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Seasons  作者: 殊月隼士
10/14

篝火草

 僕がそのメールを受け取ったのは、放課後。

――話がある。大事な事だ。今日、事務所で待ってる。 (たつ)()

「“はい、用が済んだらすぐ行きます”っと」

 大事な話ってなんだろう。そう思いつつ、さっさと終わらせて行こうとペンを握り直す。

「なーにやってんのー?」

「うわぁ!」

 すると、送信ボタンを押すと同時に、後ろから声を掛けられた。それまで自分の世界に浸っていたので、僕は派手に声を上げる。不覚。ぐるっ、と振り向いて声の主を見ると、最もこんな悪戯をしそうな奴で、何となく我点がいった。

「なんだ、()(むら)かー。吃驚したー」

「なんだとは何よー。それに、何で私だって言い切れるのよ。伊紀かもしれないじゃない」

『えええええええええ』

 おそらくは宝生(ほうじょう)を待っていたのであろう(おお)()さんも、いきなり自分の名前が出て驚いたらしい。今まで読んでいた本を閉じて、穂村へ抗議しにこちらへ来る。

「なおちゃん……。私、ただ本を読んでいただけなんだけど……?」

「そうやって人を巻き込むのは止めようねー、穂村」

「ま、まぁ良いじゃん。それより、伊紀も気にならない? 出席簿」

――ああ、成程。それで穂村はわざわざ話しかけに来たのか。

 僕の学校では担任の負担を減らす為か、それとも一クラス当たりの人数が多くて役職を増やすためなのかは知らないけれど、何故か出席簿をまとめるのは生徒の役目になっている。先生が毎日、毎時間ごとに遅刻・欠席・早退をつけている、アレの事だ。それを一か月ごとにまとめて出席率を出す、という仕事を僕はしていたのである。

「あれ……? 何で参道(さんどう)君がやってるの? それ、書記の仕事だよね」

 流石、太谷さんは細かい事によく気が付く。普通、誰が何の係についているかなんて、ましてや僕の所属する美化委員会や、今現在進行形で手伝っている書記は目立たない役職。覚えている人は少数派だろう。

「委員長に頼まれたんだよ。なんでも今日、臨時の会議があるらしくってね」

 ちなみに、委員長は勿論学級委員なので、書記ではない。けれども我が担任は何かあると委員長に頼むので、実質、彼女が書記も兼ねている。そういう風に仕事を頼む人は、実は担任だけではない。皆、何か困ったことがあると、すぐに委員長に頼ってしまう。彼女がそれだけの能力を持っている、という事でもあるのだけれども。

「成程ねー。きっと、また無茶ぶりされたんだろうなぁ……」

「あはははは」

 全くもってその通り。前述したとおり、常に忙しい委員長ではあるが、決して泣き言も愚痴も言わず、さらっと仕事をこなしてしまう。そんな彼女が珍しく仕事を振ってきたので、僕も気になって直接、彼女に理由を尋ねてみたら、

“いや、先生が〆切を忘れていたみたいでね。HR終わった後、急に言われたの……。しかも今日中にって……”

と、いかにもうちの担任がしそうな事を、言いづらそうに話してくれた。うん、先生、それは無理です。

「ふーん。で、勿論私は遅刻なしよね?」

 穂村は、別にそこには興味が無かったらしく、代わりに自分の出席状況を聞いてきた。委員長がまとめている時もよく聞いている人がいたから、やっぱり気になるもののようだ。そんなもの、遅刻も欠席もしなければ、覚えられるだろうに。

「あー、遅刻はなかったかな? でも、欠席は何回かあったよ。月に一回は必ず休むよね、穂村って」

「うっさいなー。自主的に休むようにしてるのよ」

「何その理由」

 あまりにも穂村らしくて、思わず苦笑する。僕につられて、太谷さんも笑う。

「な、笑う事ないでしょ!?」

「少しは皆を見習いなよ。太谷さん、委員長、僕、(すず)(かさ)、宝生。ここらへんは皆、今んとこ皆勤だよー」

 僕は彼女にも見えるように、出席簿を広げる。

「本当だ……。って、あれー? 遠足の次の日って、このは、遅刻しなかったっけー?」

「そういえば……」

 さっきっから熱心にのぞいていたと思ったら、まさか人のあらさがしをしていたとは……。半ばあきれつつ、僕もつられて“()(きり)(この)()”と書かれた欄を見る。ふむ、確かにこの日は遅刻していた気がする。委員長が遅刻をするのは珍しい、というよりこの日だけだったから、記憶に残っているのだ。

