23.精霊王との対談 sideセイン
父から書簡が届いた。
「………!!」
「殿下?どうされました?」
書簡を読んで驚きを露わにした私にシオンが問いかける。
「シオン、フォリの両親が判明したぞ。フォリはやはり、ユーフェリア嬢の娘だった」
「フォーリアが叔母上の…」
「ああ、お前とは従兄妹だな。フォリの父君が証言なさったそうだ」
「“なさった”?殿下がそのように仰るということは、フォーリアの父君は他国の王族なのですか?」
「いや、まあ、王族ではあるだろうな」
「どういうことです?」
「…フォリの父君は精霊王殿らしい」
「!?」
「それで今度父上が精霊王殿とお会いするから、その時に同席しないか?とのことだ」
「私もですか?…よろしいので?」
「ああ、両親と兄夫妻、そしてロゼライト家の面々も揃う」
「そうですか。それでしたら、私も同席させていただきます」
こうして私たちも精霊王殿と会うことになった。
***
流石に精霊王殿に謁見を、という訳にもいかない。
対面の場は王宮の応接間が選ばれた。
私とシオンが到着した時には父王、母后、兄太子夫妻が揃っていた。もう間もなくロゼライト親娘と精霊王殿がやって来るだろう。
「お客様がお越しになりました」
ノックの後に侍従の声がすると、応接間の扉が静かに開く。
ロゼライト親娘と共に部屋に入って来た見知らぬ美丈夫は、フォリと同じ金髪緑瞳をしていた。
「陛下、お先に発言失礼いたします。こちらが精霊王、リュシアン・エルレイム殿に御座います」
ロゼライト公爵が陛下に美丈夫を紹介する。
…なるほど、この御仁が精霊王殿か。
「お初にお目にかかる、精霊王殿。私はこのアズライト国の王、アラン・アズライトと申す。そして妃のジュリア、王太子のレオン、王太子妃のセレスティア、第二王子のセインです」
陛下の紹介に合わせ私たちは精霊王殿に会釈をする。
「こちらが我が嫡男、シオン・ロゼライトで御座います」
最後に公爵がシオンを紹介する。それに合わせてシオンが礼をとる。
「丁寧な紹介、痛み入る。…先ずはセイン殿、シオン殿、娘の恩人に感謝を」
フォリが私たちと出会った経緯を聞いていたのだろうか?
精霊王殿はそう言って私とシオンに頭を下げた。その姿に私たちは思わず焦る。
「頭をお上げください、精霊王殿。…フォーリア嬢が無事で何よりです」
「貴方様とフォーリア嬢が出会えて、ようございました」
*
お互いの紹介と挨拶が済んだ後、私たちはソファーに腰を下ろした。シオンは私の傍に控えている。
ローテーブルには王宮の女官たちによって、お茶が用意された。
「さて、此度についての経緯だが…」
陛下が話の口火を切ると
「それは私から」
公爵夫人が話を引き継いだ。
話の内容は
フォリの魔力を辿って精霊王殿が公爵邸に来たこと
夫人と精霊王殿の探し人が同一人物であったこと
王太子がエミリア嬢を知っていたことから、ユーフェリア嬢がローアン国のバドム侯爵家に居るのではと推測したこと
ユーフェリア嬢はバドム侯爵に拐われた可能性があること
そして
フォリが精霊王殿の娘だということ
…どれも今までの事態を進展させるものだった。
「…して、これからどうする?」
夫人の話を聞き終えた陛下の問いに、今度は公爵が答える。
「公爵家の手の者を、ローアン国王城とバドム侯爵家に送り込みます。彼の国の情報を探ります」
「では精霊はバドム領の魔力の探知をしてみよう。フェリィの居所が判るかもしれぬ」
精霊王殿はバドム領に行かれるようだ。
しかし、公爵夫妻と精霊王殿がユーフェリア嬢の捜索に本格的に乗り出すならば、公爵邸の守りが手薄になるのではないか?フォリを崖から落とした者が誰かもまだ判っていないのに。
そう考えた私は居ても立ってもいられず声を上げる。
「陛下、公爵、精霊王殿!貴方がたがユーフェリア嬢の捜索に本格的に乗り出すならば、公爵邸の守りが手薄になる可能性が高い。フォリに怪我をさせた者もまだ判らない。だから…貴方がたの捜索の間、フォリをグラファイト砦に預けていただけませんか?」
「お待ちなさい。貴方の言いたいことはわかるけれど、それならば危険な辺境の砦ではなく王宮でも良いのではなくて?」
「母上っ!…いえ王后陛下っ。砦には騎士が常駐し、フォリが見知った者も居り…」
「王宮にも騎士が常駐し、フォーリア嬢には私やセレスが付いているわ。もちろんコーディリアもね。だから貴方は心配せず東方警備を頑張りなさい。王宮でフォーリア嬢と一緒に情報を待っているわ」
母后は、それは美しい笑顔で仰った。
「…殿下、無理です。我らでは勝てません」
シオンが諦めの面持ちで言った。
*
今後の方針も決まり、そろそろお開きにしようかという時、フォリが陛下に向き直る。
「陛下、お願いがございます」
「うん?何だ?申してみよ」
「二人の父の許可はいただきました。今後、私が“フォーリア・エルレイム・ロゼライト”と名乗るお許しをください」
そう言ったフォリは頭を垂れ、陛下の言葉を待つ。
「エルレイム…それは精霊王殿の?」
「はい。精霊王様との繋がりが欲しいといただいた名で御座います」
「ご本人が許しておるのなら、私は構わんよ。それにその名は、たった独りでこの国に迷い込んできたそなたが得た家族の証。大事にするといい」
「…ありがとう、ございます」
…そうだ、フォリ。
君はもう、独りじゃない。




