#03-02 The reason by which she came so far?
翌日、最後のテストも終了し、開放的な気分の一同(ただし、一部除く)が、意気揚々と帰宅の準備を進める。
「なんで、あそこであの問題がでるかな……」
「丞、このバカどうしたんだ?」
「出ないとヤマ張ったところが出たようです」
「どんまい」
「全然心こもってないな」
全がこちらを睨む。
一方、真白は灯里に声を掛ける。
「灯里はどうだった?」
「うーん、微妙かなぁ。先生がお情けくれたらなんとかなるかも」
「……なんとかなると良いですね」
「ほんとに……。そういえば、レベッカはどうだった?」
「私は特に問題ないかな。2、3個読めない漢字があったけどなんとかなったし」
「流石レベッカ……まあ、あたしも全よりは成績良いだろうし、問題ないか」
「おい、まだ結果出てみないとわからないだろ!?」
「ふーん、そんなの結果見なくてもわかるし」
「なんだと!?」
丞と真白が止めに入りヒートダウンしていく。
この二人の口論は割りと頻繁に起こる(それも下らない理由で)ことだが、一度始まると長引くので、丞がすぐ止めるようにしている。
ただ、この二人は基本的にアホなので次の日になれば大抵の事は忘れているが。
「そういえば、詠。連絡あった?」
レベッカが詠に尋ねる。
「いや、まだなんとも。まあ、フェリシアが手配してくれるから悪いようにはならんだろう」
「まあ、最悪詠が何とかしてくれるよね」
「最悪の場合な」
「何の話ですか?」
詠とレベッカの間から真白が顔を出す。
「あ、ああ。ちょっとな。知り合いが来るって言ってるんだけど、連絡ないからどうしたのかなって」
「そうですか。へー……」
あまり信じていないという顔で真白が返事をする。
「さてと、詠とレベッカはこれからデートだっけ?」
「うん」
「おい、丞。発言には気を付けろ。死ぬぞ、オレが」
真白のいる方向から漂ってくる冷気を感じながら、振り向かずに丞に抗議する。
「ごめんごめん、それよりも電話鳴ってるよ?」
丞が机の上に放置してある詠のスマホのランプが明滅しているのを指差していう。
着信はフェリシアからだった。
『連絡遅れてすみません、到着しました』
「おう、空港か?……というか、お前が来たの?」
『私は着いてきただけですね。そっちの方はメイジーが担当します』
「メイジーさんか、じゃあ安心だ。それで、関空まで迎えにいった方がいいのか?」
『いえ、大丈夫です。もうキャンパスの入り口まで来てますから』
「わかった、すぐそっち行くわ……ん?お前、今なんて?」
『メイジーさんが担当します?』
「そのあとだよ」
『キャンパスの入り口まで来てますから?』
「そう、それ!お前が来たらパニックになるだろうが……一寸は自分が有名人ってことを自覚しろよ、ミスFWI」
『そうは言われましても……』
「とりあえずすぐそっち行くから動くなよ!」
詠は電話を切ると、鞄を掴んで立ち上がる。
「行くぞ、レベッカ」
「う、うん」
「え?何々?」
「すまん、ちょっと急ぎ」
こちらを気にする4人を放って、レベッカと教室を飛び出す。
指示通り、フェリシアとメイジーは動いていなかったが人だかりができはじめている。
「詠」
「とりあえず、マリウス翁のとこ行って部屋借りよう」
「あー、大丈夫。それは、あたしとレベッカちゃんでやっとくからー。というか時間ないからいそいでねー」
メイジーが気の入ってない声で、そういうとレベッカの手を取って校舎の方へと歩き出す。
「え?ちょっ、詠!?」
「あー……、その人変な人だけど、大丈夫。たぶん」
「ほんとに!?っていうか、力強いし……!」
「ほら、とりあえず"面妖"のお爺ちゃんのとこに案内してー」
「えええ……!?」
フェリシアが引き摺られて小さくなっていくのを見送りつつ、フェリシアに声を掛ける。
「えっと、直接会うのは久々だな」
「そうですね。メイジーに頼んだのはよかったんですけど、あの人単独だと何するかわからないんで私も日本に来ることになりまして。まあ、メイジーは多忙なんでこのあとすぐにオーストラリア行きですけど」
