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第19話 その裏取引は誰のため?


「今回の件は、ヴァルト様の側近達がピスカ・シーホワイトに篭絡されてしまった事に端を発しているの」


 お嬢様は《《城の地下牢》》へと続く階段をゆっくり降りながら、私に事の顛末をお話くださいました。


「それでは、殿下はピスカ・シーホワイトに篭絡されてはおられなかったのですね?」

「ええ、もともとヴァルト様はピスカ様を(うと)んじておられたわ」


 まあ、それはそうですよね。あんな珍獣、まともな神経の持ち主なら誰だってお断りです。


「だけど、いくら避けても何かと接触してこようとしつこかったそうよ」


 走る馬車に追いすがって呪詛を吐くぐらい執念深い女でしたからねぇ。


「しかも、自分を守るはずの側近達が彼女に手を貸す始末で、ヴァルト様もいい加減うんざりしておられたの」

「そんな愚かで不忠な者達を殿下はよく側近になさいましたね」

「殿下も無能を傍には置いておきたくはなかったらしいのだけれど……」


 彼らの実家はそれなりに発言力のある有力貴族だったそうです。それで、殿下も無下にもできず、仕方なしに側近として受け入れられたのだとか。世知辛かぁ。


「殿下はそんな頭痛の種にいつも悩まされていたそうよ」


 私だったら有無を言わさず鉄拳制裁です!

 そんな腐った根性叩き直してやりますよ。


「そんな折、ついに側近の方々がご自分の婚約者に婚約破棄を突きつける事件を起こしたの。ピスカ様を迫害したと難癖をつけてね」

「あの阿婆擦れは他にも同じ事をやっていたんですか!?」


 さすがの殿下も堪忍袋の緒が切れてしまったんですね。無能な側近達に見切りをつけ、彼らをさっさと切り捨ててしまおうと、信頼できる部下と画策し始めたそうです。


 しかし、婚約は家同士の話です。加えて側近はそれぞれ影響力のある家柄の者が多く、殿下と言えどもその程度の過失では罷免できませんでした。


「そんな時に降って湧いた私との婚約話に、ヴァルト様は今回の作戦を思いつかれたらしいわ」

「つまり、婚約破棄事件を引き起こすように、殿下とお嬢様が始めから示し合わせていたのですね?」

「そうよ。私が婚約者であると思わせれば、ヴァルト様を狙っているピスカ様は必ずちょっかいを掛けてくると踏んだってわけ」


 ピスカ・シーホワイトや側近達は騎士達に連れて行かれて各家で謹慎しております。これから王家やアトランテ家より抗議文が送られ、各家で彼らの処遇がくだされるでしょう。


 息子だからと甘い処分にしてしまえば王家より睨まれアトランテ家を敵に回すのが目に見えています。おそらく彼らには各当主から厳しい処分を下されるでしょう。


「お話はだいたい理解できました」


 ですが、どうしても一つだけ解せないことがあります。


「それで、殿下にご助力したお嬢様にいったい何の益があったというのでしょう?」


 この事件は公になっております。


「むしろ、不利益しかないように思われますが?」


 確かにお嬢様の方に大義があります。


 それでもピスカ・シーホワイトを嵌めた事実は残ってしまうではありませんか。自分を騙すかもしれないと考えれば殿方はお嬢様との結婚に躊躇されるでしょう。


 殿下の為に骨を折られたお嬢様に残されたのは、結婚条件が不利になった状況だけです。


 ですが、私の指摘にお嬢様はにぃっと妖しく口の端を上げられました。


「んふふふふ、そこはちゃんと交換条件があるのよ」

「……それは今からお会いになる御仁と関係があるのですか?」


 私の気が重くなりました。なんせ今、向かっているのはレッド・ブラックシーが拘留されている牢屋なのです。


「ええ、大いに関係があるわ」


 嬉しそうに頷くお嬢様の様子に全て合点がいきました。


 つまり、お嬢様が一芝居うったのはレッド・ブラックシーと結ばれたかったからなのですね。


 お嬢様自身の価値が下がればあのクソ野郎と結ばれる可能性が生まれるから。


「お嬢様、いい加減に目を覚ましてください!」

「あら、私はちゃんと起きているわよ?」

「茶化さないでください」

「もう、そんなに怒らないで」

「あの最低男は学園でお嬢様の悪い噂を広めていた張本人ですよ!」


 あんな男に私のお嬢様を奪われるなんて想像しただけで憤死しそうです。


「こればかりは、お嬢様の望みでも私は断固阻止いたします」

「どうしても?」

「たとえお嬢様に命じられてもこればかりは聞けません」

「そんな聞き分けてくれないシーナは嫌いよ。ついて来なくてもいいわ」

「うわーん、置いていかないでぇぇぇ!」


 お嬢様に捨てられたら生きる意味が無くなってしまいます。


 私は必死に足にしがみつきましたが、お嬢様は物ともせず私をズルズル引き摺って進み、まるで意に返していません。


 さすが国一番の武闘派アトランテ家のご息女。

 お嬢様の小さく細いお体のどこにそんな力が?


「お嬢様ぁぁぁ捨てちゃいやぁぁぁ!」

「つーん、シーナなんて知らない」

「嫌っちゃイヤァァァ!」

「だったら口答えはなしよ」


 くっ!

 やはり、私ではお嬢様を止められない。


 おぉのぉれぇ〜レッド・ブラックシー!


 聡明なお嬢様を狂わせる憎っくき女の敵!


 かくなる上は私シーナ・サウスが物理的に拳で排除してくれる!!


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