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姫探し  作者: 温泉ことね
28/35

清彦、結界から出る



「姫ーーーー!!!ひめひめひめひめひめひめひめえええええええ!!!!!」



「「うるさいッ!!!」」


まだ朝の空気をかろうじてまとった事務所内。

私と此代さんの声が同時に響く。

シュン、とする清彦の首を善哉さんが後ろから紐で引き寄せた。


「ぐぁッッ!!!」


「大人しくしないと、除霊しちまうぞ」


善哉さんが渡してくれた麻紐は、霊力を込めながら結ぶ必要があるそうだ。


「グエー!!!」


清彦は暴れ、紐が余計に食い込む。


「おい、つける前に本当に消えるぞ」


殺人現場?

バタバタ手足を動かして抵抗する清彦に、澄まし顔で紐を引っ張る善哉さん。


「はい、首オッケー」


流れるように清彦の背中に乗り、右手首を掴んで引き上げた。


「痛ッ!!痛いなり!!!!」


素早く右手首に麻紐をつけると、今度は左手首、右足首へと次々に紐が結ばれていった。


「優しくしてくれなり!!!」


「うぜぇ。急に語尾に平安感を出してくるな」


最後に、左足首に紐を結びかかる。


「よし」


善哉さんは清彦の背中からおりると、パンパンと手を払ってこちらを見た。


「これで、絹代さんの言った通りに動かせるから」


「…はぁ」


いまいちピンときていないけど…。


「姫ッ!!!」


清彦がガバッと起き上がり、こちらに突進してきた。


「うわッ!!来るな!」


思わず叫んだ。


「!!」


清彦が目の前でピタッと止まった。


「…う、動けない…?」


動きが止まり、目と口だけは動いて固まっている。

驚いて、私も言葉も出ないで後ずさりした。


「さすが善哉さんっす!」


「…まぁ、ちゃんと出来たみたいだな」


「絹代殿、これは、どういう…!?」


たれ目の大きな目が、瞬きもせずにギンギンに開いている。

怖っ。


「絹代さん、"自由に動け"って言ってみて」


此代さんがニヤニヤしながら言う。


「じ…"自由に動け"」


その瞬間、清彦は前に突っ伏して倒れた。


「"飛びつき禁止"って言ってみて?」


好奇心を隠し切れない中でも、落ち着いた声色で善哉さんが言う。

善哉さんはいつの間にか椅子に座っていた。


「"飛びつき禁止"」


起き上がった清彦は、両手を広げたまま固まった。


「あれ…?なぜじゃ!?姫に抱きつけぬ!!」


「これでもうソイツは絹代さんに飛びついたり、抱き着いたりできない。」


善哉さんは言ってから、フーと息をついた。


「い…嫌じゃ!!!今まで通り姫に抱き着きたい!!スリスリしたい!!」


おいヤメロ、黙れ。

鳥肌が立った。


「こんな奴、自由にさしてあげたかったの?きぬちゃん?」


此代さんがチワワのような目で小首を傾げる。


「…何かの間違いだったかもしれません」


「姫ええーーー!!!」


「まぁ、今まで通り結界に入れててもいいんだけどな」


善哉さんは両手を頭の後ろで組んで微笑した。

え?こういう時に笑うんだ…。

謎のタイミング。


「…我、もう結界の中は嫌じゃ」


清彦の沈んだ声。

肩を落として下を向いている。

急に可哀そうな感じ出してくるやん…


「まぁ、これでヘタな動きはできないみたいですし」


そう言って善哉さんと此代さんを交互に見ると、善哉さんは眉毛を少し上げて言った。


「絹代さんの好きにしてくれたらいい。」


「やったね☆きぬちゃん!」


此代さんがウインクしながら親指を立てている。


「では、結界の外で様子を見ます」


清彦は顔を上げ、涙をボロボロと流した。


「姫ええええ!!!」


目の前に来たけど、もう私にしがみつく事はできまい。

これから、どうやってやろうか…と禁断の悪用方法を思案しようとした。

その時。


「ちゅっ」


は?


と思う間に、目の前から清彦が消えた。


今私…




キスされたんだけど?




思わず唇を手の甲で拭った。

唇の上を右手が3往復ぐらいした時、


「やっぱコイツはうちで飼うか」


と善哉さんの猟奇的な発言が聞こえた。


「とりあえずシバいといたんで、今日はもう出てこれないでしょう」


此代さんが淡々と言う。


何やっとんねんアイツ…


制限があるとは言え、せっかく結界から出れたのに。


今度出てきたら、"一切私に触れるな"と言わなくては。


意外と冷静な自分に驚きつつ、段々とやりたい放題してくる清彦に腹が立ってきた。



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