「ああ、あの日はね、僕が遅れたからよしって事にしたんだよ」

『! 先生!』

 我が担任は、存在感が薄いのか、それとも忍び足で歩いているからなのかは知らないが、毎回こうやって突然現れる。本当、この人は謎な部分が多すぎる……。

「いやー、そろそろ終わったかなー、と思ってね」

「あと出席率だけ出したら終わりです」

「うむ、流石参道。仕事が早いねー。助かった」

 カタカタカタ、と文明の利器、電卓様のお力をお借りして、公式に添って計算を行う。いや、流石に足したり割ったりだけなので、暗算で出せないこともないのだが、一応公式に出すものなので、念には念を入れたのである。出てきた結果を所定の欄に書いて、僕は先生にそれを渡す。

「はい。終わりました」

「さんきゅーさんきゅー。んじゃ参道、お疲れさん♪」

「はーい。ふぅ。やっと終わったー」

 言葉通り、これだけのために来たらしく、そのまま立ち去ろうとする我が担任。しかし、教室から出る間際、思い出したように踵を返した。

「あ、それと穂村。小林先生が呼んでたぞ」

「えー。……あぁ、そっか。生徒指導か。説明するの面倒くさいなー」

「お前も大変だな。ま、伝言は以上だ。そんじゃ」

「うー。まぁいっか。行ってこよう……」

 とぼとぼと体育教官室へ向かう穂村。入れ違いに、宝生が顔を出す。

「悪い、伊紀。待たせた」

「ううん! 待ってないよー。それじゃあ、参道君。また明日」

「じゃなー」

「二人とも、バイバイ」

――僕も仕事終わったし、帰るか。

 仲睦まじそうな後姿を見送りながらのんびり立ち上がると、不意に太谷さんがくるりと此方を向いて言った。

「あれ。参道君、今日何か予定があるんじゃなかったの?」

「! そういえば。ありがと、太谷さん!」

 なんやかんやですっかり約束を忘れていた僕は、二人を追い抜き、急いで教室を後にした。



 そんな訳で、僕が成田探偵事務所に着いた頃には、もう日が暮れていた。ドアがいつも開きっぱなしになっているのは知っていたので、ノックだけしてそのまま入る。

「こんにちはー。って、リュウさん! その怪我どうしたんですか!?」

 玄関近くのソファに、包帯男のようになっているリュウさんが腰かけていた。もしかして、何か事件にでも巻き込まれたのだろうか? そこで犯人ともみ合って……。

「いやー、どっから話していいもんだかなー」

「とりあえず座って座って。落ち着いてから始めましょう」

 こうやって余計な心配をする事を、予め予想していたのであろうか。裏手から真帆さんが出てきた。僕が来るのを見越してか、お茶の用意を手に持って。


 鞄を置き、お茶を一すすりしたところで、リュウさんは本題に入った。

「実はな、怪盗セゾンと対決してきたんだ」

「!?」

 あまりの事で、僕は危うくお茶を吹き出しそうになる。

「え!? ちょ、何で……」

「前にも言っただろ? (たけ)(ゆき)とは因縁がある、って。そこら辺もこれから説明するが、とりあえず先に聞いておいて欲しい事がある」

「実はね、そのとらちゃ……虎季は、今事件を起こしているのは自分じゃないって言うのよ。それで、たっちゃんも何故かそれに納得してるのよ」

「え? セゾン=虎季っていう人なんじゃないんですか?」

 僕はてっきり、リュウさんや真帆さんの話ぶりから、そう思い込んでいたのだが。

「厳密にいうと、その等式は成り立たない。怪盗セゾンっつうのは、何故か世襲制でな。虎季は確か、七代目だったはずだ」

