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5.リスタート sideフォーリア

「フォーリア様、お茶が入りました」


「ありがとう、ミリー」


此処はアズライト国、グラファイトにある騎士団の砦です。


グラファイトはアズライト国東端の辺境の街で、街は“魔の森”と呼ばれる森に接し、東方警備隊の騎士の皆さんが駐留しています。


私は魔の森で怪我をして倒れていたところを、東方警備隊隊長のセイン様と副長のシオン様に助けていただきました。


今は軍医のジーン先生の治療を受けながら過ごしています。


怪我は快方に向かっているのですが…どうやら私は記憶を失ってしまったようです。


目覚めた時には、名前も年齢も住む場所も…何も覚えていませんでした。


自分を示すものを何も持たず、自分の存在さえ不安定に感じていた時…セイン様に“フォーリア”という名前をいただきました。


たかが名前一つ…と思われるかもしれませんが、セイン様がくださった名前が私の心と存在を安定させてくれたのです。


その時私はフォーリアとして生きることを選びました。

今は警備隊でお世話になっていますが、いずれ一人立ちしたいと思っています。


そのためにも、しっかり怪我を治さないといけませんね。




「フォリ」


「フォーリア嬢」


…そんな事を考えながら中庭の四阿でお茶をしていたら、セイン様とシオン様に声を掛けられました。


「セイン様、シオン様、こんにちは」


「その後、調子はどうだ?」


「痛みも治まってきて、少しの時間ですがこうして出歩けるようになりました」


「そうか、それは良かった。…少し話をしても?」


「ええ。ミリー、お二人にもお茶を」


「はい」


ミリーが手際よくお二人にお茶をお出しします。


「治療が長引いて、辛くはないか?」


カチャリ


お茶を一口飲み、カップを置いたセイン様が話を切り出します。


「…辛くないと言えば嘘になります」


目覚めたばかりの時は、声も出ず…身体中が痛み、動くことも出来ませんでした。


「でもジーン先生は丁寧に治療してくださっていますし、こうしてセイン様とシオン様も気に掛けてくださいます。そしてミリーとダイン君は私を支えてくれます」


私はそう言ってミリーを見ると、彼女は微笑みを返してくれました。


「魔術が無い治療は治りが遅く、痛みも長引く。そんな中、ここまで回復してきたのは君の頑張りもあるからだろう。…それで、その魔術のことなのだが…君に会ってほしい人がいる」


「会ってほしい人…ですか?」


首を傾げる私に今度はシオン様が答えます。


「会ってほしい人というのは、私の母なのです。母の出身はエバーグリーン伯爵家といって、治癒と浄化に長けた家系です。…貴女に魔術が効かないことについて、何か分かるかもしれません」


「それに君の首元のチョーカー…何か魔術が掛かっているかもしれない。調べさせてほしい」


「…今の私には魔術の有る無しの違いが分かりません。ですが皆様は私の恩人です。否やはありません」


「ありがとう。早速先方へ打診しよう。シオン、公爵夫人への連絡を頼めるか?」


「お任せください」


…えっ?公爵夫人?

シオン様は公爵令息なのですか!?


「あっ、あの…」


「ん?何だ?」


「シオン様は公爵家のお方なのですか…?」


「ああ、言っていなかったか?シオンはロゼライト公爵家の嫡男だ」


「でっ、ではセイン様は…」


「セイン様はこの国の第二王子殿下ですよ」


「………はうっ」


「フォリ!?」


「フォーリア嬢!?」


「フォーリア様!?」


お二人の身分に驚いた私はその場で卒倒してしまったのでした。


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