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#03-12 My name is "gray".

翌朝、というよりも既に時刻は10時を過ぎ、綴による攻撃を耐えてきた詠ももはや抵抗することが難しくなってきた。


「お兄ちゃん、いい加減に起きて!もう起こすの3回目だよ!」

「……ねむ」

「私より寝るの早かったじゃない、昨日!っていうか昨日何してたの!?」

「その話に関してはノーコメントで」

「なんで!?もう、いいから起きて起きて!お姉ちゃん迎えに行くよ」

「ばあちゃんといってくればいいじゃん……そして、おやすみ」

「だから、起きてってばー!魔法の練習付き合ってくれるんじゃなかったのー!?」

「あー、もう!わかったから乗るな!降りてくれ!」


上にまたがる綴を降ろすと詠は起き上がる。


「早く着替えて!お姉ちゃんもう着くって言ってるから!はい、これ車のカギ」

「寝起きの人間に運転させるのかよ……」


のろのろと着替えを始めたところ、待ちきれなくなった綴に手伝われ、服を着る。


「あー、ばあちゃん。ちょっと、姉さん迎えに行ってくる」

「朝御飯は?」

「綴が急かすから諦める」

「おにいちゃんがおきないのがわるいんでしょ!」


綴に背中を押され、寝起き10分で運転席に座る。


「あれ?オレ、免許証持ってきたっけ……」

「あるから大丈夫。私が持ってる。というか、お兄ちゃんの鞄これだよね?なにが入ってるの?すごい重いんだけど」

「え?あ、ちょっと昨日本屋で漫画買ったから」

「えー?でもそんなにかさばる?」

「嵩張る嵩張る」


昨日受け取った制服がそのまま入っているせいだが、それを綴に知られるわけにもいかないので苦しい言い訳をし鞄を後部座席に投げる。


「さて、いくぞー」

「……お兄ちゃん、昨日の夜なんでこんなにチョコレート買ってるの?あと、山月さんとかフェリシアさんとか、他にもたくさんの女のひとからメッセージが……」

「よーし、オレの財布と携帯返そうか」

「ちょっと待って、私の写真なにこれ」

「勝手に電話帳を開くな!」

「なんでこんな写真張ってるの!?もっとかわいい写真あったでしょ!?」

「ベストショットじゃね?というか、マジ返せ」

「そんなことよりちゃんと運転してよ。こないだ撮ったベストショットに代えておこっと」


自分のスマホから写真を送るとなにか操作をして、こちらに見せる。


「どう?かわいいでしょ?」

「運転中だよ!」


駅の駐車場に車を停め、背伸びをする詠。


「で、姉さん着いた?」

「あと15分ぐらいかな……あれ?なんか向こうの方ひとが集まってる?」

「見に行ってみるか?時間あるし」

「うん」


野次馬たちをかき分けて中心を覗き込むと、そこには倒れる数人のチンピラとそれを押さえつける更紗と2人の女性魔導師。


「あ、更紗さんだよ」

「朝からよくやるなぁ……」

「もう昼だよお兄ちゃん」

「おい、一人逃げた」「こっちくるぞ!?」


拘束が甘かったのか逃げ出した男がこちらに向かって駆け出し、人質にしようとでも思ったのか綴へと手を延ばす。


「え?」

「よっし、魔導師だかなんだ知らねーけど動くんじゃねー……ぜぐぼ!?」

「てめーは、誰の妹に勝手にさわってんだ殺すぞ」


拳一撃で金髪の男をコンクリートに沈めて綴を抱き戻す。


「おおおお、お兄ちゃん!?」

「怪我してないか?うん、大丈夫そうだな。オレ、ちょっとこれ冷凍してくるから。おーい、更紗」

「いいから、お兄ちゃん。怪我してないし、もう更紗さんに任せていこうよ!」


ぐったりしてるチンピラを引きずって更紗のところへ持っていこうとする詠を引き留めるなぜか頬を少し赤くした綴。


「いや、でもさー」

「というか魔導師資格持ってないから攻撃したら捕まるよ!?」

「え?いや……あ、そうだな、うん」

『自爆してどうするのよ』

「ギリ踏みとどまったよ......さて、いくか」


チンピラを捨て、詠が振り返り綴の手を引いて駅の中へと入っていく。


「ちょ、ちょ、手」

「あ、悪い。流石に恥ずかしいか」

「う、うん。というか、お兄ちゃん格闘技とかやってたっけ」

「ちょっと前に加那萌さんから……なんでもない」

「そこまで言って伏せる意味ある?」

「あ、ほら姉さんだぞ」


向こうから手を振ってこちらに来る縁を指して露骨に話を反らす詠。

しかし、背後に気配を感じ振り返る。


「……………………」

「どうしたの?」

「いや、ちょっと急用思い出して。悪い。ちょっと、先に帰っててくれ」


綴に車のキーを渡す。


「え?ちょっと」

「夜には帰る!」


鞄を抱えて、トイレへと入る。

さすがに制服なしで戦うには厳しい相手だ。

少し丈の長い影千代の制服を着込み、端末を設定する。

トイレの出入口で駆け込んできたサラリーマンに驚かれながら革の手袋を装着し、外へ出る。


「カルマ、インビジブル・カーテン」

「今更?」


いつの間にか隣に現れたカルマがこちらを見上げながらそういうと、詠が頷く。


「綴にだけばれなければそれでいい」

「わかったわ」

「トラムは少しこの制服をオレの体に合わせて少し変形させてくれ」

『うん、お安いご用』

「というか相手の位置わかってるの?」

「大体の方角は……探してくれると嬉しい」

「まったく…………あっちよ」


先行するカルマを追って銀の魔導書を抱えた詠が駆ける。

かなり早い段階で人にぶつかり術が解けているため皆がこちらを見ているがもはや気にしている余裕はない。

既に目の前で数人の魔導師が床に沈んでいる。


「遅かったね。じゃあ、観客の皆さんにも改めて自己紹介を、”黒杖”所属、『灰』のゲンマ」

「本名は伏せる。IMA所属”黒銀”」


野次馬が湧くが正直邪魔だ。


「観客が多いのは厳しいかな?」

「気にするな。流れ弾で誰か死んでも揉み消す」


その一言で野次馬たちがかなり後ろに下がった。


「晩飯までに帰らないといけなくてね。早めに終わらせる」



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