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神殺しの世界で踊れ  作者: 山吹十波
#02 ORANGE -First part-
22/101

#02-05 Welcome to the northernmost end in Japan.

バスの最後部の座席に陣取った詠は偲の端末をチェックし始める。


「しかし、ほとんど市販品ってどういうことだ?プロ仕様の奴買えよ……」

「仕方ないじゃないですかお金ないんですから」

「その割には静紀が売りだしてるプログラムは買っているようだが」

「いやそれはたまたま安く買えたんです」

「とりあえず全部消してから一から組み立てるか……」

「ええ!?勿体無いじゃないですか!」

「金出してくれるならコピー取っといてやるが、払えるか?即金で40万」

「うぐ……むりです」

「そもそもコピー取っても使う事永遠にないぞ?」

「そんなもんですか?」

「そんなもんだ」


偲に端末をいったん返却し、そろそろ到着するというので降りる準備をする。


「レベッカ先輩はさっきから何を?」


偲がしきりにメールをチェック、電話をしたりしているレベッカを指して言う。

会話の内容はドイツ語なので理解できないが。


「本国と連絡取ってるんだろ。まあ向こうにもいろいろ事情があるんじゃないか?」

「それはそうなんでしょうけど……そういえばなんで“紅蓮”なんて二つ名なんですか?」

「それはコイツが火魔法ばっかり使うから」

「……納得しました。じゃあ詠先輩と更紗先輩の“銀”は?」

「それはオレたちが氷の魔法をメインで使ってるから」

「なるほど。一応理由あったんですね」

「それとオレのは魔導書のせいでもあるけど」

「どうやったら先輩たちに追いつけますかね?」

「そうだな……どっか犯罪組織を単騎で潰すとか?」

「無理です」


そうこうしているうちにバスは停車し、詠たちもバスを降りる。

レベッカの方も話はまとまったようだが、若干疲れた顔をしている。


「そういえば白熱してたみたいだが」

「ちょっと上司(・・)と話し合いが長引いてね」

「なんだ勝手に動いたからWUGから説教食らったのかと思ったけど違ったのか」

「早く詠を連れて帰って来いってさ」

「……勘弁してくれよ」

「それより先輩」


偲の声が二人の会話を切る。


「6月とはいえ札幌ってこんなに暑かったですか?」

「今が……24度か。大阪と比べれば大差ない気もするが、確かに気温は高いな」

「例年通りならこの時期の平均気温は17度ぐらいのはずだ」


声の方向へ振り向くとスーツを着崩した中年の男が立っていた。


「糸日谷支部長」

「まさか応援を呼んだらお前みたいなのを送って来るとは……」

「はっはっは、あらゆるコネ使ってクビにしますよ?糸日谷支部長」


過労のせいか胃を押さえている支部長に続き車に乗り込む。


「この気温は今回の件とやはり関係あるんですか?」

「ああ、一応は。ただの放火じゃないことはわかってる。“黒杖”と“OTO”が動いてるのも掴んでるが、この原因はわからん」

「はぁ……やっぱり日本じゃその程度(・・・・)ですか」


助手席に座る詠がやれやれと言った表情をする。


IMA(うえ)はなんか掴んでるのか?」

「本件は秘匿義務の発生する案件ですので」

「相変わらず腹立つ奴だな」


こめかみに青筋を浮かべながら糸日谷が言う。


「さっきから親しげだけど、知り合いなの?」


後部座席からレベッカが問う。


「昔ちょっとやり合ってボッコボコにしたことがあるぐらいだな」

「忘れろ」


そう言いながら車を停車させる。

しばらくして、到着したのか、エンジンを切り、車を降りていく。


「……ついたのかと思ったらコンビニじゃねーか!」

「いいだろ。オジサン甘いもの切れるとイライラするんだよ。お前らみたいなのがきやがったからイライラ倍増だよ」

「……ああ、誉がいるんだったな。お疲れ」

「…………あの野郎と知り合いか。わかるかオレの苦労が」

「ああ、わかるよ。ちょっとアイスクリームでも奢らせてくれよ」


共通の敵(?)の話題で意気投合したようで握手を交わす2人。


「……話が見えない」

「ホマレって……もしかしなくても」

「おい、榛葉。ちょっと今日の夜付き合えや。オレの苦労話聞いてくれ」

「しかたねーなオッサン。とりあえず仕事終わったらな」


その後女性陣が軽く引くほどのスイーツを袋に入れて帰ってき、次こそは札幌支部へと向かう。

