19.精霊の愛し子
“精霊の愛し子”とは何なのか?
精霊の愛し子は上位精霊の魔力の欠片を持って生まれし者。
故に只人より強く、大きな魔力を持っている。
その魔力に惹かれた下位精霊たちが集うことで、大地を潤し、木々を育み、その土地に恵みをもたらす。
そう、精霊は人間と関わって生きている。
人間にも様々な性格の者がいるように、精霊にも様々な性格の者がいる。
人間から隠れて生きる者、人間に紛れて生きる者、人間を嫌い生きる者、人間を愛し生きる者…
魔力の弱い人間たちが、その存在を感じられぬだけ。
…そんな人間たちが精霊の存在を感じる手段が“精霊の愛し子”だった。
精霊の姿は見えずとも、愛し子の周囲で起きる“現象”が精霊の存在を教えてくれる。
人間たちは恵みを受け取り、愛し子を通じて精霊に感謝した。
…やがて、愛し子のもたらす“現象”に目を付けた人間の一部が欲を抱いた。
この“現象”を自分の物にすれば、富も権力も独占出来るのではないか、と。
それから愛し子は富と権力の亡者共に利用されるようになった。
亡者共は欲望のためには手間を惜しまない。
愛し子を利用するための手段と呪具が次々と生まれていった。
人間の欲は尽きない。
その影でどれだけの愛し子たちが危険に晒され、捕らえられ、利用されてきたのか…
…そしてそんな欲に目を付けられ利用された愛し子が、此処にもまた一人。




