28.悲しみの中で sideフォーリア
お義母様は寝込んでしまわれました。
「ディリィ…」
「母上…」
お義父様とお義兄様がお義母様の傍に付いておられます。
キィ…
私は部屋の扉をそっと開き、中へ入りました。
「「フォーリア…」」
「お義母様のご様子は…?」
「衝撃が大きすぎたのだろう。十数年探し続けて、最悪の結果だ。…無理もない」
「も、申し訳ありません…わた、私を産んだせい、で、ユーフェリア様、は…っ」
謝って済むことではないのは分かっています。ですが、言わずにはいられませんでした。
私の瞳からは涙が止め処無く溢れてきます。
「フォーリアのせいでは決して無い!厳しい状況の中でもユーフェリアはお前を育み、誕生を心待ちにしていたはずだ。そして、精霊王殿も娘の存在を喜んだはずだ」
「そうだ。それに君がいたから、叔母上の行方を掴めた。感謝こそすれ、君を責める理由は無い」
「お義父様…お義兄様…」
「…だから、思い詰めて君まで倒れたりしないでくれ。そんな事になったら、母上と精霊王様だけでなく…きっと叔母上も悲しむ。さぁ、涙を拭いて」
そう言ってお義兄様はハンカチで優しく涙を拭ってくださいました。
*
「夫人の様子はどうだ?」
王宮の殿下の私室。お義兄様は泣き続ける私を部屋に送り、ミリーに託した後此方へやって来たようです。
「…気落ちして少々弱っています。気を持ち直してくれたら…きっと…」
「そうか…」
「…それ以上にフォーリアが自分を責めていて…叔母上が亡くなったのは自分を産んだせいだ、と…」
「そんな訳、無いだろうに…」
「殿下、どうかフォーリアの傍に付いていてあげてください。…私たちの前だとあの子は自分を責め続けてしまう…」
「…そうだな。フォリの様子を見てこよう」
*
「フォーリア様、お茶が入りました。お茶を飲んで少し落ち着きましょう…?」
「…ええ。…ありがとう、ミリー」
未だに泣き止まない私にミリーが温かいお茶を淹れてくれました。
ほわり
ハーブティーの優しい香りが私の心を少し落ち着けてくれます。
「美味しい…」
私がお茶を飲んでほっと一息ついた時、ノックの音が響きました。
「フォリ、私だ。…少し話さないか?」
セイン様です。
今の私は泣き腫らした顔をしていて、人と会うのは気が引けるのですが…追い返すのも申し訳なく…
「…どうぞ」
私は躊躇いながらも、セイン様を部屋へお招きしました。
「シオンから君がユーフェリア嬢の事で自分を責めている、と聞いてな」
「だって、ユーフェリア様は私を産んで直ぐ…私を産まなければ…ユーフェリア様はきっと、まだ、ご存命だったのでしょう?」
「ユーフェリア嬢が命を落としたのは君のせいでは無い!ユーフェリア嬢がエバーグリーン家で出産出来ていたら、きっと母子共に無事だったはずたから!…責めるべきは、ユーフェリア嬢を拐っただろうバドム侯爵だ!」
「でも…」
「…ユーフェリア嬢は悲しい結末を迎えてしまったが…今、君が此処にいるのはきっと、ユーフェリア嬢が…君の母君が全力で君を守ったからだ。だから…そんなに自分を責めないでくれ…」
「セイン様…」
「それに…ユーフェリア嬢が君を守ってくれたから、私たちは出会えた。感謝してもし足りない。…私は君の居ない人生はもう、考えられないから」
セイン様はそう言って、私の両手をそっと握りました。
「………っっっ!?」
セイン様の突然の告白とその仕草に、私はたちまち真っ赤になり、口をはくはくと動かすだけ。
この方はどうしてこんなにも簡単に私の心を軽くしてくださるのでしょう?
私の中には悲しみばかりではなく、ユーフェリア様への感謝と前を向く気持ちが湧き出てきます。
ユーフェリア様…お会いすること叶わなかった母上…
私を産んでくださってありがとうございます。
私はセイン様に出会えて良かったです。




