、試験の採点に戻る。

残りは10人分ほど。すぐに終わる。


「あれ?二人だけ?綾子さんは?」


静寂を破った方へと振り向く。


「あ、榛葉ちゃん、久しぶり。で、2人とも綾子さん知らない?」

「木花さんお久しぶりです」

「綾子さんならさっきまでそこで打ち込みしてたんですけど」

『わあああああ、ごめんごめん。ちょっと魔がさして!サボってないよ!』

「……支部長叱りに行ってるみたいですね」

「じゃあ、この採点結果纏めておいたからあとよろしくって伝えておいて」

「了解です」


忙しいのか紙の束を置くとすぐに出て行った。

一川 木花(いちかわ このか)は詠や更紗と共に1級魔導師の試験に合格したいわば同期なのだが、年は5つほど上。

本人はあまり細かいことを気にするタイプでないのでかなりフレンドリーに接しているが、京都支部の同期として比較にされるのが更紗(例外)(論外)なのでかなり気の毒だ。


「木花さん、今から警邏だって」

「大変だなぁ」

「人ごとだね……」

「ああ、こっち終ったよ」

「こっちも、あとは名前だけ……よし」

「お疲れ様です」

「「いつからそこに!?」」


唐突に背後に出現した伊志嶺綾子に驚く。


「ついさっきですが。それでは、今日はもうあがってください」

「お疲れ様でした」

「……えっと、あとはお任せします」

「ああ、四辻さんももう連れて帰って大丈夫ですよ」

「はい、さすがにかわいそうなので拾って帰ります」


書類整理を手伝わされていた偲を拾って、更紗の部屋へと向かう。

京都支部から徒歩数分の魔導連が運営している寮だ。


「偲後輩の合格祝いするか?」

「うえ!?お二人の邪魔しちゃ悪いですよ」

「いや、お前の想像しているようなことは起こらない」

「うん、今手だしたら私フェリシアに殺される」

「お前らの間で何があったのかはわからないけど、怖いから聞かないでおく。あ、偲後輩。“黒銀連合(BSリーグ)”入りオメデトウ」

「なんかこのタイミングで言われても……」

「詠のハーレム入りおめでとう」

「うわ、よく考えたら先輩以外全員女性ですもんね。しかも、美人ばっかり」

「どうしてこうなった」

「とりあえず、ご飯つくらないと……」

「私も手伝いますよ」


キッチンに立つ二人を見ながら、詠は色々とこうなった要因を考えるが、


「運が悪かったとしか」

「……本当に悪かったのかしら?」

「それを言うな、カルマ」


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