表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/101

#01-02 In this way, it finishes his ordinary life.

再び朝である。


「詠!そろそろ起きたほうがいいんじゃない?」


カルマに揺り起こされ、目覚ましを見る。

いつも通りアラームは停止している。

そして時刻は……8時。


「おおおお、やっべぇ」

「だから言ったのに」

「姉さん泊まりかー!もっと早く起こしてくれよカルマ!」

「仕方ないじゃない。私だって今起きたんだから」


今から朝食などを作っている暇はないので、身支度だけ済まし、家を出る。


「間に合うけど朝飯抜きはきついな」

『駅のコンビニで何か買えば?』

「そうする」


駅のホームで電車を待ちながらパンを食べる。


「うわ、なんか全から着信がすげぇ数入ってる……アイツはストーカーか」


大量の着信とメールとSNSの通知を消しながら電車に乗る。

別に悪いことはしてないが遅いと文句を言われそうだ。


『あなたの目覚ましって機能してるの?いつも私が気づく前に止まってるんだけど』

「え?一応毎晩セットしてるけど?」


いつもの時間よりいくらか人の少ない電車から降り、キャンパスの方へと歩く。


「なんか昨日より騒がしくないか」

『昨日の続きかしら』

「有名人でも来てんのか?」

「そのまさかだ」


突然前方から声がする。


「全、何やってんだそんなとこで、授業始まるぞ」

「待っててやったんだよ」

「いらねぇよ。で、誰が来てんるんだ?アイドル?女優?」

「ほら有名な魔導師。去年魔導師資格取ったルーキーで第II大学の」

「ああー……それでなんでこんなに騒いでんの?」

「いやだって美少女じゃん?で、この大学比重的に男多いじゃん?それでこの有様」

「で、その魔導師様が何しにうちにきてるんだ?」

「“友人”に会いに来たと」

「へー………」

『あら、久しぶりに更紗と話したいわ』

「機会があればな。たぶん人に囲まれてるから無理だと思うが」

「ん?何か言ったか?」

「なんでもない」


校門をくぐり、人の集まっているところをスルーしようとするが、腕を掴まれた。


「意図的に無視しようとしたでしょう」

「気のせいだろ。で、どうしたんだ更紗」


群衆からは悲鳴と怒声が聞こえる。


「メールも電話もしたのに無視するから」

「ああ、今日遅刻気味で。この後ろの男からストーカーのように怒涛の通知喰らってだな。まだ確認できてない」

「オレのせいか!?……オレのせいだな」


全は自己完結した様だ。

放っておいて話を進めよう。遅刻はしたくない。


「仕事でこっちに来てるのか?」

「うん。放火魔事件。知ってる?」

「ああ、姉さんが捜査本部やってたはず。おかげで寝坊したけど」

「まだ朝弱いの……?それで、“アレ”使ったせいで端末壊れちゃって」

「……わかった。プログラムはどうする?」

「とりあえずメールしておいたから見て。これ私の端末ね」


更紗から新品の端末を受け取る。


「これから仕事か?」

「ええ」

「じゃあ、オレの端末持って行け」


更紗の手に自分の端末を乗せる詠。


「大丈夫だもう一つ(・・・・)持ってるから。昼過ぎまでにはできると思うが」

「わかった17時ぐらいなら取りに行けると思う」

「いや、届ける。見ろよこの有様」


以前としてギャーギャー騒いでいる有象無象を指す。


「自分が有名人だってこと考えろ」

「心配してくれてありがと。じゃあ私は仕事があるから」


更紗が去っていくのを見ると詠もすぐに教室に向かう。


「おい、説明しろよ?」

「良いから急ぐぞ、あと3分だ」

「え!?マジかよ」


急いで教室に入ったはいいが、授業担当の講師の自宅が放火にあったとかで授業自体が消え失せた。


「何のために走ったんだ……」

「全くだ……」


談話室のいつもの席に突っ伏す二人と苦笑いのその他メンバー。


「それで何してたの?」

「ああ、聞いてくれよ。1級魔導師の山月更紗が来てたんだ」

「なんだってそんな有名人が?」

「ああ、詠に会いに」

「…………はぁ?」


丞が処理落ちした。


「更紗とは中学からの友人だが文句あるのか?」

「クラスもいっしょ?」

「最後の一年以外は」

「……という事は第I大学の西条帳(さいじょう とばり)とか第III大学の美作静紀(みまさか しずき)とかも友達?」

「あー、あいつ等とも結構遊んでたな。教室で麻雀してたら校長室に呼び出されたのはいい思い出だ」

「……前々から変な奴だと思ってたけどびっくりだわ」


全と丞による質問攻めをガン無視して作業を始める。

さきほど更紗から受け取った端末を調整していく。


「うわー本物初めて見た。いいですよねKogane社の最高傑作、一級魔導師だけが所持を許される端末“Vision”」

「魔導師資格取ったらもらえるんだろ?」

「ええ、ですが2級は“Force”という一つ下の端末です」

「なんだよー……」

「私1級受けるよ?」

「そうなんですか!?いきなり1級とは」

「まあレベッカなら受かるだろう」

「オレなら?」


全が自分を指さして言う。


「……丞、言ってやれ」

「そうですね、実技60%、筆記5%ってところでしょうか」

「うおっ!?」

「いいから全も勉強しなよー。せっかく真白が教えてくれてるんだから」


全が灯里に引っ張られて退場する。


「しかし、一級魔導師が専属に選ぶようなプログラムを持ってる僕たちが実技で悪い評価出すわけにはいきませんね……詠君と山月さんの顔に泥を塗ることになりそうで」

「うっ……考えないようにしてたのに……」


真白が少し落ちこむ。


「大丈夫、真白はひどいわけじゃないから」


レベッカが真白を励ます。


「……ただそっちの二人は実技関係なしに筆記で落ちるかもしれないけど」

「レベッカ!それは言わないで!」

「そうだぞ!オレたち今必死なんだ」


いつもよりこちらに向かう視線が多い気がするができるだけ気にしないように作業を続ける詠。


『ほら、盛り上がってきたでしょう?』

「まったく、どうしてくれるんだよ……」


キーボードを叩きながら右手の黒い指輪を睨む。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