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#01-01 Let's take care about handling of fire.

5月19日火曜日。時刻は1時過ぎというところか。


「昨日から張ってるんですけど、ホントにでるんですか?放火魔」

「それはわからない」

「そもそもなんで私たちなんですか?大阪支部に任せれば……」

「この間捕まえた男……名前は忘れたけど。あれと手口が似てるから、って協力要請が来て。大阪支部は人員不足だから」

「うちら京都支部も余裕があるわけじゃないですけどね」


山月更紗(やまつき さらさ)四辻偲(よつじ しのぶ)は日本魔導師連盟・京都支部に所属する魔導師である。現在は応援として大阪にて放火魔を探している。

この放火魔に関しては、ライターやマッチなどを使った形跡がないためまず魔導端末による点火が行われたとして警察は見ている。同様の事件が京都や他の都市でも発生していて、京都において犯人を捕縛したのが彼女たちである。


放火犯が現れそうな場所として警察が挙げたポイントを巡回する。

すでに開始から1時間。1時間ずっと歩き回っているのはなかなか堪えるもので。


「だいたいなんで女子二人にやらせるんですかね。男連中に余裕ある奴らいたでしょうに」

「仕方ないじゃない。仕事は仕事。あ、ほら」

「……あの黒づくめ。明らかに怪しいですね」

「追いかけよう」


路地裏に消えて行った黒づくめを追う。


「なんでこの季節にコート着てるんだろう」

「サマーコート……じゃないですよね?」


さらに追いかける。角を二、三回曲がったとき動きが止まった。


「端末用意して」

「はい」


その時男が目の前の家に火を放った。


「あっ!……端末起動。音声入力モード」

《Input with a sound : Starting》

「私は火を消すから偲は犯人を」

「了解です」


偲がこちらに気づき走り去った犯人を追う。


「プログラム“Mint”“Cyan”並列起動」

《Mint : Starting……Success》

《Cyan : Starting……Success》

「“フリーズブレス”発動」

《Magic : Starting》


端末を構えた更紗の手のひらに冷気が集まり、燃え盛り始めた炎を噴出する冷気で一気に鎮火する。

とりあえずこれでこれ以上被害が出ることはないだろう。ふう、と一息ついた直後。

耳につけた無線から偲の声が響く。


『犯人、移動停止しました。場所送ります』


更紗の携帯端末の地図に赤い点が表示される。


「すぐに合流するからまってて」

『無理ですって。もう気づかれてるんですから』

「できるだけ戦闘はしないように……」


そう更紗が言った瞬間スピーカーの向こうから爆音が聞こえた。


『撃って来たので応戦します』

「……すぐ行くから。“アクセル”発動」

《Magic : Starting》


魔法で移動速度を強化し目標地点まで走る。

この距離ならば1分はかからないだろう。


『相手は火の魔法をメインで使ってきます。かなり強力……きゃっ!?』

「偲、大丈夫?」

『ええ、しかし火力が……赤の魔導書を一度見たことがありますがそれ並に出てる気がします』

「端末の種類はわかる?」

『……見たことない端末です。外装は真っ黒です』

「!!……気を付けて、それは危険よ」

『そうなんですか?……えっと、これは……』


更紗が現場に滑り込んだ時、相手は禍々しい炎の塊を偲に向かって放とうとしてた。


「逃げましょう先輩!あれはまずいです!」

「ダメ。ここで逃げると私たちの後ろの住宅が」

「でもアレはヤバいですって!」

「……限定魔法“マジックイレイズ”起動」

《Magic : Starting》

《A limit is reached》


更紗の端末の画面が激しく明滅しながら光の波を放った。

黒ずくめの男が高笑いしながら真っ黒に燃え盛る炎をこちらに打ち出す。

しかし、それはこちらに到着することなく、更紗の端末から発生した光の波にかき消された。


「……先輩!すごいです!なんですかさっきの!」

「偲。静かに。一応深夜だから。それよりも犯人は……」


そこに姿はない。


「くっ……逃がしたか」

「とりあえず警察には報告します」


偲が無線で警察に連絡を取る。

しばらく適当に返答した後電話を切る。


「すごい文句言われました……まったくこっちの苦労も知らないで。それよりもあの魔法は自分で組んだんですか?」

「え?いや、友人に組んでもらったの。私の一番信頼している人に」

「そうなんですか。あとでもう一回見せてくれませんか?」

「ごめん。それは無理」

「あ、やっぱり手の内をさらすのは……」

「そうじゃなくて」


握っていた端末を偲に見せる。


「え……マナ切れですか?」

「ちがう。この魔法、負担が大きすぎて端末自体が壊れるの」

「え、……それじゃあ端末どうするんですか?……すみません私のせいで」

「とりあえず修理するより買い換えた方がはやい。朝一番で大阪支部に行って予備の端末貰えばいい」

「でも、プログラムは?」

「近くに私の専属がいるから明日の朝頼みに行く」

「そうですか……」

「気にしないで。そろそろプログラムを書き換えてもらおうと思ってたから」


自分の力不足のせいだと考える偲を慰めながら、大阪支部に連絡を取り、端末を用意してもらう。


「さあ、とりあえずホテルに帰ろう」

「……わかりました」


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