〜■D5□D推しとアフタヌーンティーしてた♡〜
あれから私とオドオドメイド《ドリル・メイドール》は、私がー能力ー創造主で創造したー紅茶工房ーに最早、令嬢ともメイドともつかない質素な作業着で入り浸り。ひたすらに紅茶を作ってはアフタヌーンティーに勤しんでいた。
ーーーーモミモミ〜〜♫
ーーーーモミモミ〜〜♫
ーーーー美味しい紅茶になぁ〜れぇ〜♫
ーーーー素敵な紅茶になぁ〜れぇ〜♫
と私とメイドールで作詞作曲した謎の紅茶の歌を歌いながら♫紅茶の茶葉を楽しく揉んでいた。
「ふぅ♡後は茶葉を発酵、乾燥させて出来上がりね♪」
流石に三十分も茶葉を揉んでいると肩が凝ってくるわね。
私がグルグルと肩を回していると。オドオドメイド《ドリルメイドール》が「そっ、それでは!ナロージュ様♡」と期待に深い灰色の瞳を輝かせて私の名前を呼ぶ。
「そうね♡」私には彼女が所望しているモノが解るわ♡
其れは、私も求めているモノですからね♫
私は私とメイドールが求めるモノを言葉にする。
「さあ♡アフタヌーンティーに致しましょうか♫」
♡♡♡ ♡♡♡ ♡♡♡
麗らかな春の陽射しの中、優美な花々が囲む華やかな中庭の中央に据えられたお洒落なガーデンテーブルのチェアーに私こと《ナロージュ・ピクセル》と《ドリル・メイドール》は仲良く並んで座り。すっかり最近の日課となった。アフタヌーンティーの一時を謳歌していた。私は勿論だが《ドリル・メイドール》も最早、紅茶の虜である。
「うむ♡美味である♡」私が、うっとりと囁やけば。
「はい♡とても美味ですっ♡」と《ドリル・メイドール》も私以上にうっとりとした瞳で紅茶を飲む。
…………最早、紅茶の奴隷である。
そんな穏やかな何時もの午後でした。
あの御方が、突然目の前に現れたのはーーーー。
ーーーーガサガサガサッッッ!!
不意に中庭の奥から何かしらが藪を漕ぐ音が致しました。
緑が揺れて、突然ーー現れた。その御方はーーーー。
ーー春の陽射しを一身に受け。
ーー煌めく漆黒のグラボブレイヤーの髪。
ーー長めの前髪から覗く。
ーー美しい紅茶色の瞳。
……私は、この御方を知っている……。
ーーこのドルジェリン王国の第二王子ーー
ーー《デージョ・ヴ・ドルジェリン》ーー
自萌で恐縮だが、彼はこの自作小説での私の推し♡
私の理想を全て詰め込みキャラ設定した私の王子様♡
ーー推しが今、目の前に居るーー
夢見心地で、王子様を見詰めて居たら。
不意に王子が線の細い腕を上げ白手袋に包まれた繊細な指で、私とメイドールの飲む《紅茶》を指差して仰られた。
「…ソナタら…何故?《紅茶》を知っている?」
信じられないと言う様子で高くも低くも聞こえる深みのある春の小川のせせらぎの様な声を響かせて王子は仰った。
……そうか。そうだったわね。自作小説の世界とは言え。転生の影響か物語が思い出せずにいたけれど。今、大まかな物語を思い出した。確か。元々は王子が紅茶と言う概念の無い世界で紅茶を作り自国の民に飲ませ其れがバレて頭の固い国王(ドルジェリン二世)に『腐った葉の煮汁を大事な国民に飲ませるとは何事か!!』と王都を追放され辺境の没落貴族(悪役令嬢∶私)の元へ左遷(政略結婚)させられる事になり。両親を早くに亡くし没落して身も心も荒んだ悪役令嬢(私)の身と心を紅茶で癒していく異世界ロマンスな話だったわね。その身も心も癒す過程で、ちょっとセンシティブに書き過ぎてアカウント停止されて、この自作小説の悪役令嬢に転生したワケなんだけど。えっと。これ、どーしよ!?
王子より先に私…紅茶飲んじゃってる…。
どう辻褄を合わせればよいのかしら!?
全くもってサッパリ解らないわ!!
そもそも王子との出会いってこんな突然だったかしら!?
私が、悪役令嬢を演じるのを辞めてメイドールと仲良くして、何かもう。たぶん。色々と物語の筋書きが変わってきてるのよね。きっと。たぶん。私は、自分で言うのもなんだが、あまり良くない頭をグルグルと回転させて考える。
その結果「ー紅茶の神様ーの思し召しですー」ーーと。
自分でも本当に謎な言葉が口をついて出た……。
……ー紅茶の神様ーって、何ぞや?ー…
……全くもって、謎である……。
「ー紅茶の神様の煮干し飯ー」王子が呆然と呟く。
「あっ、いえ。煮干し飯では無く。思し召し。です」
……そう言えば、王子。ちょっとクール天然にキャラ設定したんだったな。クールで少しドジで、詰めが甘いそんなキャラ設定だったわね。流行ってたのよね。クールで天然でドジな男の子キャラ。
「…そうか…ソナタもー紅茶の神様ーの啓示を受けし紅茶の伝道者…なのだな…」
おっと!?紅茶追放王子が不思議な事を言い出したぞ!?
