30.潜入、婚約発表パーティー sideスヴェン
この国の第二王子と愛し子の婚約の噂を聞いてから間もなく、私たちは王都へと移動した。
愛し子などそう何人も現れる訳がない。
噂の愛し子とはエミリアで間違いないだろう。
ドロシアとレイヴンがエミリアを魔の森に捨てたばかりに、エミリアはアズライト国に囚われてしまった。
王太子の婚約者を奪うとは、何という不届き者なのか…
待っていろ、エミリア。
直ぐに私が助け出してやる。
***
王都で探りを入れて暫く…
婚約発表の情報を得ることが出来た。
何でも、大々的にパーティーをするらしい。
…パーティーなら、招待客に紛れて潜入することが出来るのでは?
レイヴンに潜入のことを伝えてみると、少しお待ちください、と返事がきた。
…三日後。
レイヴンは一通の招待状と衣装一揃えを持って戻って来た。
「…何だこれは?」
「ベネット伯爵家に届いた招待状です。貴方は当日、ベネット伯爵としてパーティーに参加なさってください」
「は?なぜ伯爵なんぞに身をやつさねばならないのだ!?」
「貴方はきっとエミリア様に警戒されてますよ?エミリア様の相手の王子がエミリア様の事情を知っていれば、そちらにも。貴方が王子の姿で行けば、直ぐつまみ出されてしまいますよ?」
「…うっ。し、しかし伯爵とは…」
「ベネット伯爵家は社交界から離れて久しく、その当主の姿を知る者は少ないようです。相手が王子の顔を知らない限りは早々見破られることはないでしょう」
「…わかった。だが、衣装が地味だな…」
「貴方の王子の出で立ちでは、伯爵には不釣り合いですよ…」
レイヴンは半ば呆れた顔でそう言った。
***
パーティー当日。
貴族たちは位の低い者たちから入場していく。
私が到着した頃には、男爵位から伯爵位の者たちがほぼ揃っていた。
周囲の話に耳を傾けてみると、領地経営だの下位貴族同士の婚姻だのと内輪の話ばかり。
(仮の姿の)伯爵程度では、私に見合う話が出てこない。
一度の過ちでその地位を失ってしまったが、私は王太子だったのだ。
そして今、エミリアを私の婚約者として取り戻し、王太子の座へと返り咲く!
王太子としてローアン国の顔となり、国の政策を動かしてこその私なのだから!
…そうこう考えている内に、上位貴族たちも入場してきた。侯爵、公爵、と続き、いよいよ王族が入場してくる。
国王夫妻、王太子夫妻と入場し、その後に続いてきた一組の男女。
黒髪の王子にエスコートされた金の髪の令嬢…
瞳の色こそ違えど、彼女は私が探し続けていた婚約者、その人だった。
「…ようやく見つけたぞ、エミリア」
愛し子とローアン国の玉座は私のものだ。




