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姫探し  作者: 温泉ことね
29/35

師走は今



「この角曲がったら居るんだな」


「…そうなり!!」


ブロック塀の角で鼻をクンクン動かし、角の向こう側を指さす清彦。

確かに五十嵐師走の気配がする。

嘘は言っていない様だ。


「行きましょう、善哉さん!」


類が声を潜めて言った。

うなづいて角を曲がった。




-----------------------------------------------------------------------------




麻紐を取り付けて翌日、清彦は絹代さんが出勤するなり姿を見せた。


「お前の家は今日からここだ」


「いやじゃ!!我の家は絹代殿の家じゃ!!!」


絹代さんには今1㎜も触れない筈だが…

この執着の仕様。

絹代さんと2人で同じ空間に居るだけで何をし出すか分からない。


今は悪霊とは化していないが…


まぁ絹代さんにとったら悪霊だが。

とりあえず様子見。


「家賃払えよ」


「…はぁ!?」


「払え。今すぐ」


「持ってない…」


「は?」


だろうな。


「この麻紐代と今迄の結界代も追加で払え。今すぐ。」


「だだ、だから!!払えという事は、ヤチンにはオカネが要るんだろう?我、持ってない!ヤチン払えない!だから絹代殿の家に行く!!オカネは絹代殿が払ってくれる!!」


類と絹代さんドン引きしとる。


「駄目に決まってんだろ」


「じゃあ、我また野宿する!!」


「いや、ここで働け。」


コイツは鼻が利く。使えそうだ。

清彦は驚いた顔をし、頭を左右にブンブン振る。


「外は魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)。特に深夜の危うさは良く知ってるだろ?」


清彦はおびえたツラをした。


「お前…我の事…ほしい…のか?」


「んなわけあるかい!!!」


類が顔を真っ赤にして突っ込む。


「いいから俺の仕事手伝え」


「…いやじゃ!我は姫に会いにやって来たのじゃ!!」


絹代さんの方を見て悔しそうな顔を浮かべる。


「本当なら依頼通り即除霊してやるが、絹代さんの手前生かしている」


「ヒェッ…」


「それに色々とお前は役に立ちそうだ。俺が言いたい事は分かるな?」


清彦はうなだれ、遂にうなづいて同意した。


「って事で、絹代さん良いかな?コイツはしばらくここで飼…働いてもらう」


「はい!どうぞ。」


「姫…そんな…」


よし。


「善哉さんてば…タダ働きの奴隷を作るなんて恐ろしすぎる…さすがっス!」


悪口?


「じゃあ早速仕事だ、清彦。」



-----------------------------------------------------------------------------



「おい、何だありゃ」


角を曲がると、除霊依頼をしていた田中さんが霊と肩を寄せ合い歩いていた。


「…仲、良さそうですね。」


類が目をテンにしている。


「師走殿~!!久しぶりじゃのう!!」


「ゲッ!!?キヨ!?」


田中さんも俺と類を見て驚いた。


「…どういう事ですか?田中さん。」


「除霊して欲しかったのでは…?」


類が不安げに俺の顔を見上げる。


「す…すすす、すみません!!」


田中さんは即座に頭を下げた。


「美保ちゃんは悪くないんだ!!俺が…」


霊が田中さんの前にかばうように出た。


「…説明してくださいますか?」


「…はい。」


それから、田中さんは事の次第を話始めた。





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