「そうなんですか……。って七代目!? そんなに続いてる、その、由緒ある一族なんですか?」

「そうよ。私の父も、六代目だったか五代目だったか。そのセゾンを追っていたわ」

「へぇ……」

 事実はもっと複雑だったようだ。何代にもわたって続く因縁。僕は改めて、自分が何も知らない事を実感する。

 でも、だからこそ、僕は聞いておかなければならない、そんな気がする。そして、二人もそれを望んでいるように思えた。

「でも、それだけでは虎季さんをセゾンではないとする証拠にはなりませんよね?」

「うーん、根拠はいくつかあるんだが……。そうだな。その前に色々、喋らなきゃいけない事がある。お前や、それから真帆さんも知らない、虎季の、セゾンの事についてだ」

 そう言って、リュウさんは、自分の知っているセゾンの事を一つ一つ、丁寧に話し始める。虎季さんは昔この事務所で、一緒に仕事をしていた事。彼が優秀な探偵だった事。今までのセゾンの手口。リュウさんが彼を捕まえた経緯……。

 それは、何だか懐かしさに満ちていて、リュウさんの虎季さんに対する好意的な感情を感じた。


「とりあえず、こんな所です。ここまでで、何か質問ありますか?」

「いいえ」

「私も無いわ。それより、それでどうして、彼が今のセゾンじゃないって言い切れるのかしら?」

「はい、それは今から説明しますが、主な理由は二つです。一つ、彼は決して、“理不尽”な事はしない、という事。二つ目、彼なら絶対に、犯行前に予告状を出すという事です」

「ちょ、ちょっと待って下さいよ」

 リュウさんのあまりにも探偵らしからぬ文言に、僕と真帆さんは異を唱える。

「そうよ。盗みをはたらくことのどこが理不尽じゃないって言うの? それに、前の美術館の時だって予告状を出していたじゃない」

 しかし、彼はもう、自分の説に確信を持っているらしい。慌てず騒がず、自分の推理を披露する。

「先にも言ったように、彼は闇ルートの美術品や宝石などを専門としています。捜査員をかく乱するのに使うのは主に催眠ガスで、不必要な物まで壊すような事は絶対にしません。ところが、今のセゾンはどうでしょう? 何でもかんでも、まるで自分が盗みやすそうな、あるいは目にとまったものを片っ端から盗み、閃光弾や催涙弾まで使用します。さらに、制御室や入り口に使用したドアなど、邪魔なものはほとんど壊しています。今まで捕まらなかったのが本当、奇跡のようなやりくちですよ」

「……たっちゃん、その言い方だと、今のセゾンはあの事件以外にも、かなり犯行を重ねていた事になるわ」

「その通り。此方が、俺が目をつけた、セゾンの犯行と思しき事件の捜査資料です」

 リュウさんは相当、セゾンについて調べていたらしい。次から次へと、彼の推理を裏付ける証拠が出てくる。

「でも、何でそれがセゾンの犯行だと?」

「似てるんだよ。見てもらえば分かるけど、少なくともここにまとめた事件に関しては、同一人物の犯行だと言って良いと思う」

 真帆さんの横から資料をのぞきこむと、確かに、電気系統を先に壊してから、ドアをこじ開けて潜入するというスタイルがどの事件にも共通している。しかし、盗んでいるものがバラバラ――宝石、絵画、盆栽、売上金……etc――で、場所も複数の県にまたがっているので、縄張り意識の強い警察は、なかなかこの事件を結び付けられないだろう。まぁ、割と近県で起こっているので、近々誰かが気付く可能性は否定できないが。

