駅のホームにて
「ちょっ、"ひとまろりん"いきなり出さないで!!怖ぁ~い!!」
クセ強の男は善哉さんと距離を取った。
「さぁ絹代殿、こちらへ」
清彦に支えられて階段を下りようとした。
が、なぜか私だけ見えない壁にぶち当たり、それ以上進む事ができない。
「あやつ…妙な術を使いおって」
「ひぁ!?」
清彦は私をお姫様抱っこした。
「うっ、結構重いですな…」
ボソッと呟き、困り眉でため息をつく。コイツまじで。
デリカシーがどうとか言ってる場合じゃないけど、
この状況で普通そんな事言うか?
「おめ、ふざけんな!おろせこの野郎!!」
怒りが頂点に達し、手足をバタバタ動かし抵抗した。
「ああっ!危ないですぞ姫!!ここは階段ですぞ!!」
清彦は細い腕をプルプルさせている。
「うるせぇ!!」
涙が出てきた。何でこんな奴のために、真剣に悩んでるんだ私は。
「姫、しばらく善哉殿の近くに居ましょう」
階段を上がり、一番上から三段目で私を下した。
二人で、頭だけ出してホームを覗く。
善哉さんは刀を構えたまま、クセ強男との距離を詰めていた。
「たっくんてば、絹代さんがいない方が安心できるクセに~」
たっくん?
善哉さんの事?
「絹代さんを巻き込みたくないんでしょう?だから、特殊な藍紙を絹代さんに付けて霊や僕みたいな同業者から隠してるんだよね?」
え。いつの間に?
前に、藍紙は完全に気配を消し、透明人間になれる道具だと教えてもらった事がある。
「藍紙を使わなくても、僕が絹代さんを誰にも見つからない場所に隠してあげるのに…」
「お前じゃ無理だ。俺らに嗅ぎつけられてるじゃねぇか」
「ふんっ…。君もじゃん、僕ごときにばれちゃって。て、あっ!絹代さ~ん!!」
クセ強男がこちらに手を振る。
善哉さんが斬りかかろうとした瞬間。
閃光が走った。
眩しくて、思わず目を手で覆った。
「逃がすか!!!」
清彦の声がして、突風が私の横を過ぎ去った。
「なんやねんお前~!?」
目を開けると、清彦がクセ強男ともみ合っていた。
善哉さんは目を腕で覆っていた。
さっきの閃光で目が…?
階段から飛び出し、駆け寄った。
「善哉さん、目が…!?」
「絹代さん?駄目だ、離れてて!!」
目をきつく閉じたまま、善哉さんは私の手を振り払った。
「絹代さん、つっかま~えた♪」
男に腕を掴まれた。
清彦は…!?
と顔を向けようとした一瞬、何かが男の手に振り下ろされた。
「ぎぁッ!!?」
男は身体を引き、私と善哉さんから離れた。
そこで初めて、善哉さんが目を閉じたまま刀を振り下ろした事に気付いた。
目を閉じてるのに…善哉さん恐るべし。
男の腕はちゃんと両方ついていたから、すんでの所で避けたのだろう。
「覚悟ッ!!!」
今度は男の背後から現れた清彦が刀を振り下ろす。
男は振り向き、片手を清彦にかざした。
清彦は一瞬の内にその場に倒れ込んだ。
と同時に、男の背後から善哉さんが刀を水平に振った。
男はジャンプして斬撃を避け、こちらに向かって来た。
その後ろから更に善哉さんが刀を振り下ろす。
私の目の前で男は片腕を斬られ、血が飛び散った。
「クソッッ!!!」
男は顔を歪ませて私を睨んだ。
流れるように改札まで階段を下りて行き、やがて見えなくなった。
「…さん、絹代さん!!」
「…へ?」
気が付くと、善哉さんが私の肩を持ち揺さぶっていた。
「はぁ…」
善哉さんは手を離し、その場にしゃがみ込んだ。
右手で顔を覆い、前髪をクシャクシャに掻いた。
「どうしたらいい…?俺は…」
善哉さんはそう呟くと立ち上がり、カッターシャツの袖で私の顔を拭いた。
「え?あの、化粧がつきますよ?」
びっくりして後ずさりしようとして、腕を掴まれた。
「後ろ危ないから。」
そうだ、後ろは階段。
あわや転落してしまう所だった。
私の顔を拭った善哉さんの袖には、血がついていた。
それを見て、さっきの光景がフラッシュバックする。
目の前で、腕が…
「…絹代さん、しばらく事務所で寝泊まりしてもらいたい」
え
「本当に申し訳ない。落ち着くまで、俺か類のどっちかが絹代さんを警護する事になる」
ええーーー!!!?




