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2.Boy Meets Girl side東方警備隊隊長

我がアズライト国は国土の東部、ローアン国との国境沿いに“魔の森”と呼ばれる森を有している。


魔の森には魔獣や魔物が出るため、我ら東方警備隊が魔の森の西側に位置する要塞都市グラファイトに駐留し警戒している。


その日も魔の森に魔獣が出たとの報告を受け、隊長である私と副長のシオン、第一・第二部隊を引き連れ討伐に向かった。


討伐対象は灰色熊(グリズリー)が二体。


大型魔術を使えば余裕を持って倒せる相手だが、周囲の環境や素材を傷めないようにとなると手こずる相手だ。


魔術で足止め・撹乱をし、じわじわと体力と生命力を奪っていく。


なかなか骨の折れる戦い方だが、環境破壊は本意ではないし素材は大事な資金源。なにより部下たちの命を散らしたくない。


……ズズゥン


小一時間の攻防の末、ようやく灰色熊(グリズリー)二体を討伐した。


「今回の灰色熊(グリズリー)は手強かったですね」


「ああ。どうやら番だったようだな。…子供がいるかもしれない。引き続き警戒を怠るな」


「はい」


部下たちが素材の切り出しをしている中、私とシオンはそのような会話をしていた。


「…?」


そんな時、私の視界の端で何かがキラリと光る。


「殿下?」


「今、何かが光ったような…?」


…新たな魔物や魔獣だとしたら危険だ。


「シオン、ついて来い」


私はシオンを連れ急ぎ確認に向かった。




樹木に囲まれるようにせり出した崖の中腹辺り。

そこで何かが夕陽を反射しキラキラと光っている。


風になびく金色のそれは…


「人の髪…?」


なぜあんな所に人の髪が…?

ん?人…?

!!助けなければ!


私は慌てて馬から降り、魔術を行使する。


浮遊(フロウ)


「殿下!?」


「崖の中腹に人がいるようだ。確認してくる」


呼びかけるシオンの声に答え、魔術で崖の上に上がる。


…そこに居たのは、金色の髪を持つ傷だらけの少女だった。


全身に擦り傷と打撲、着ているドレスはボロボロ。頭を打ったのか額の辺りから血が流れている。

当然、意識は無い。


「なんて酷い…」


余りの惨状に私は言葉を無くしながらも、救助のために少女の体を自分のマントで包み、抱え上げる。


浮遊(フロウ)


魔術を発動させ崖から降りようとするが


……?


浮遊(フロウ)


……魔術が発動しない?


「…下、殿下、どうされましたか?」


魔術が発動しないことに私は驚き固まっていたが、崖下からシオンが呼びかける声に我にかえる。


「あ、ああ。怪我をしている少女を保護したのだが、なぜか魔術が発動しない。…シオン、済まないが足場を作ってくれないか?」


「魔術が発動しない?なぜ?…いえ、失礼しました。少々お待ちを。…土杭(グランドステイク)


シオンは地面に手を付くと魔術を行使し、階段状の足場を作ってくれた。


私は足場を伝って下に降り、シオンに救助した少女の様子を見せる。


「この通り酷い怪我をしている。一刻も早く治療しなければ…」


「これは酷い…わかりました。急ぎ部下たちと合流し、グラファイトに戻りましょう」


部下たちと合流した私たちは、救助した少女の様子と先行することを伝え急ぎ街へと戻った。


*


「ジーン!ジーンは居るか!?」


街の砦に戻った私は大声で一人の男の名を呼ぶ。


「ジーン!!」


「は、はい!お待たせしました、殿下!お呼びでしょうか?」


やってきたのはジーン・オーシュ。治癒士で警備隊の軍医だ。


「魔の森で少女を保護したのだが、酷い怪我なんだ。すぐに治療を…!」


「わ、わかりました。直ちに病室を整えます。…その間に治癒魔術を施しましょう」


「ああ、頼む」


抱えていた少女の様子を見せると、ジーンはすぐに状況を理解し、魔術を行使する。


治癒(ヒール)


……?


治癒(ヒール)


……


また魔術が発動しない?

…というより、少女に魔術が効いていない?


先程は自身のこと故気付かなかったが、ジーンが彼女にかざした手からは確かに魔力が放出されている。

それが彼女の前でぷっつりと途切れてしまうのだ。


「これはどういうことでしょうか…?」


ジーンも戸惑っているようだ。

しかし、魔術が効かないということは…


「魔術での治療が出来ない…?」


ポツリと零れた呟きは誰のものだっただろうか?

私もシオンもジーンも、魔術が効かない相手は初めてだったのだと思う。


「…ジーン、魔術無しの治療で彼女を助けることは出来るか?」


「出来る限りの治療をいたします。…ですが、この方の意識が戻らないことには何とも…」


「頼む」


「はい。仰せのままに」




やがて彼女は新しく整えられた病室へと運ばれていった。


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