 リュウさんの資料の中には、僕が気になってスクラップしたものもいくつかあった。特に、近所の神社が狙われたあの事件。そうか、やっぱり、そうだったのか……。

 ほんの少しだけ、回想にふけりそうになったところで、一通り目を通し終えた真帆さんが言う。

「じゃあ、何故これと今のセゾンが同一人物だって言うの?」

「……実は俺、奴の後姿を見ているんです」

『え!?』

 これには、流石の真帆さんでさえ驚いていた。まさか、リュウさんがセゾンを目撃しているなんて、当のセゾン本人でさえきっと、気が付いていないだろう。前につぶやいていた気になることとは、それだったのか。おそらくその詰めの甘さも、虎季さんの犯行ではない事の裏付けとなったに違いない。

「黙っていてすみません。でも、確証を見つけるまでは言い出せなくて」

「……まぁ、それは良いとして。“髪の長い女”というのが、目撃証言に共通しているわね。たっちゃんが見たのも、そんな人影だったの?」

 真帆さんはあの数分間で、全ての資料を頭に入れてしまったらしい。僕はそんなところまで読み込むことはできなかった。探偵としての格の違いを、改めて思い知る。

「えぇ。鴉みたいな、真っ黒な奴でしたよ」

「それで……」

 ようやく我点がいった。成程、これなら確かに、リュウさんの説もうなずける。あとはより確かな証拠を見つけ、推理を固めていくのだろうと僕は思った。けれどもリュウさんは。ここからが大事だとばかりに、僕の方を向いて話し始める。


「そして、虎季はこんな事も言っていた。“後は、若い世代に”。これが意味する所が分かるか、潤」

――若い世代、に? え、それって……。

「も、もしかして……」

「そう。怪盗セゾンは、もしかしたらお前のそばにいるかもしれない」

「そ、そんな……」

 考えた事も無かった。僕のすぐ近くに、犯罪者がいるなんて。しかも同じ世代で、世間を賑わすような大泥棒がいるなんて。

「あくまでも可能性の段階だが、つぶせるもんならつぶしたいんだ。協力してくれ」

「そうね……。じゃあ、潤君。覚えている限りで良いの。ここ最近休みがち、あるいは遅刻・早退が多い髪の長い子、思い出せる?」

「え、えっと……」

「待った。一応、一連の事件の起きた日にちをまとめてみた。役に立つかどうかは分からんが……」

 僕にはまだ、全ての事件を把握するだけの力はないことを、龍貴さんは分かってくれていた。一覧表を見、つい今しがたまとめた出席簿を思い出す。所々休んでいたり、遅刻していたりする子は何人もいた。だが。