コンビニから数分。駐車場に止められた車から降りる。北海道らしい二重玄関をくぐり、エントランスを抜け真っ直ぐ二階へ。

会議室の扉を乱暴に開けた糸日谷が中を確認する。


「おら、お前らお客さんだ」

「おおっ!待ってました!」


椅子に腰かけていた男が立ち上がる。

そしてその周りでしゃべっていた2名もこちらへ注目する。


「……って、佐次郎はどうしたんだ?」

「さあ?まだ空港にいるんじゃねーか?」


適当に返事をした糸日谷は上座の席に腰掛けると、アイスクリームを食べ始めた。


「まあいいか。初めまして、“鉄壁”こと六角 誉(ろっかく ほまれ)だ!」

「2級魔導師古市 小鞠(ふるいち こまり)です」

「1級魔導師五十畑 樹(いかはた いつき)です」


それぞれ自己紹介を始める。

プラカードの男こと佐次郎はいいのだろうか?


「|Freut mich!《はじめまして》。“紅蓮”レベッカ・ハインミュラーです。今回は“黒銀”の補佐として来ました」

「同じく補佐として、2級魔導師四辻偲です」

「よろしく!二人とも」


誉が笑顔で返答する。そして詠の方を見る。


「それで、榛葉はいつの間に魔導師になったんだ?お前も“黒銀”の補佐?」

「ん?ああ、まあそんなとこじゃね?」

「……答えるのめんどくさくなるのやめろよ、お前」


糸日谷にじと目でにらまれる詠。

そして、背後の扉が開いた。


「ちょっと、支部長!見つけられなかったってどういう事っすか!こんなにわかりやすくしてたのに!」


プラカードの男がプラカードを持って入ってきた。


「おお、佐次郎お帰り。ちょうど自己紹介してたところだ」

「……お前よ。そんなもん持ってる奴には近づかねーよ。バカなのか?」


糸日谷がため息をつきながらプラカード男にそういう。


「失礼な!……あ、みなさん初めまして2級魔導師柳 佐次郎(やなぎ さじろう)っす」

「こっちのプラチナブロンドの美人さんが“紅蓮”のハインミュラーさん。で、こっちの黒髪の美少女が四辻さん。で、こっちはオレの高校時代の友達である榛葉」

「へえ……よろしくお願いします」

「で、榛葉さんはすごい人なんですか?」

「ん?ああ……勉強はできるともできないとも言い難いけど、基本的に何でもできる奴?ほら、いるだろ?勉強してないのにテストで平均周辺の点数取る奴」

「それは褒めて良い物でしょうか……」

「課題とかも基本的に静紀か千一の奴写してたもんな、お前」


いやー、懐かしい。という六角に対して疲れた顔をしている榛葉。


「……帰っていいかな」

「ダメでしょ」


レベッカに止められたので渋々話を始める。


「はぁ……糸日谷さん。後は任せた」

「よし、解散!」

「いや、ダメだろ!」


五十畑と名乗った男が制止する。


「何がダメなんだ、言ってみ?」

「だって連携とか……」

「そんなもん取る必要はない。IMA(御上)から捜査に関しての全権を“黒銀”に移譲、支部から参加するものの選出は“黒銀”に一任って通達を受けてる」

「はあ?ふざけんな!」


六角が声を上げる。


「オレたちも参加するぞ!」

「黙ってろ。捜査妨害は厳重に罰せられるぞ。お前らみたいな下っ端には話せない事情もあるみたいだし」

「オレはIMA認定の魔導師だぜ?大丈夫だろ?」

「アホか。日本での資格しか持ってない奴は二つ名持ってようが駒にすらならねーよ。いいからいつもの職務に戻れ」

「納得いかねぇ!榛葉も何とか言ってくれよ」

「はあ………」


詠は例の如くため息をついた。


「じゃあ、とりあえずオレたちに勝ったら参加してもいいよ」

「よっし!」

「おいおい、オレが後から怒られないようにしてくれよ?」

「えええ!?なんで私も!?」


頭を抱える糸日谷と動揺する偲。


「偲は参加しなくてもいいが……まあ隣の人はやる気みたいだけど」

「ええ……じゃあやりますよ」

「よし、すぐやろう。いや、久しぶりだな模擬戦」

「まあ、待て。1時間待て。こっちも調整がある。何せさっきついたばっかりだからな」

「ああ、そうか。ごめんごめん。じゃあ一時間後に、地下の訓練室に」

「あいよ。じゃあ偲後輩。端末を出したまえ」

「もしかしなくても一時間で仕上げるんですか!?」

「そんなわけねーだろ」

「ですよねー……」

「慣らしと説明の時間がいるから20分だ」

「そんなこと可能なんですか!?」

「大丈夫。構想はできてる」


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