26.東方警備(おしごと) sideセイン
精霊王殿との対談から少し後。
私とシオンは第二・第三部隊と共に魔の森にいる。
第二部隊は崖の再調査、第三部隊は私たちと共に討伐だ。
今回の討伐対象は殺人蟻や花蟲などの所謂害虫駆除。
虫とはいえ魔物なだけあって、幼子ほどの大きさがあるが…私たちは危なげなく倒していく。
駆除し、素材を切り出し、また進む。
その道中、ふと、誰かの野営の跡を見つけた。
森の中の野営の跡など、珍しいものではない。
だが、何か…引っかかる。
「殿下?」
考え込む私にシオンが声をかける。
私の視線を辿ったシオンは
「野営の跡ですか?…特に珍しいものでは…「!!崖だ!」」
そう呟きかけ、私の声に遮られた。
「殿下?崖、が何か…?」
「シオン、この場所はフォリが倒れていた崖の近くだ」
「!!…ということは、まさか…」
「…ああ、おそらく誰かがフォリを探している」
一体誰だ?
いや、崖の近くを探しているということは…フォリを崖から落とした犯人か。
その後も討伐を続け、さらに何か所か野営跡を見つけた。跡を辿ると森の出口へと向かっていた。
その先は我が国の辺境都市。
「まさか、国に入り込んでいるのか…?」
私の胸に不安が過ぎる。
*
砦に戻り、第二部隊の報告を聞く。
「崖の上に新たな轍と靴の跡を見つけました。靴跡は今回も二人分あり、一方は前回とほぼ同じ靴の跡です」
「大きさからして、どちらも男性用の靴跡です。靴跡は森の方へと続いていました」
真っ直ぐ崖に向かって来たということは、やはり犯人に違いない。あの場所はフォリと私たち以外、犯人しか知り得ないのだから。
しかし足跡は二人分。…もう一人は、誰だ?
スヴェン王子…?バドム侯爵…?エミリア嬢を連れ戻しに来たのか?…だとしたら、なぜ今?
もしかして…今になってエミリア嬢が愛し子だったと知って、惜しくなったのか?
今更…虫が良いにも程がある。
フォリをローアン国には関わらせたくない。
「愛し子を狙う曲者が国に入り込んだ可能性がある。第四部隊に辺境都市を探らせてくれ」
私は秘書官に指示を出し、執務室を後にする。
婚約披露パーティーの日も迫っている。…警戒を強めなければ。
「母上への報告は、嫌なものになりそうだな…」
私はため息と共にそう呟いた。




