表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/43

第31話 その言い争いは誰のため?


「神聖な学び舎でなんて破廉恥な!」


 この声は……間違いありません。マリーンお嬢様です。


「声は……こちらの方からですね」


 なんでしょう?


 お嬢様はかなりご立腹されておられるご様子。何か事件があったに違いありません。急ぎ現場へ向かわねば!


「私はただぁ、みんなと仲良くしているだけですぅ」

「それがふしだらだと申し上げておりますの」


 いました!


 お嬢様とエリー様が口論しているみたいです。ですが、エリー様の背後に数人の見目の良い男子生徒が立っておりますが……なんなのでしょう?


「そのような不特定多数との不純異性交遊だなんて汚らわしい」

「いつも特定の男子だしぃ、不純じゃなくて純粋異性交友ですぅ」


 なんだか頭が痛くなってくる会話ですね。


「婚約者でもない殿方と、それも複数同時にお付き合いするのが不純だと申し上げているのですわ。そのようなことが貴族社会で許されるとお思いですの?」

「貴族だとか庶民だとか関係ありません。みんなで仲良くするのが良いに決まってるじゃないですかぁ」


 エリー様の後ろの美男子バックコーラス隊から「そうだ、そうだ。さすエリ、さすエリ」の大合唱。どうやら、あの男子生徒達がマシュー氏の言う攻略対象みたいですね。


 くっ、たった一人のお嬢様相手に大勢で寄ってたかって!


 お嬢様、私がすぐにお助け……


お黙りなさいませ(シャーラップ)!」


 ……するまでもなく、お嬢様が一喝して全員黙らせました。さすオジョ、さすオジョ。


「まったく、これだから庶民出は常識がない」

「そんな言い方しなくても良いじゃないですかぁ。私が元平民だからって!」

「ふんっ、本当に卑賤の者だったんですのね」

「シクシク、クスン、なんでそんな酷いこと言うんですかぁ」


 どうせホントは恐がってなどいないでしょうに。ウソ泣きしてるんじゃありません。しかし、ちょっと変ですね。お嬢様がこんなキツイ物言いをするなんて。


「エリー様、貴族令嬢たるもの品位を失わず、慎み深くなければなりませんわ。それなのに殿方に媚を売って擦り寄るなんてはしたない」


 うーん、どうにも感情的になっているような気がします。


 普段のお嬢様なら、おっとり優しくニコニコ笑顔を崩しません。そして、真綿で首を絞めるようにジワジワ嬲られますのに。あっ、想像しただけで背筋がゾクゾクしてきました。


「媚びを売るなんてそんなんじゃないですぅ。みんな私の大切なお友達なんですからぁ」

「そうだ。俺達の関係は不純なんかじゃないぞ!」

「僕達は頑張るエリーを応援したいだけなんだから」

「この悪女め、我らの聖女への暴言は許さないぞ!」


 これはまずいですね。男達が興奮しています。いつ暴発してもおかしくありません。


「あなた方は引っ込んでなさい。私はそこの阿婆擦(あばず)れに貴族令嬢としての振る舞いを指導しているのです」


 なのにお嬢様は怒らせるような発言ばかり。


「エリーは阿婆擦れなんかじゃない!」

「そうだ、心の清らかな聖女のごとき女性だ」

「だいたい何が指導だ、イジメの間違いだろ!」


 言わんこっちゃない。男どもがキレました。


「エリー様は殿方を籠絡するのがずいぶんお上手なようですわね。そうやってヒューロン殿下まで誘惑されたのかしら」


 これが阿婆擦(あばず)れでなければ誰が阿婆擦れなのかしらって……お嬢様、なんでそんな挑発するんですかぁ!?


「群れなければ何もできない軟弱者のみなさんも邪魔だから消えてくださる」

「キサマ、もう許せん!」

「もう女の子だからって容赦しないからね!」


 男達が完全に逆上しちゃいましたよ!

 いけません。お嬢様の危険が危ない!


 ここは私が――


「そこで何をやっている」

「「「ヴァルト殿下!?」」」


 タイミングを見計らったようにヴァルト殿下がご登場——って、前にもこんなことありませんでしたか?


「令嬢一人に男が多勢で無体を働こうとするとは恥を知れ!」


 さすがヴァルト殿下ですね。一喝で男達を震え上がらせてしまいました。


「で、殿下、これは違うんです」

「そうです、そこの悪女がエリーをイジメていたのです」

「我々はただエリーを守ろうとしていただけなんです」


 途端、ギロッと殿下の鋭い目が、お嬢様を射すくめました。

 あゝ、お可哀想に、お嬢様がすっかり震え上がっております。


「何か申し開きはあるか?」

「ヴァ、ヴァルト様、私はただエリー様に貴族令嬢としての心構えをお教えしていただけですわ」

「嘘ですぅ、マリーン様は私に酷い言葉を浴びせてきたんですぅ」


 聞かれてもいないのに、エリー様が会話に割って入ってきました。


「エリー様、許可なく目上の者の会話に割って入ってはなりません!」

「きゃー、こわーい」


 お嬢様が叱責するとエリー様がわざとらしく悲鳴を上げられました。そして、あろうことか殿下にしなだれかかったではありませんか!?


「見ましたぁ? 今みたいにマリーン様は私をイジメるんですぅ」

「あなた、《《また》》ヴァルト様にも同じように色目を使って!」


 また……ですか。


 どうやら、お嬢様が感情的になっていた理由はそれですか。エリー様はヒューロン王子や攻略対象だけではなく、ヴァルト殿下まで誘惑しておられたのですね。


「二人とも止めないか!」


 まあ、攻略対象と違ってヴァルト殿下はエリー様に惑わされてはおられないようですね。それだけはホッとしました。


 この場はヴァルト殿下が収め、エリー様と攻略対象達は追い払われました。残ったお嬢様と殿下が何やら言い争いをなさっております。


 お嬢様の周囲がきな臭いですね。どうにもマシュー氏から得た乙女ゲームの情報と齟齬(そご)があるようです。


 これはマシュー氏を捕まえなければ。そして、今度こそ洗いざらい情報を吐き出してもらいましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