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6.緑の瞳 sideフォーリア

「ユー、フェリ…ア…?」


「えっ?」


ロゼライト公爵夫人とお会いする日。

私を見て公爵夫人が呟いたのは、私の知らない名前でした。


ユーフェリア様とはどなたなのでしょう?


「…いいえ、フェリアとは髪の色も瞳の色も違う…でも、フェリアにとても似てるわ。…もしかして、あの子の娘?」


公爵夫人は何やら考え込んでいるご様子です。

そのご様子に私がどうしようか迷っていると


「…ねぇ、貴女のお母様の名前は?ユーフェリアという名に心当たりは無いかしら?」


公爵夫人はガシッと私の両手を握り締め問いかけてこられました。


しかし私はその問いの答えを持ち合わせていません。

何も答えられずにオロオロしていると


「母上、フォーリア嬢は記憶を失っているのですよ。残念ながら、母君のことも分かりません」


シオン様が間に入ってくださいました。


「あ、あら。そうね、そうだったわ。ごめんなさい。貴女が十数年前に行方知れずになった私の妹に、とてもよく似ているものだから…」


公爵夫人は申し訳なさそうにそう言うと、私の手を離します。


「…ユーフェリア・エバーグリーン伯爵令嬢の事件は私も聞いて知っている。…まだ見つかっていないのか…」


「はい、殿下。妹はある日突然行方がわからなくなりました。妹が自ら姿を消す理由に心当たりは無く…もしかすると、あの子の能力(ちから)を狙った誰かの仕業かもしれない、と…」


能力(ちから)?」


「…妹は“緑の瞳”を持っていました」


「緑の瞳…ユーフェリア嬢は精霊の愛し子だったのか」


「妹は伯爵領の森を離れたがらなかったため、社交界に出ることは無く…妹が愛し子であることを知っているのは極僅かの者のみでした。私たちも、妹の身を守るため敢えて公にはしませんでした。ですが…」


「ユーフェリア嬢は突然いなくなった…」


「妹がいなくなったことに気付いてすぐ家の者総出で探したのですが見つからず…あれからずっと妹を探しております」


「ずっと探して…ん?ではお前が騎士になったのは…」


「はい。私も叔母を探しておりました。今まで黙っていて申し訳ありません、殿下」


「いや、個人の事情に文句を言うつもりは無い。…相談してくれたら良かったのに、とは思うが」


「…そうですね。貴方のお手を煩わせてしまう、と遠慮してしまいました」


「もう良い。…それでフォリがユーフェリア嬢に似ているということだが…」


「私は叔母上の顔を知りませんが…母上、フォーリア嬢はそんなに叔母上に似ているのですか?」


「ええ。フォーリアちゃんの髪と瞳の色を緑にしたら、フェリアそのものよ?」


「そこまで似ているとなると、ユーフェリア嬢はフォリの母君かもしれないな。…すると、フォリが記憶を失う前にいた場所にユーフェリア嬢もいるのだろうか?」


御三方がこちらを見ます…が私は答えられません。

申し訳なく思い俯くと


「ああ、済まない。君を責めている訳では無いんだ。…記憶を失った君と、行方が知れない令嬢が、繋がりがありそうだと驚いたんだ」


「そうですね。叔母の行方については長い間手掛り一つ掴めませんでした。…今、我々が貴女に出会えたことは縁があるとも感じています」


「そうよ、フォーリアちゃん。貴女に会って私は妹との再会に希望が持てたわ。…こんなに酷い怪我をして、記憶まで失くして、貴女も大変な思いをしたのでしょう?…息子が言ったように今、私たちがフェリアにそっくりな貴女と出会えたのはきっとご縁があったのよ。貴女はもう独りじゃないわ、私たちが力になる。シオン、フォーリアちゃんを助けてあげてね」


「はい、母上」


「無論、私もな」


御三方はそう言い、公爵夫人は今度はそっと私の両手を取りました。


私の瞳からは涙が溢れます。


“もう独りじゃない”


なんて心強いことでしょう。


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