〜■D9□Dアフタヌーンティー王子様〜
「…灰汁抜き蓮根(←※悪役令嬢の事)と婚約など俺には無理だ…」《紅茶》には利尿作用があると言い(本当に利尿作用はある)催したと馬車から降りー茂みへと入った途端に俺は、藪の中へと駆け出したーーーー。
自慢だが足の速さには自信がある!!幼い頃から《紅茶》の為になんやこれと城を抜け出しては、付き人の執事長モンブラン(←※モンストロ・ブランの事)と逃亡劇を繰り返して来た。
「久々の追いかけっこと言う奴だな!!」
感の良いブランブラン(←※モンストロ・ブラン)の事だ。モタモタしていたらすぐに追いつかれる。と言うか、先回りとかされて捕まる。ので、兎に角ーー逃げるのみだっっ!!
右も左も西も南もわからんがーー兎に角逃げるぞっっ!!
ードルジェリン王国の第二王子ー《デージョ・ヴ・ドルジェリン》王子ーーは、筋金入りの方向音痴であった……。
兎にも角にも藪を漕ぎーー嗚呼。ただひたすらに。
ーー藪を漕ぎ。若い脚力に物を言わせ。
ーー緑の樹海を抜けたその先にーー
「ーーん?この香りは……」
俺は、その芳醇で良く嗅ぎ知った香りに誘われーー。
ーーーーガサガサガサッッッ!!と。
急ぎ藪を漕ぎ出たその先にーーーー!!!!
揺れる緑のその先に突然ーー現れた。其れはーーーー。
……この邸宅の使用人だろうか?作業着を着た少女達(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルとドリル・メイドールの事)が麗らかな春の陽射しの中、優美な花々が囲む華やかな中庭の中央に据えられたお洒落なガーデンテーブルのチェアーを囲みアフタヌーンティーの一時を謳歌していたのだ。
俺は窮屈な白手袋に包まれた自分で言うのもなんだが繊細な指を興奮に奮わせて、彼女らの飲む其れを指差し訊ねた。
「…ソナタら…何故?《紅茶》を知っている?」
俺の問いに二人の使用人風情の作業着を着た少女達(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルとドリル・メイドールの事だよ)は驚いた様に俺を凝視して、軈て、背の高い金髪縦ロールの使用人の方が(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルの事だよ)口を開いて答えたーーーー。
「ー紅茶の神様ーの思し召しですー」ーーと。
「ー紅茶の神様の煮干し飯ー」王子が呆然と呟く。
(※デージョ王子は御耳も天然なので良く人の話を聞き間違えるよ)
「あっ、いえ。煮干し飯では無く。思し召し。です」
……金髪縦ロールの使用人が(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルの事だよ)丁寧に訂正する…………。
……めっちゃ聞き間違えてて、クッソ恥ずい……。
……ので、強引に俺は話を進める。……事にした。
「…そうか…ソナタもー紅茶の神様ーの啓示を受けし紅茶の伝道者…なのだな…」……と。
ーー自分以外で《紅茶》を飲んでる奴がいる!!
ーー紅茶の神様を知ってる奴がいる!!
ーーしかも啓示を受けている……だと!?
ーー俺以外の紅茶の伝道者に初めて会った!!
ーーと言うかだ。俺以外にも紅茶の伝道者いたのか!?
ーーいや……目の前に居るしな!!
(※デージョ王子様は大変混乱しております)
「そっ、そうです!えと、紅茶の伝道者?ですっ!」……と。自分で言うのもなんだが混乱する俺よりも更に混乱した様子で、金髪縦ロールの使用人(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセル)が言う。
「…そうか…ソナタも……」俺は感慨深げに呟く。良かった。俺、自分で言うのもなんだが《紅茶》好き過ぎて自分の頭おかしくなったんかと実は、ちょっとばかし自信が無かったんだ。本当に良かった。紅茶の神様はやはり本当に存在する!!そして俺はやはり紅茶の神様より啓示を受けし者!!紅茶の伝道者だったんだ!!
感慨に浸っていたら紅茶の伝道者の同志(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルの事を言ってるよ)からの「よっ、よろしければ♡共にアフタヌーンティーでもどうでしょうか!?」と。まさかのお誘い。芳醇な《紅茶》の香りが俺を誘う。今の俺は《紅茶逃亡王子》追手のモンブランブラン(←※モンストロ・ブランの事を言ってるよ)から逃亡している身。一刻も早く逃げなければとは思うのだがしかし、駄目だめっちゃ《紅茶》飲みたいッッッ!!!!
