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第25話 その転生ヒロインは誰のため?


「えーっ、どうして悪役令嬢がまだ学園にいるのぉ!?」


 この無礼な態度とピンク頭には覚えがあります。そして何より、可愛いのに残念無念なこの薄い胸……思い…出した!


 そうですよ、あの珍獣ピスカ・シーホワイトにくりそつじゃないですか。


 そう思って良く見れば、どことなく顔もピスカ様に似ているような気がします。もしかして親族でしょうか?


「この時期なら前作ヒロインに断罪されてるはずなんじゃないかな?」


 並大抵のことでは動じないマリーンお嬢様さえ戸惑わせるこの無礼な言動。ピスカ様の親戚で間違いないでしょう。


 容姿はそこそこ可愛いくても、お胸が寂しいところがクリソツです。ここ重要。


「あなたはもしやピスカ・シーホワイト様の縁者でしょうか?」


 お嬢様も同じ感想を抱いたみたいですね。お嬢様もあの薄っぺらぺらなお胸を見て思い出されたんですよね。ねっ、ねっ、そうですよね?


「ピスカ・シーホワイト?……って、だーれ?」


 あれれ? 違うんでしょうか。ピンク頭さんが首を捻ってますよ。


「あっ、そっか、デフォルト名かぁ」


 ……と思ったら、急にポンッと手を叩いて一人で勝手に納得していらっしゃいます。


「あはは、あたしプレイネームはきちんと自分で付けるタイプだから忘れてましたぁ」


 テヘッて自分の頭をコツンするなんて、どこまであざといんですか。ちょっとイラッときましたよ。


「じゃあ、やっぱり前作のヒロインはいたんですねぇ」


 また『悪役令嬢』に『ヒロイン』ですか。やはり、この娘はピスカ様にゆかりのある方なんじゃないんですか?


「でもでも、それならどうして悪役令嬢がまだ健在なんですか?」

「ピスカ様もおっしゃっていましたが、悪役令嬢とは私のことなのですか?」

「えっ?……あっ、そうなんだぁ……前作ヒロインも『転生者』だったんですねぇ」


 なんか一人で勝手に納得されておられますが、ホントになんなんでしょう?


「それでピスカ・シーなんたらって人はどこにいるんですか?」

「ピスカ様なら問題を起こして今ごろは修道院で教導されていらっしゃると思いますわ」

「修道院?……って、もしかして、あの『監獄』ですか?」


 ピスカ様の末路を聞いてピンク娘は目をパチクリさせたかと思うと、次の瞬間ケタケタ笑い出されました。


「あははは、逆ザマァされちゃったんだ」


 この娘もなかなかぶっ飛んでいるみたいですね。


「まったく、ゲームと現実の区別をつけてなかったのねぇ」


 ゲーム……ですか。この娘もピスカ・シーホワイトと同じことを言うんですね。


「あなたもピスカ様のようにご自分をいじめろとおっしゃいますの?」


 どうやらお嬢様も私と一緒の感想を抱いたのでしょう。少し警戒していらっしゃいます。


「なにそのマゾ発言?」


 ですが、ピンク頭はまたもやケタケタ笑い出しました。


「私、そんなおバカなこと言いませんよぉ」


 喋り方はそうとうバカっぽいですけどね。


「だいたい私は攻略するつもりないですから。できれば攻略対象から離れて気楽に生きていきたいですし」

「申し訳ありませんが、あなたのおっしゃっていることの意味を半分も理解できないのですが、つまり私に関わるおつもりはないと?」

「もちろん。どっちにしろ、二作目の悪役令嬢はあなたじゃないですし」


 さっきはマリーンお嬢様を悪役令嬢と言っていたのに……まったく意味が分かりません。


「まあ、敵対するつもりがないにならいいですわ」

「敵対だなんてヤダなぁ。私、そんなことしませんって。今回はちょっと前作の状況が気になって声をかけただけなんですよ」


 えへへと笑ってピンク頭は「それじゃあ」と踵を返しましたが、ずいぶん軽い子ですね。無礼ではありますが、ピスカ・シーホワイトとは違って悪意は無さそうです。そのせいか、不愉快な感じがありません。


「ちょっとお待ちなさいな」

「はい?」


 お嬢様も同様に思われたようで、立ち去ろうとしたピンク頭を呼び止められました。


「一応あなたのお名前を伺っておいてもよろしいかしら?」

「あはは、ホントは必要以上に関わるつもりなかったんだけど……自分から声かけちゃったしなぁ」


 仕方ないか、とピンク頭は裾を摘んで膝を折ってカーテシーを披露したのですが……意外です。


 まだぎこちなさはありますが、まずまずの所作じゃないですか。


「お初にお目もじ仕ります。シルフラ男爵の娘、エリーと申します。マリーン・アトランテ様には今後ともお引き立ていただきますようよろしくお願い申し上げます」


 ピンク頭——もとい、エリー・シルフラ男爵令嬢はきちんと型通りの口上を述べ、さっきまでとは違う上品な笑みを浮かべました。


「それでは私はこれにて失礼させていただきます」


 これまたきちんと暇乞いして、エリー様はさっと踵を返す。なんだ、やればできるんじゃないですか。


「嵐みたいなところはピスカ様とそっくりね」


 エリー様の後ろ姿を見送りながらお嬢様が困ったような微妙な笑いを浮かべておられます。まあ、そのお気持ちも分かりますけど。


「はい、突然やってきて意味不明なことを一方的に捲し立てるところはそっくりでした」

「うん、ただピスカ様と違って一筋縄ではいかない方かもしれないわ」


 確かに最後の所作を見るに、ピスカ様よりは隙のない方かもしれません。


「また一波乱起きるかしら」

「……お嬢様、なんだか嬉しそうですね」


 私の非難めいた視線にお嬢様の目が泳ぎまくっております。これはまた何か良からぬことを企んでいますね。


 まったく……どうしてマリーンお嬢様は幾つになっても悪戯ぐせが抜けないんでしょう。


 これはまた学園に潜入しなければならなくなるかもしれません。


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