「まあ、正しい判断だと思うけど……。とりあえず、ありがとな」
「まあ、他にも用事がありましたから。とりあえず2泊するんで、泊めてもらってもいいですか?」
「えっ、ちょっと待てよ。いくつか聞きたい事があるけど、とりあえずこれから聞くわ、メイジーさんにオーストラリアまで誰が付き添うんだ?」
「……落ちないと良いですね、飛行機」
「おい」
ため息を1つ付き、周りを見る。
未だにこちらに注目している野次馬たちに気づく。
「とりあえず移動しよう。お前、目立つ」
「そうですか?」
「金髪碧眼の美女は日本じゃ目立つんだよ、覚えとけ」
「気を付けます。じゃあ、どこか喫茶店にでも」
「そうだな、とりあえず近所でいいよな……それで」
ポケットのなかで端末を操作しながら視線をフェリシアの後ろの茂みに向ける。
「出力70%カット、"ウォーターバレット"発動」
《Output is suppressed 70%》
《Magic : Starting》
「食らえ、全」
「ぬおわぁ!?なんでオレだけ!?」
頭と同じサイズの水球をぶつけられ、全身すぶ濡れになる全。
悲鳴をあげる全が立ち上がるのに合わせて、茂みから残りの3名がでてくる。
「お前らはなにしてんだよ」
「フェリシアさんの名前が聞こえたのでお会いできるなら、と。あと、サインください」
ペンと色紙をフェリシアに渡す丞。
フェリシアは動じることなくそれを受け取り、サインを書いて丞に返す。
「ありがとうございます!」
「あ、詠。言わない方がいいんでしたっけ?」
「うん、頼む」
「わかりました」
詠の正体を明かすか否かの確認をとるフェリシア。
「それで、丞さんは知ってるようですがこちらの方は?」
「教えてやれ、丞」
「はい。こちらの方はアメリカ連邦魔導局所属の魔導師、フェリシア・V・シャンクリーさんです」
「皆さん初めまして」
丞の紹介に合わせてフェリシアが軽く会釈する。
「そういう事だから、じゃあな」
「待って、待って!なんでそんなに逃げようとするの?」
「それはだな灯里、めんどくさいからだ」
そう言いきる詠といつものことなので動じないフェリシア。
「というか、詠。フェリシアさん?は彼女か何かなの?」
「いや、ちが「ちがいます」……そこまで強く否定されると凹むわ」
「とりあえず、移動しましょうか。積もる話もありますし」
「おい丞。なんでお前が主導権握ってんだよ」
「結局のところ、どういう関係なの?」
灯里が興味津々でめを輝かせながらフェリシアに尋ねる。
「詠と私の関係ですか?」
「うん、うん」
「そうですね……今のところ、"許嫁"といったところでしょうか」
「え」
「ええっ!?」
「え!?」
「嘘だろっ!?」
「マジか」
灯里・真白・丞・全・詠がそれぞれ驚く。
「って、なんで詠も驚いてるの!?」
「今はじめて聞いたからな。なるほど、用事ってそっち関係か……」
「はい。御姉様への挨拶と市役所と大使館等に一緒にいってもらいます。向こうでしないといけない手続きは全部してきましたから」
「うわぁ、知らない間に詰められてた……。というか、許嫁ってだけじゃないんだな。籍入れさせに来たのかよ」
『さすがフェリシアね』
「まあ、半分はうちの母親と向こうの親父のせいだがな」
詠がため息をつき、他の面々はポカンとした表情をしている。
真白に関しては、心ここにあらずといった感じで空を見つめている。
「まあ、そろそろこうなるだろうとは思ってたけどなぁ……。むしろフェリシアぐらい美人で優秀なら万々歳だが」
「というか、どうしてそういう事になったんですか?」
一番に復帰した丞が詠に詰め寄る。
「近い」
「いいから答えてください」
「うちの母親が魔導大臣でな。まあ、政略結婚って奴だな」
「なるほど」
「なるほどじゃないでしょ!?真白、真白帰ってきてー!?」
「詠、そろそろ移動しましょうか」
「あ、ああ……って、メイジーさんはいいのか?」
「はい、タクシーをそこに待たせていますので」
「そっか。じゃあ、またなー」
「お!?詠、てめぇ待ちやがれ!?」
追って来ようとした全を受け流し、これ以上のややこしい追及から逃れるべく、先を急いだ。




