一章 一話 RDW
俺が、無職になって早1年がすぎる。
外は桜も咲いているのに俺は部屋に閉じこもり寝たりテレビを観たり無駄な時間を過ごしていた。こんな世の中だし就職はもう見込めないだろう。ふと、最近思う。俺はこの世の中に適していなかった存在なのだと。
「まあ、そんなこと考えてもしかたないか」
いつものようにネットサーフィンをするためにパソコンの電源をつける。目新しいものがないかと目を追うと新作のゲームを発見した。
「RED・DETA・WORDか…聞いたことない名前だな? 最新のゲームか?」
クリックしてみた。
すると、画面に0や1の2進数が大量にスクロールし続ける。
COMPLETE─
ブウンと電子音が鳴ったかと思うと。
俺の意識は寸断された。…ハッと我に帰るとそこは、部屋の中ではなかった。
「なんだここ? 街?」
中世ヨーロッパ風の街並み、そして、カツカツと蹄を鳴らし馬車が軽快に走る。そして青空はどこまでも澄み切っていた。
ピコンと電子音が鳴ったかと思うと女性の音声と共に目の前にウィンドウが表示された。
TUTORIAL─
ようこそRED・DETA・WORDへ
そして、ホログラフのような妖精が現れる。
髪は金色で手のひらより少し大きいぐらいの大きさ、次にきりっとした目が特徴的だった。
「ようこそRDWへ」
「おい、ここはどこなんだ?」
「うーんとクリックしたの覚えていませんかね?ここはゲームの世界です!」
「あっ!」
「あなたは、数あるプレイヤーに選ばれたんですよ!光栄なことなんですから胸を張ってください」
「否応無しにじゃないか」
「否定はしませんがこの世界に来たのはあなたの望んだことなんですよ」
「何を言ってるんだ?俺はそんなこと…。」
…いや、俺は確かに望んでいたんだ。無職の世界に嫌気がさして毎日のように別の世界へ行きたいと懇願していた。
「ね?していたでしょ?」
「ああ…否定はしないよ」
「そんな、人達を集めてゲームをさせるそれがRDWなんです。」
「俺は俺を変えられるのかな?」
「それはあなた次第です」
「ちょっと雑談が過ぎましたね。では、本題のゲームの仕様について説明させて頂きます。この世界は現実から移送されたデータを使ってのゲームとなります。ダメージは本当に痛いですし実際にゲームオーバーとなれば現実の肉体の死となります。クリアすることが唯一の帰還手段です。」
「デスゲームか」
現実感はないが俺は、正直ワクワクしていた。死というスリルに身震いしていたのだ。
「まずは、操作方法から。身体は動かせますね?」
「ああ、動かせる」
特に問題はなく動かせるようであった。痛みや違和感などは全くない。現実と同じだ。
「操作方法は現実の身体を動かすことと同じです。次は人差し指でタッチしウィンドウを開いて下さいアイテムや装備などコメント、クエスト、パーティー欄が見える筈です」
言われるがままに何もない場所にタッチしてみる。音が鳴りウィンドウが展開し始めた。
「これは、現実のゲームの仕様と似ているなスキルとかはどうやって習得するんだ?」
「ポイントを割り振ることで習得できます。灰色の文字だったものがアクティブになれば習得可能ということです。尚、ごく稀にポイントに関係なくレアスキルやエクストラスキルなどが習得できています。どちらも非常に強力です。戦局を左右するでしょう」
「総プレイヤー数は?」
「今回で一万以上です。現実では大規模なニュースになっているのでは?」
軽くオカルトである。しかしそのような可笑しい団体に理屈は通用しないはずだ。さほど驚きはしなかった。このデス・ゲームに生きていくのだ全てにおいて驚いていては身が持たない。
