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姫探し  作者: 温泉ことね
12/28

蛸公園



蛸公園に着くと、もう警察官の姿はなかった。

事件が起きてから1時間以上経っているから、当然か。


しばらく公園内の蛸の顔が描いてあるベンチに座って、木陰でぼんやりしていた。


「…ふう」


仕事での忙しさでイライラしてささくれ立った気持ちも、こうやって自然の中に居るだけで癒されていく。


繁華街の中心にある公園だけど、平日の昼間は人もまばらだ。

風が吹く度に、木の葉がこすれ合ってそよぐ音がする。

涼しい風が頬に当たって、気持ちいい。


静かな公園で、昨日までの一連の不思議な出来事を改めて振り返る。

まるで夢の中の出来事みたいだ。私の頭は大丈夫なのだろうか?

砂場に居たお母さんと小さな女の子は、手を繋いで公園から出て行った。


五十嵐師走も、もう別の場所へ行ってしまったかな。


そう思って、立ち上がろうとした時。


「姫!!」


目の前に平安貴族の顏がドアップで登場した。


「うわぁ!!」


びっくりして後ろに身体を引く。

慌てて辺りを見回した。


良かった、他に人がいなくて…。


「人が居なくなるのを待っていたのです。」


嬉しそうな平安貴族を睨みつけると、彼はビクついて後ずさりした。


「キヨ~そんなんだから嫌われるんだよ?」


五十嵐師走が登場した。

両手をやれやれと上げ、あきれ顔だ。


「キヨにはデリカシーってもんがないのかね?」


平安貴族の肩に手を乗せ、顔を左右に振りながらため息をつく。

お前が言うか。

平安貴族は師走の足元に膝をついてぴえん顔をしている。


「女の子にはね、耳元で優しく話しかけないと…ね?」


鳥肌がすごい。

したら殺す。



そう思ったその時。






「ご両人お揃いだな」


平安貴族と師走の後ろから、黒髪短髪の男がいきなり現れた。


「探す手間が省けた」


白いカッターシャツに紺色のネクタイをした男は、こちらに向かって歩いて来る。

歩きながら腰に差した刀に手を掛け、抜いた。


「じゅっ、銃刀法違反ー!!!」


思わず指をさして叫んだ。


「…君は、人か?」


男は立ち止まり、怪訝そうに眉根を寄せて私を見た。


「…へぇ、見えるんだな」


そう言うと男は口角を上げて意味深な笑みを見せた。

幅の狭い二重の切れ長な目が、長い前髪の下で刀のようにギラリと光った。

何だかゾクッとした。



「何だ貴様、姫に近付くな!!」


いつの間にか、平安貴族が刀を抜いて私をかばうように構えていた。

振り返ると、五十嵐師走は、私の後ろにこっそり隠れている。



「…やっと見つけたんだな。」


「…なんの話だ」


男は刀を下ろした。


「俺はお前を除霊するように依頼された。それから、お前も」


男の目が私の背後の師走を捉える。


「誰かを探して彷徨っていたんだろう?お前」


「…」


「やっと見つけた所悪いが、俺はこれが仕事なんだ」


「清彦様ああああ!!!」


男の背後にじいやが現れた。

男はすぐに身を翻し、じいやの攻撃から身をかわした。

その間に清彦が刀を男に振りかざす。その時。


一瞬何が起こったか分からなかった。

清彦の刀は地面に落ち、手からは血が流れていた。


男はじいやの頭をぶん殴って気絶させていた。


「善哉さん!」


公園の入り口の辺りに、金髪マッシュの小柄な男が弓を構えて立っていた。

あの男が、清彦の手を矢で射った。


善哉と呼ばれた男は、清彦に刀を振りおろす。



「えっ」


「はっ」


驚く男の顏。

振りおろされる刀が目の前にあった。



「紫乃姫…!」


清彦の叫ぶ声がすぐ後ろで響く。

だから誰だよ、その紫乃姫って…


私の身体は、とっさに清彦の前に来ていた。

何で、除霊したいのに…かばってるんだろう?


私の身体に、刀が思いっきり振りおとされた。



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