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二章 三話 八千回の壁





回数が八千回に到達し、時間にして剣を降り始めてから7時間─


長かった─


ただひたすら長かった─

永遠に思えるほどの長さであった。

これほどまでに人間の体感速度は変わってしまうものなのか?

砂漠を水もなく永遠に歩き続けるそんなイメージである。もう、足は疲れ果て、腕は鉛のように重く全身が金属にでもなったかのような感覚。

まるで、廃れて腐った廃墟のようだ。

そして、ここに第二の壁が待ち受けていた。




志願者の一人が倒れたのだ。前触れもなくゆっくりと。

それを横目にしながら振り続ける志願者には相当な精神的ダメージである。あと、一万回までもう少しという気の緩みに付け入る悪鬼。その悪鬼に取り憑かれ約二十人の志願者が次々と剣を落としてしまう。精神と肉体の崩壊。


そうなると、もう剣を再び手にするのは無理だった。両手を地面につきうなだれる。

つまるところの実質的な不合格。

いままでの努力が無に帰したのである。

それでも、他のものは剣を振り続ける。一万回に向けて只ひたすらに。


皆の平均が九千回を上回った時である。

そこで、とうとうサイファーが一万回に到達した!今期十二期生初の到達者。素っ気ない態度を取り。剣を地面に突き刺し何事もないように立つ。

「よし、サイファーよくやった。そのまま待機!」

教官が皆が終わるまで待機と言った。

話を聞いたのか聞いていないのかわからない奴だ。

表情からは全く心が読めない。

そして、九時間。

周りの者にも。合格者がポツポツと現れ始めた。その中にはシャルドネ、フラッタ、そしてラグナシアである俺も名を連ねた。


長きに渡りたどり着いた結果。

「ぐう…やっと終わった!」

俺は達成感に満たされた。嬉しさのあまり手を挙げる。



シャルドネは終わりが告げられると片膝をついて息を荒げた。

「ハアハア…」

白く透き通った肌は紅潮し、Yシャツの第二ボタンが外れていた。大きく柔らかい乳房を包む純白のブラと思われるそれが見える。

Yシャツは汗で透けて肌色が見え。白いパンツにもショーツのラインが見えた。


あられもない姿をシャルドネは気にする余裕もない。



しばらくすると、先行の志願者に続き続々と素振り終えていく者達。精も根も尽き果てた様子である。


志願者の最後はアリサ・クルーエル。彼女も一万回の素振りがやっと終わった。

「やったあああああ」

と、言いながら両手を掲げ彼女は実に充実感に満ちている。




この時、素振りを初めてから九時間半を超えていた─




しばらく、すると─




ゴア教官が言った。

「よし、よくやった貴様ら!」



「誉めてやる、疲れているだろうが!次は、自動回復スキルの習得をするぞ!俺の実演を見て今までの疲れを癒せ!」


そう言うと、教官がドサッと地面に座り胡座をかいた。マントがひらりと宙を舞う。


「まずは、目を閉じ自然と一体になり傷や体を癒やすイメージを描け。そうしたら静かにゆっくりと自分の呼吸の音だけを数えていく。ゆっくりだゆっくりとそれ以外は何も考えるな」


疲れ果てた志願者達がゆっくりと教官の真似をして座っていく。



「そして、この修行が三時間終わったら今日のメニューは終了とする。『閃撃』『自動回復スキル』がお前たちのウィンドウ画面で確認できるようになるだろう。集中して取り組め!三時間終わったら俺が合図する。」





「始め!」



俺達が瞑想を始めるとありえないことか少しずつ体が回復していく。


鉛のように重かった体がほぐれてなんだか幸せな気持ちになる。これがシステムのサポートってやつか。

恐らくウィンドウで確認すればHPやMPが少しずつ回復しているんじゃないだろうか?


これを、会得すれば長期の戦闘で非常に有利だ。ほどなく、体力が回復していき体の疲れが取れていった。


恐らく、これは明日を見越してのスケジュール配分である。

入念に練られたスケジュールに俺は少し感心していた。


「チュンチュン」

鳥のさえずりが聞こえる。まさに、今自然を感じているのだ。風の音、草の香りにいたる全てが新鮮で気持ちよい。




まるで、草原に寝ているかのような気分になる。意識が外界から引き離され、時間が一気に進む。


気がつくと、三時間という時間があっという間に過ぎた。



「終了!」

そのかけ声ととともに瞳をあけるとそこは、もう夕日が沈んで真っ暗だ。壁についている、ランプの灯りだけが光源となっており、訓練を朝から始めたことに今更気付いた。


腰は少し痛くなったが。疲労は殆ど蓄積していない。


「よし、今日は終了だ!ウィンドウを確認し。汗をシャワーで流せ!シャワー室は宿舎横にある建物だ!」


そういうと教官は宿舎の方に消えて行った。






教官が去ってからウィンドウを確認すると『閃撃』『自動回復スキル』があった。小さくガッツポーズをする。



周りのものたちも確認して喜びの雄叫びをあげたり、地面に大の字になるものなどそのリアクションは様々だった。

だが、しばらくすると体の汗臭さが気になりだし。

すぐさま皆シャワー室に向かうのだった。




シャワー室は大きく、入り口が2つあり男女で別れているようだ。左手にWOMEN【女性】、右手にMAN【男性】と描かれた看板が見受けられる。

突っ立っている訳にもいかないので男性の方に入る。中は非常に明るく個室のシャワールームがずらりと並んでいた。人も入ってきて非常に賑やかである。適当にシャワールームを選んで入ってみる。



中には【衣服洗濯】と書かれた壁に備え付けられた小さな引き出しと注意書きのポップが出現している。

そして、前方の壁にはシャワーヘッドとコックがあった。下にはタイルと排水口が見受けられる。まずは、ポップが気になったのでタッチしてみる。こう書かれていた。

【衣服を入れるだけで簡単洗濯♪中に入れて閉めるだけで洗濯できますby訓練所】


「なるほど、便利だな」



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