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姫探し  作者: 温泉ことね
36/42

男の右腕



「…ハッ!!!?」


3人で牛丼を食べた後、善哉さんは清彦を召喚した。


「姫!!?無事で…!!」


清彦は私の肩をガッシリ両手で掴み、目の前で滝のような涙を流した。

それ程危機的状況だったのかと、此代さんや清彦の反応で改めて実感する。


あのクセ強男と対峙している間、生まれて初めて命の危険を感じた。

思ったように身体が動かなくなる程、一瞬で恐怖に包まれた。


「清彦、助けてくれてありがとうね」


いつもなら「触るなッ!!!」と怒号を放つ所だが、助けに来てくれて本当に嬉しかった。


「うっ、う…!!!」


私の肩を持ったまま嗚咽し、その場に膝から崩れ落ちた。





------------------------------------------------------------------------------


「絹代さん。」


「はい」


牛丼を食べ始めた時、善哉さんが話かけてきた。


「さっきの男と戦闘の最中、清彦は秘孔術を使わなかった」


「…そうですよね」


清彦の言っている事は、嘘じゃなかった。


「術を使える間合いまで男との距離を詰めていたし、術を仕掛ける隙もあった。だけど、あいつはずっと刀で対抗していた」


確かに、あの男と至近距離でもみ合っていたけど、清彦は秘孔術を使う素振りを見せていなかった。


「ほっとした?」


此代さんが微笑みながら小首を傾げる。


「…はい。」


「絹代さんが家で準備している間に、清彦の魂を男の手の中から戻しておいた。もう少ししたら、呼んでみよう。」


男が手をかざしたら、清彦が倒れた場面が回想された。

あの手の文様、何か怪しいと思った。

魂を吸い取れる的な能力か?


…ん?

私が準備している間にとは?


「俺達が食べ終わる頃には、姿を見せれるくらい回復しているはずだ。」


「その男の腕、どうしたんすか?」


此代さんがお口をモグモグさせながら聞いた。


「持って帰ってきた」


「ブーッッッ!!!!」


口に含んだお茶を盛大に噴出した。


「すみません…!!」


給湯室から布巾を持ってきて急いでデスクの上を拭いた。

パソコンにも派手にかかってしまった。


「右手でしか術をかけられないみたいだったから、腕を消滅させれば大したことできねぇだろ」


「そうっすか…。」


「それに、調べたい事もあるからな」


善哉さんはそう言うと牛丼をかき込んだ。


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そんなこんなで、善哉さんは隣の部屋で男の生腕を出現させた。

持ち運びの際には、藍紙を貼って隠していた様だ。

此代さんと清彦も、腕の見聞のためにあちらの部屋に居る。


私はデスクの椅子に座り、Nyainのチェックをする。


牛丼の残り香が漂う事務所内で、パーテーション1つ隔てて…

男の腕を想像すると、何かこう、胃からこみ上げてくるもんがある。

それでも奥の部屋に引っ込まないのは、さっきの男が何なのか、なぜ私を狙ったのか、知っておきたいからだ。


首を振り、Nyainの返信に集中しようとした。



「清彦、この腕のニオイとこの紙片のニオイは同じか?」


げっ。腕のニオイ…?


「善哉さん、その紙片は…」



「ウェ…血のニオイがすごい!!…うぇっプ!!?」


「ぎゃッ!!?おい!!」


此代さんの悲鳴が聞こえる。


え?大丈夫なん?


「ォぇッぷ、オェッ、ぷ、おえ…ッッ!!」


ちょちょちょ、ヤバくね!?

うちで飼ってる猫が吐く時と全く同じ音がするんだが!?


急いでゴミ箱のナイロン袋をひっつかみ、隣の部屋へ突入した。


「清彦!これ!!」


応接間のテーブルの上に、さっきの男の腕がゴロンと転がっていた。


「「オエェェーーーー!!!」」


清彦と同時に、私は持っていたナイロン袋に吐いた。





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