……私は、取り敢えず話を合わせる事にしました。
「そっ、そうです!えと、紅茶の伝道者?ですっ!」
私が、そう答えると。此処からは、余談ですが、私はー能力《|創造主》《つくりぬし》ーの他に、新たに能力を会得しました。
ー能力ーー書き進める者ー
どうやら。『ー紅茶の神様の思し召しでございますー』と。咄嗟に王子に向かい発した言葉が、トリガーになり。私は、無意識にもこの自作小説の世界を新たに書き進めたみたいだった。この紅茶と言う概念の無い世界にー紅茶の神様ーと言う。謎の神様を創り出してしまったのだ!!
……王子の言う。ー紅茶の伝道者ーについては、正直ちょっと解らないけども。私の創り出したー紅茶の神様ーの影響である事は確か。きっと。キャラが勝手に動くとか物語が勝手に進むとかそういう奴ね。きっと。たぶん。
「…そうか…ソナタも……」
感慨深げに呟く。紅茶追放王子に「よっ、よろしければ♡共にアフタヌーンティーでもどうでしょうか!?」と。お誘いしてみる。お恥ずかしながら。彼(紅茶追放王子)は大変自萌で恐縮な話ではありますが、再度端的に言うと。私のこの自作小説の中の推し♡なのである。
そして、私には幼い頃からの夢があるーーーー。
小説家になる夢とは、また別の夢である。
その夢とはズバリ!推しとアフタヌーンティーをする事♡
今、その夢が、叶うかも知れないーーーー!!
「故あり名は明かせぬが御相伴預かっても良かろうか?」
紅茶追放王子が、丁寧に胸に手を当て一礼して言う。
「はい♡喜んで♪」
私が笑顔で応えれば《ドリル・メイドール》が俊敏な動きで空いていたチェアーを引き「どっ、どうぞ!」と紅茶追放王子をエスコートする。
「ー有難うー」
紅茶追放王子はオドオドメイドちゃんに礼を言い。流麗な仕草でチェアーへと優雅に座る。流石、王子様♡チェアーに座るだけで最早、絵画を切り取ったかの様な優美さ♡
事情は解らないが王子が名を明かさぬのであれば、私達が名乗るのも野暮と言うもの。此処は、名乗らず黙ってアフタヌーンティーに致しましょう。人差し指を口に当て《ドリル・メイドール》へウインクで伝える。察しの良いオドオドメイドちゃんは小さくコクリと頷いた。
そして私、自ら。白い陶磁器のティーポットを片手に持ち。オドオドメイド《ドリル・メイドール》が、持ってきてくれた。同様の白い陶磁器のティーカップへと紅茶を高い位置から注ぐ。
さながら琥珀の宝石が、溶け出たかの様な煌めき。
その石言葉の如く悠久の時を抱擁して来た大地の母の愛。
白い陶磁器の方舟へと注がれるアンバーのナイアガラ。
その最後の一滴。黄金に輝く。ゴールデンドロップ。
其れは、優雅な紅茶追放王子にこそ相応しい至極の一杯。
漏れ無く最後の一滴まで注がれたその紅茶を。
王子の繊細な指がティーカップに添えられて、一部の揺らぎもなくティーカップを持ち上げる。
鼻梁の通った鼻をティーカップへと近づけ。
その芳醇な香りを愉しむーーーー。
「ーとても良い香りだー…頂こう…」
静かに囁くたおやかな声は、春の小川のせせらぎの様。
そして王子は、そのビスクドールの様な形の良い薄く小さな唇をさながらキスをするかの如く白磁器のティーカップへと口付ける。薄く伏せられた切れ長の目を縁取る漆黒の長い睫毛からは、紅茶と同じ色の瞳がキラキラと煌めいている。
えっ!?なにこれ!?一生見てられる♡
てか、何!?ティーカップこんなろぉ!!
ティーカップが羨ましすぎるんですけどっ!!
王子にキスされてんじゃん!!羨ましいっ!!
何で私ティーカップに転生しなかったんだろ!?
最早ティーカップって言うか。紅茶になりたいわっ!!
紅茶に転生して紅茶追放王子に飲まれたいわっ!!
そんな邪なキモヲタ此処に極まりし事を思っていたら。
紅茶追放王子が流麗な所作でティーカップを置き。
「ーうむ。誠に美味であるー」と囁いた。
キラキラと春の陽射しを浴びて煌めく紅茶追放王子。
暖かな春風に乗って紅茶の香りが中庭に優しく広がる。
何ここ?天国?ーー天国って本当にあったのね♡
あっ、そっか。此処はー紅茶天国ーだったわね♡
私は、可愛らしいオドオドメイド《ドリル・メイドール》と微笑み合い。目の前で優雅に紅茶を啜るビスクドールの様な紅茶追放王子をうっとりと見詰めて、紅茶を飲むーー。
ーー何て、素敵なアフタヌーンティーなのだろう。
現世でアカウントを停止され。この世からも追放され。
あろうことか自作小説の世界の悪役令嬢に転生し。
そして、今。ーー推しとアフタヌーンティーしてる。
此れは、まさにサブタイトルコール。〜アカウント停止されたと思ったら推しとアフタヌーンティーしてた〜だわ♡
推しがいればどんな世界だって、生きてゆける。
私は、この幸せを噛み締めて♡
この世界で生きてゆくのだった。
〜推しとアフタヌーンティーをしながら〜
婚約破棄悪役令嬢と紅茶追放王子の異世界ロマンス
〜アカウント停止されたと思ったら推しとアフタヌーンティーしてた〜ー♡これにてお開き♡ー
ーーーーなんて冗談です(笑)
まだ続きます。一先ず『悪役令嬢転生編』が終焉。
次回からー『異世界紅茶ロマンス編』ー開幕です。