しかも生まれてこの方自分の淹れた《紅茶》しか飲んだ事が無い!!そりゃぁそうだ!!《紅茶》と言う概念の無い世界だからなぁ!!だからなおさら他人の淹れた《紅茶》しかも俺と同じ紅茶の神様より啓示を受けし紅茶の伝道者だと言う者の淹れた《紅茶》だと!?めっちゃ飲みたいッッ!!
……ので、此処は「故あって名は明かせぬが御相伴預かっても良かろうか?」丁寧に胸に手を当て一礼して言う。即ち素直に御相伴に預かる事にした。
「はい♡喜んで♪」笑顔で金髪縦ロールの方の使用人(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルの事だよ)が言えばオドオドとしたドリルツインテールの方の使用人(←※ドリル・メイドールの事を言ってるよ)が俊敏な動きで空いていたチェアーを引き「どっ、どうぞ!」とオドオドと俺をエスコートしてくれる。……有難い。
……ので「ー有難うー」と礼を言い。失礼の無いように。
ーー美麗。ーー流麗。ーー王子は黙って美しく。
付き人の執事長兼教育係でもある。モンモンブラン(←※モンストロ・ブランの事だよ)の教えの通り。
俺は、ーー美麗。ーー流麗。ーー王子は黙って美しく。
華麗にチェアーへと座って魅せるーーーー。
……どうだ優美だろう。と、使用人達(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルとドリル・メイドールの事だよ)を見遣れば、二人共に俺に釘付けである。……正直に言うと。そんなに見られると恥ずかしい。根はシャイボーイなんだ。だが、シャイボーイでは、王子なんぞ務まらん。ので、モンモンブランコ(←※モンストロ・ブランの事だよ)の『ー《シャイ》を《シャイニング》へと変えよ!!ー』との教訓を胸に!!はにかむシャイな笑顔を輝かせシャイニングボーイへと俺はなる!!つまる所は魅了の能力ー発光男子ーを発動した。
キラキラと輝く俺に、金髪縦ロールの使用人(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルの事を言ってるよ)が人差し指を口に当てドリルツインテールの使用人(←※ドリル・メイドールの事を言ってるよ)へとウインクで何かを伝えている。軈てオドオドしたドリルツインテールの使用人(←※ドリル・メイドールの事だよ)が小さくコクリと頷き。そして金髪縦ロールの使用人が(←※悪役令嬢ナロージュ・ピクセルの事を言ってるよ)白い陶磁器のティーポットを片手に持ち。オドオドドリルツインテール(←※ドリル・メイドールの事だよ)が持ってきてくれた。同様の白い陶磁器のティーカップへと紅茶を高い位置から注ぐ!!凄い!!あんなに高い位置から注いでいるのに《紅茶》が一滴も溢れていないだとぉ!?と言うか何だその《紅茶》の注ぎ方は!?まるで《紅茶》が踊っている様だ!!
ーーそう。其れは紛れもなく。
ーー紅茶の舞踏ーー
ーー軽やかにティーポットからステージ(ティーカップ)へと優雅に流麗に舞い踊り出るーー
ーー華麗なる紅茶の踊り子達ーー
ーーその最後の一人ゴールデンドロップがーー
ーー黄金に輝きステージ(ティーカップ)へ舞い踊る。
其れは、まさに至極の一杯。漏れ無く最後の一滴まで注がれたその紅茶が俺の目の前へと優雅に踊り出るーーーー。
誘われる様にティーカップに指を添えて、一部の揺らぎもなくティーカップを持ち上げると芳醇な香りが鼻腔に舞う。
「ーとても良い香りだー…頂こう…」
静かに囁き一口その至高の《紅茶》を含めばーーーー。
俺の口は、もはや紅茶の踊り子達の独壇場となったーー。
華麗で優美な彼女達を飲み込めば喉を幸福の調べが伝う。
この瞬間俺は、アフタヌーンティー王子様って奴だった。
「ーうむ。誠に美味であるー」俺は心からの賛辞を述べた。そしてその至高なる《紅茶》を優雅に最後の一滴まで余すことなく一杯飲み俺はは、静かにティーカップをソーサーに置き。
「ー美味であった。礼を言うー」と。囁き音も立てずにガーデンチェアーから立ち上がり。辺りを伺う。名残惜しいがそろそろ行かないとモンテビアンコ(←※モンストロ・ブランの事だよ)に見つかってしまう。「ー世話になったー」そう最後に丁寧に一礼して俺は颯爽と中庭から急ぎ立ち去ったのだった。
ーーアフタヌーンティー王子様から。
ーー紅茶逃亡王子様へと戻るのだ。
……夢の様な一時から覚めて現実へ戻らねばならない。
ーー何故なら今の俺は、紅茶追放王子様だからだ。