「……一人だけ。この前後、多くは前にですが、毎回休んでいる奴を知っています」

 これと完全に一致したように休む奴を、僕は知っている。何故だろう。ついさっきやっていた作業も、この為だったんじゃないかと思えてくるから不思議だ。

 世の中に無駄な事なんてない、という事か。

「誰だ?」

「穂村。穂村那央子」

『ホムラ!?』

 彼女の名前を出した途端、二人は身を乗り出して驚きを表現した。

「いてててて」

「だ、大丈夫ですか!?」

「ああ、ちょっと吃驚して、大きな声上げちまったからな。ってか、なんちゅう大胆な……」

「?」

 一人事情の分からない僕は、ただ首をかしげるばかり。

「とらちゃんの名字もね、(ほむら)っていうのよ。焔虎季。それが彼のフルネーム」

 そんな僕にすかさず、真帆さんがフォローを入れてくれる。

「え……!? でも……」

「何かひっかかるのか?」

「いえ……」

 何故だろう。全ての証拠が、彼女が犯人である事を示しているのに、僕はその事を認めたくなかった。穂村が友達だから、という理由ではなく、もっと別の、何かが……。

「兎に角、その子が怪しいのは間違いないわね」

 考え込んでしまった僕を見て、真帆さんが先を促す。そうだ、まだ穂村がセゾンだと決まった訳ではない。僕は僕なりに、推理をしていけばいい話だ。

「しかし、何の因果かな……。まさか潤のクラスメイトに、セゾンがいるかもしれないなんて」

 リュウさんも、そこだけは気にかかっているらしい。

「とらちゃんは昔っから、そういうの好きだったからね。因縁というか、因果と言うか。そういうのを大事にする子だったわ」

 真帆さんにも、想う所があるようだ。目を細め、遠くを眺めている。すると、ふと思い出したように言った。

「あのビル。そういえば、とらちゃんが初めて、探偵として仕事した所だったわね……」

「そうだったんですか……」

 リュウさんも、その事は知らなかったみたいだ。感慨深げに、空を仰いでいる。

「彼にとって、それだけ思い出深い建物だったのね」


「っていうか、本当にその怪我、大丈夫なんですか?」

 話は一段落したようなので、聞きそびれていた怪我の具合について尋ねてみる。何故そんな事になったのかは分からないが、それでも、そのあまりの痛々しさは、黙って見過ごせなかったのだ。

「ああ。このぐらい、大したことはない」

 しかし、そんな風に言われても、僕は全く安心できなかった。怪我の経緯に関しては、真帆さんもリュウさんも、全く教えてくれないからである。多分、僕に心配をかけずまいとした故の行為だろう。でも……。

 流石に言葉が足りないと感じたのか、リュウさんは少し間を置いてから、独り言のように呟いた。

「……実はな、俺にも、いや俺達にも、どうしてこんな事になっちまったのか、良く分かっていないんだ。俺が、なんかあいつの大事なもんに触れちまったのかもしれないな」

 本人自身、納得がいってないような話しぶりだった。それが、リュウさんがリュウさんらしくない原因なのだろうか……。

「でも、暴力はいけない事だ。それじゃ、何の為に人が言葉を持ったのか分からなくなる。だから、今度見つけ出してちゃんと償わせるよ。“ごめんなさい”ってな」

 そう言って、やっと笑顔を見せてくれた。それでこそリュウさんだ、と僕は思った。


「いいか。お前のクラスメイトの中に、必ず犯人はいる。よく見張っててくれ」


 翌日になっても、僕はリュウさんの言葉が頭から離れないでいた。おかげで、授業は上の空。何一つ身が入らない状態だった。

 そんな訳で、ぼーっと頬づえをつきながら黒板を眺めていると、不意に横から腹をつつかれた。鈴笠の仕業である。彼はシャーペンで、何かを差している。その方向を見れば、確かに、珍しい光景が広がっていた。なんと、あの委員長が寝ていたのである。鈴笠がわざわざ僕に教えたかったのも、分かった気がした。

 そのまま彼女の方を見ていると、その延長線上に、空っぽの机が眼に入る。僕を悩ませている元凶、穂村の物だ。“見張れ”と言われた後に休まれると流石に、タイミングの良さに違和感を覚える。次に会ったら、何故休んだのか聞いてみよう。そうやって、ぼーっと考えをまとめていたら、不意に委員長の横顔が、記憶の断片と重なった。

――もしかしたら、どこかで……?

 何かが気になる。僕は彼女に、ずっと前に会っている気がする。あるいは……。

「ほい。じゃあ、今のところの主人公の気持ちを答えよ。参道」

「え! あ、はい。えーっと……」

 先生の突然の指名により、僕はすっかりその懸念を忘れてしまった。


「参道君、昨日はありがとね~」

 休み時間。昨日の御礼を言いに、委員長がわざわざ話しかけに来てくれた。

「気にしないでー」

「ってか、さっきの時間寝てたけど、どしたん?」

 気になっていたらしく、鈴笠が尋ねる。まぁ、委員長が寝ていた、となれば心配するのも無理はないだろう。

「あははー、ちょっと昨日夜更かししちゃってね。だから心配しないで」

「委員長でも夜更かしするんだ……」

「そりゃ、見たいテレビだって、やりたい事だってあるよ?」

 そんなたわいもない話をしていた時、机の上の携帯電話が震えた。液晶画面に映った文字は“(かみ)(しろ)龍貴”。何だか嫌な予感がして、僕は急いで、中身をチェックする。

 それは、これから始まる僕とセゾンの、戦いの始まりを告げるものだった。


――セゾンから、予告状が届いた。


いよいよ、次話から解決編です。

潤とセゾンの一騎打ち……になるのかどうかはともかく、最後までお付き合いいただければ幸いです。

(2014/06/29 改変)

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