〜■D8□D紅茶逃亡王子様〜
え〜〜。めでたく王都を追放されし《紅茶追放王子様》こと、ードルジェリン王国の第二王子ー《デージョ・ヴ・ドルジェリン》王子ーーでございました。ー罪状は、『腐った葉の煮汁を大事な国民に飲ませるとは何事か!!』罪にございますー晴れて洗練された馬車で向かいますわ。ードルジェリン王国の辺境の田舎町ー没落貴族ーピクセル家の治める。小さな田舎町にございました。追放先にと白羽の矢が立ったのは、ー田舎町の没落貴族ーピクセル家の憐れな天涯孤独の悪役令嬢のもとにございました。
「ーーおい。何をブツブツ言っている?俺の話を聞いているのか?ーモンブランー」
「ーデージョ王子ー私の名前は《モンストロ・ブラン》でございます。ーモンブランーではありません」
ーーガラガラッッッ!と。大きな車輪の回る音が洗練された馬車の中に響く中…私は、向かい合っているにも関わらず馬車の窓に頬杖付き不機嫌に外ばかり見ているードルジェリン王国の第二王子ー《デージョ・ヴ・ドルジェリン》王子が、幼い頃から仕えていると言うのに私の名前をずっとーモンブランーと仰られるのを《モンストロ・ブラン》だと丁寧に訂正致します。かれこれ十数年にも及ぶ私とデージョ王子の恒例の会話にございます。
「ーそうだったかー…ブランブラン…」
「ー惜しいー《モンストロ・ブラン》でございます」
デージョ王子は、人の名前や物の名前を覚えるのが不得手なのでございます。
「まぁ良い。それより灰汁抜き蓮根についてだ!!何故、追放=婚約と言う話になる!?意味がわからんっ!!」
「王子、灰汁抜き蓮根では無く悪役令嬢にございます」
悪役令嬢を灰汁抜き蓮根と王子が謎に言い間違になられていらっしゃるので私は丁寧に訂正そして続ける。
「国王(ドルジェリン二世)は、辺境の地で早くに両親を亡くし没落した家を天涯孤独の身で受け継いだ御令嬢ナロージュ・ピクセル様のお噂を聞き…かねてより大層御心を痛めておいででした…」
「…気持ちは解るが…灰汁抜き蓮根なのだろう?」
「王子、灰汁抜き蓮根では無く悪役令嬢にございます」
悪役令嬢を灰汁抜き蓮根と王子が謎に言い間違になられ続けてらっしゃるので私は丁寧に訂正致しそして続ける。
「ー其れにーピクセル家の治めます辺境の田舎町は、人は少ないが豊かな領土が御座いまして温暖湿潤な気候です。其処ならデージョ王子のお好きな《紅茶》の茶樹も育てられるのではないかとーダージョ王子が申されておりましたよー」
「ーー兄上が?」窓の外を不機嫌に睨みつけていたデージョ王子が、兄君のードルジェリン王国の第一王子ー《ダージョ・ヴ・ドルジェリン》王子の名を出した途端に一度も、見もしなかった私の方を向く。漆黒に艶めく長めの前髪から覗く切れ長の紅茶色の瞳が、とても綺麗だった。小さな顔に小さな唇。切れ長の紅茶色の瞳。其れを縁取る烏の濡羽色の艷やかに長い睫毛。そして色白のビスクドールの様なきめ細やかな肌。同性の私から見てもとても美しい人だと思う。そして齢18と言う若さ故の危うさ脆さが、繊細な性格と共に硝子細工を思わせる。危険な儚い魅力のある人だ。ーー見る者を魅了し護りたい。と思わせる。ーー魔性の美。かく言う私もデージョ王子に魅了された一人だ。だから、今、紅茶追放王子となられたこの御方に付き添い悪役令嬢の元へと向かう馬車に乗っているのだ。
「ー『デージョには、自由に心の儘に生きて欲しい。王都は弟には窮屈だろう…辺境の地で辺境伯となり…あの子の好きな《紅茶》を好きなだけ作ると良い。その地の名産品にでもなれば、没落したピクセル家も悪役令嬢も救え…軈て、父上も《紅茶》をお認めになるだろう…』ーと。仰られておりました」
私がダージョ王子の言葉を伝えると。デージョ王子は烏の濡羽色の長い睫毛を繊細に揺らし切れ長の紅茶色の瞳を伏せて繊細な小さな唇で独り言の様に小さな声で呟きました。
「…兄上の御心遣いは有難いが…やはり婚約は、愛し合う者同士で無いと…成立しないものだと思う…」
「ふふっデージョ王子はロマンチストにございますね」
ーーああ。ーー本当に純真な御人だ。ーーとても美しい。
「…俺は、灰汁抜き蓮根の悪評しか知らぬ…」
俯いてデージョ王子が不安気に声を震わせ言葉を落とす。
「王子、灰汁抜き蓮根では無く悪役令嬢にございます」
悪役令嬢を灰汁抜き蓮根と王子が謎に再三と言い間違になられ続けてらっしゃるので私は丁寧に訂正そして続ける。
「ー悪評はあくまで噂に過ぎませんよー先ずは、実際に会ってみないことにはね」
「…そうか…」王子は小さく呟いた。
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え〜〜。めでたく王都を追放されし《紅茶追放王子様》こと、ードルジェリン王国の第二王子ー《デージョ・ヴ・ドルジェリン》王子ーーでございました。ー罪状は、『腐った葉の煮汁を大事な国民に飲ませるとは何事か!!』罪にございますー晴れて洗練された馬車で向かいますわ。ードルジェリン王国の辺境の田舎町ー没落貴族ーピクセル家の治める。小さな田舎町にございました。追放先にと白羽の矢が立ったのは、ー田舎町の没落貴族ーピクセル家の憐れな天涯孤独の悪役令嬢のもとにございました。ええ、私は最初から解っておりましたよ。
「ーー大変ですっ!!執事長!!王子が、デージョ王子様がっ!!逃亡致しましたッッッ!!」
「ーハハハッッッ!!本当にあの御方は、面白いー」
ーー貴方が『《紅茶》には、利尿作用がある』ーー
ーー『つまり催した』ーーと。仰った時から…………。
……だから。逃さないようにと見張っていたと言うのに。
……貴方はいつも巧みに私の目から逃れすり抜けていく。
……さながら黒猫の様に。……幼い頃からそうでしたね。
……良く御城から抜け出しては《紅茶》《紅茶》と騒いで、私は幼い貴方を追いかけ王都中を探し回った。
……ついた渾名は《紅茶逃亡王子様》本当に懐かしい。
「ーハハハッッッ!!《紅茶追放王子様》になられたと思ったら懐かしの《紅茶逃亡王子様》ですかー」
懐かしさを胸に私は、昔の様に王子の後を追い掛けた。




