師走は今
「この角曲がったら居るんだな」
「…そうなり!!」
ブロック塀の角で鼻をクンクン動かし、角の向こう側を指さす清彦。
確かに五十嵐師走の気配がする。
嘘は言っていない様だ。
「行きましょう、善哉さん!」
類が声を潜めて言った。
うなづいて角を曲がった。
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麻紐を取り付けて翌日、清彦は絹代さんが出勤するなり姿を見せた。
「お前の家は今日からここだ」
「いやじゃ!!我の家は絹代殿の家じゃ!!!」
絹代さんには今1㎜も触れない筈だが…
この執着の仕様。
絹代さんと2人で同じ空間に居るだけで何をし出すか分からない。
今は悪霊とは化していないが…
まぁ絹代さんにとったら悪霊だが。
とりあえず様子見。
「家賃払えよ」
「…はぁ!?」
「払え。今すぐ」
「持ってない…」
「は?」
だろうな。
「この麻紐代と今迄の結界代も追加で払え。今すぐ。」
「だだ、だから!!払えという事は、ヤチンにはオカネが要るんだろう?我、持ってない!ヤチン払えない!だから絹代殿の家に行く!!オカネは絹代殿が払ってくれる!!」
類と絹代さんドン引きしとる。
「駄目に決まってんだろ」
「じゃあ、我また野宿する!!」
「いや、ここで働け。」
コイツは鼻が利く。使えそうだ。
清彦は驚いた顔をし、頭を左右にブンブン振る。
「外は魑魅魍魎が跋扈。特に深夜の危うさは良く知ってるだろ?」
清彦はおびえたツラをした。
「お前…我の事…ほしい…のか?」
「んなわけあるかい!!!」
類が顔を真っ赤にして突っ込む。
「いいから俺の仕事手伝え」
「…いやじゃ!我は姫に会いにやって来たのじゃ!!」
絹代さんの方を見て悔しそうな顔を浮かべる。
「本当なら依頼通り即除霊してやるが、絹代さんの手前生かしている」
「ヒェッ…」
「それに色々とお前は役に立ちそうだ。俺が言いたい事は分かるな?」
清彦はうなだれ、遂にうなづいて同意した。
「って事で、絹代さん良いかな?コイツはしばらくここで飼…働いてもらう」
「はい!どうぞ。」
「姫…そんな…」
よし。
「善哉さんてば…タダ働きの奴隷を作るなんて恐ろしすぎる…さすがっス!」
悪口?
「じゃあ早速仕事だ、清彦。」
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「おい、何だありゃ」
角を曲がると、除霊依頼をしていた田中さんが霊と肩を寄せ合い歩いていた。
「…仲、良さそうですね。」
類が目をテンにしている。
「師走殿~!!久しぶりじゃのう!!」
「ゲッ!!?キヨ!?」
田中さんも俺と類を見て驚いた。
「…どういう事ですか?田中さん。」
「除霊して欲しかったのでは…?」
類が不安げに俺の顔を見上げる。
「す…すすす、すみません!!」
田中さんは即座に頭を下げた。
「美保ちゃんは悪くないんだ!!俺が…」
霊が田中さんの前にかばうように出た。
「…説明してくださいますか?」
「…はい。」
それから、田中さんは事の次第を話始めた。




