#01-14 To be continued.
車を返し、電車に乗り換え大学へと向かう。
まず最初に向かったのは学長室。
「おーす、シード」
いつも通り椅子の上で丸くなっている猫を重そうに抱え上げる。
「お前笹川の奴撃退したらしいじゃんか。さすがだな」
そうほめると、猫派ふてぶてしくにゃあと鳴いた。
それを見て笑いながら、シードを椅子の上に降ろし、ポケットからスルメを出して与える。
「とりあえず壁開けてくれ」
そういうと猫はスルメを咥えて壁の穴に潜って行った。
少しして壁が開く。
「どうやら無事解決したみたいじゃな」
「ああ、割と面倒な奴に目をつけられたがな」
「……“黒杖”の連中か」
「そうそう」
「君はよほど我が母国に好かれているようじゃが……確か魔女にも目をつけられていたじゃろう」
「まあな。だからこそレベッカがここにいるわけだが……」
「……ほお、さすがに気づいているか」
「というかアイツが魔女なのは知ってた。本人に聞いたし」
「……あの娘も無茶をするのう」
マリウスは髪のない頭をかきながら嗤う。
「それで、薔薇十字のお爺様はオレをどう口説くつもりだ?」
「……バレておったか」
「いや、この学校の校章薔薇と十字だし。あからさまだろ。二つ名持ちのドイツ魔導師がこんなとこで隠居してるってのもおかしな話だ」
「我々としても優秀な魔導師は欲しいのでな」
「まあ、アレだ。本格的に逃げ場がなくなったら頼るかもしれんが」
「そうか。ならば逃げ場がなくなるように追い詰めよう」
「やめろ。聖堂騎士団からもお誘い貰ってるんだ。戦争したいのか?」
「また厄介な……」
「まあ、しばらくはどこにも関わる気はない」
そういうと、出口の方へと向かう。
「……“黒杖”の件で情報を1つ」
「……何の真似だ?」
「何、小遣いだと思って聞いておけ。奴ら、魔導書を入手したらしい。No.019・灰の魔導書だったはずだ」
「……管理番号がついている割には聞いたことがないが」
「IMAが秘密裏に中東に保管していたらしいが奪われたみたいだな」
「なるほど……あとで確認してみるよ」
そういうと扉から出る詠。
正面にはレベッカが立っていた。
「全部終わった?」
「ああ、恙なく」
「犯人は杖の連中だったみたいだけど」
「ああ、お前らは面倒なこと起こすなよ?」
「あのね、テロ組織と一緒にしないでくれる?私たちは割とまともな活動してるんだよ?」
「あまり説得力はないが納得しておこう」
レベッカを伴って廊下を歩く。
この時間だとアイツらはまだ談話室にいるだろう。
「そういえば真白が“銀姫”といちゃついてる詠を見たって言ってたけど。浮気?」
「否定しづらい……というか浮気ってなんだよ……」
「ドイツの魔女は一途なんだよ?」
「そんな設定初めて聞いたし、そもそもレベッカと付き合ってるつもりはないが?」
「えー!せっかくドイツから追いかけてきたのに?」
「しらねぇよ」
文句を言い続けるレベッカに腕を取られながら談話室へと入る。
「おーす」
軽く、いつも通りあいさつしたつもりだったが何故か人数分の殺気がこちらへ向かって来た。
「てめぇ、詠!山月さんに何しやがった殺すぞ」
「うるせぇ」
真っ先に噛みついてきた全を床に沈める。
それを見て灯里が全に駆け寄る。
「おわ、全!大丈夫?」
「結局、詠君は“銀姫”と付き合ってるんですか?」
「いいや?」
「じゃあ、レベッカさんと……」
「なんでそうなる……ってお前もまだ引っ付いてたのか」
レベッカを左腕から引きはがし、ため息をつく。
「付き合ってないのに晩御飯作ってもらって、……お泊りですか?」
「……待て、真白。まず二人で話し合おう」
背後から肩をガシッとつかまれる。
「なんか今聞き捨てならない言葉があったけど?」
「気のせいだろ。いい耳鼻科紹介してやるよ。耳治してもらえ」
全の手を振り無理やり振りほどく。
「付き合ってないなら私もおうちに遊びに行ってもいですか?」
「えっと……まあいいけど。何がお前にそこまでさせるのかわからん……」
「じゃあ私も」
レベッカが便乗する。
「えーオレも!」
「あたしも、あたしも!」
「それじゃあ僕も」
「……お前ら逆方向だろ」
「「「えー」」」
「いや、レベッカも」
「えー?!車貸してあげるから!」
「お前の車左ハンドルだから苦手なんだよ……」
結局何故か全員来る感じになったので、どうやって振り切るかを真剣に考え始める詠だった。
『更紗に続いて他の女の子連れていったら縁卒倒するんじゃない?』
「だから嫌なんだよ」
『まあこの子たちなら一月もすれば忘れてるでしょうけどね』
「否定はしないけど、ひどくねえか?」
次回更新:2章が書き終わり次第