「すでに死んだ人数は?」
「推定1000人ですね。まだ増え続けています。あなたもその一人にならないように気をつけて下さい」
「では、そろそろ守護神のチュートリアルといきましょうか」
「ヴァルキュリアです。問題児ですが頑張って下さい」
「は?」
「ご主人様ー!」
そう、声が聞こえたかと思うと今まで居なかった場所にいきなり短剣を持った戦女神が現れ俺に飛びついてきた。
押し付ける胸がとても柔らかく。尻回りにはうっすらとショーツの線が見え艶めかしく頬を染めながら腰に手を回し首筋を舐めてくる。
俺は驚きその姿を伺ってみた。
容姿は身長が160cmほど。羽根飾りのついた兜で金髪碧眼。胸の多きさは巨乳と言える部類でありそうだ。顔つきは非常に可愛い。
「な、なんだこれは?」
「戦女神ですよ神話をご存知ありませんか?」
「し、知っているが!」
思い出した。戦女神は死んだ戦士を戦闘させ。戦いの終焉が告げられると戦女神が戦士達とまぐわるという神話を。
話を思い出した瞬間
戦女神が急に寄りかかってきたので足がもつれ戦女神が覆い被さる形で倒れてしまった。
腹の上にに柔らかく温かい尻の感触が迫ってきた。
「ご主人様美味しそう」戦女神が頬を染め。馬乗りになりながらその双眸で見つめてきた。
「ねぇ、食べてもいい?」
妖精の方向に振り向き聞く戦女神
「ダメです」
そう、言われると柔らかそうなほっぺたを大きく膨らませた。
「いけず!」
「けど、キスぐらいは了解を得なくてもしちゃいますよ。戦女神を舐めないで下さい!…ご主人様んー」そう言うと戦女神は顔を寄せてきた。
「わ、わ」
慌てて、両手を制するために挙げた。
ぐにゅん
と柔らかい双丘に両手が包まれたかと思うと戦女神が
「いやん」
と口ずさんだ。
マシュマロのような戦女神のふくよかな胸を揉んでいたのだ。
「もう、ご主人様ったら積極的なんですから」
身をよじり戦女神が頬を染め恥ずかしがっている。
「あなたは、だから駄目なんですよヴァルキュリア。晩年発情猫さんですか?」
「ひどーい、只のチュートリアルキャラに言われたくないです。ねぇご主人様?」
「いやあ、俺に言われても」
「ちゃんと仕事をしなさい。あなたのせいでRDWの品格が疑われます」
「守護神としてちゃんと奉仕しますし、仕事はきっちりしますよ。ご安心を」
「本当に問題児なんだから」
「あのー、本当にこの守護神が俺の守護神なの?」
「残念ながら」
「チェンジとかは」
「受け付けません」
「強くチェンジを要求する!」
「無理です」
「はあ…」
俺の命をこの守護神に預けるのはとても気が引ける。明日にはRDWをドロップアウトしているかも。というより俺の身体が狙われて危ない。
「良かったですね!ご主人様」
「良くない!」
「頭が痛いですが。まあ、良しとしましょう。ヴァルキュリアは特殊な効果が発動できますし、戦闘にも参加させることが出来ます。簡単なヘルプも使えますので戦闘で有効に活用して下さい。次は、実際の戦闘です。」
やっと、本題がきたか。早速、ヴァルキュリアのぷにぷにした頬に手をあて引き離しにかかった。少し、ヴァルキュリアは抵抗したが。俺が優しく諭すと仕方ないと言う面もちで納得してくれたようだ。ぷぅっと頬を膨らますと、とぼとぼと西洋風のレンガ積みの建物に歩き。壁に沿うように体を丸めて座った。
「では、モンスターを出現させます。」
ゆっくりとそして光が収束し蒼い電撃がほとばしる。
そして風を巻き起こし光の柱が出現したかと思うとそこには茶色い体毛に覆われた狼が出現した。その口からは肉を簡単に引き裂きそうな犬歯が剥き出し、だらしなくダラリと唾液を垂らしている。
その眼は獲物を欲しているようだった。